院長インタビュー

こどもの総合病院として家族中心の医療を目指す、長野県立こども病院

こどもの総合病院として家族中心の医療を目指す、長野県立こども病院
中村 友彦 先生

長野県立こども病院 病院長、信州大学医学部新生児学・療育学講座 特任教授

中村 友彦 先生

目次
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地方独立行政法人 長野県立病院機構 長野県立こども病院(以下、長野県立こども病院)は、2020年3月現在で23の診療科を持つこども病院です。同院ではさまざまな病気のこどもに対する診療をはじめ、大人になった患者さんや患者さんのお母さんを含むご家族の診療などにも尽力しています。

診療体制の特徴や取り組みなどについて、同院の病院長である中村 友彦(なかむらともひこ)先生にお話を伺いました。

長野県立こども病院 外観
長野県立こども病院 外観

当院は、1984年の長野県総合5か年計画の中で検討され、1993年に設立されました。当時の長野県内では、先天性心疾患を持った乳児や低体重の早産児へのフォロー体制が十分整っていませんでした。長野県の小児医療を地域内で解決するために体制の整備が必要だということで、小児医療を専門的に提供する施設として開設されたのです。当初は60床で開院し、こどもの病気を総合的に診るこどもの総合病院として、特に新生児医療と先天性心疾患の治療に注力してきました。その後、こどもだけではなくこどものお母さんも診療できる病院になることを目指して、周産期医療を開始しました。2020年3月現在では診療科が計23科、病床数が200床となっています。

小児の診療科というと小児科を連想する方が多いのではないかと思うのですが、当院は大人の診療科で標準的に設けられている脳神経外科や整形外科、耳鼻いんこう科、眼科などの診療科を設置し、一人ひとりの病態に応じた診療を行っています。このことにより、通常であれば大人の診療科を受診しなければならないような病気の患者さんも、自分と同年代の患者さんがいる環境で受診することができます。さらに、入院が必要な場合は小児用病室に入院ができますし、ご家族も一緒に過ごすことができます。このように、こどもたちとご家族が安心して受診できる病院を目指し、工夫を重ねています。

当院では周産期医療に注力しており、総合周産期母子医療センターとして県に指定されています。周産期医療とは、妊娠22週以降の妊婦さんや胎児、新生児(生後満7日未満の赤ちゃん)に関わるもので、当院では胎児診断や出生直後の母子のケア、早産児の診療などを行っています。

多職種のスタッフがチームとなって母子をサポート

母子のいずれかまたは両方に治療が必要であることが分かった場合にも迅速な対応ができるように、母親が入院してそのまま出産できる産科病棟を設置しています。また、産科医、小児科医、助産師、看護師などの多職種がチームになって母親や胎児、新生児を支援します。

成人した先天性心疾患患者さんを専門的に診る外来の設置

当院がこども病院として診療を開始してから2020年3月現在で25年以上が過ぎ、かつて当院で治療を受けた先天性心疾患の患者さんたちは成人期を迎えてきています。継続して医療が必要な患者さんが成人期に移行するなかで、進学や就職、結婚、出産などの大きなライフイベントに向き合うべきときが来ると予想されます。その際、成人された患者さんを、いつまで・どの医療機関でサポートするかという問題が生じます。

当院では成人期先天性心疾患患者さんを対象に、成人先天性心疾患外来を開設しています。こどもたちが自分の病気や治療内容への理解を深めて、将来的な自立を計画的に進めていくことができるように支援する体制を整えている段階です。

さらに、当院は信州大学 成人先天性心疾患センターと診療連携を結んでおり、成人期先天性心疾患の患者さんがシームレスに治療を受けられるような体制構築に努めています。

このように当院は、成人期先天性心疾患の患者さんの診療と支援に積極的に取り組んでいます。先天性心疾患の患者さんが長く快適な社会生活を送れるよう、これからも支援を続けていきます。

循環器診療チーム(ハートチーム)の結成

先天性心疾患を持つこどもが無事に成人を迎えるまでには、長期的な治療計画に基づいた診断・治療の提供が大切です。当院は、循環器小児科医と心臓血管外科医を中心にした循環器診療チーム(ハートチーム)を結成し、心疾患治療に取り組んでいます。

循環器診療チーム(ハートチーム)は、先天性心疾患や心筋症などのあらゆる小児心疾患に対する診断および治療を、胎児から成人まで行います。

長野県立こども病院のスタッフの皆さん(写真左奥:中村 友彦先生)
長野県立こども病院のスタッフの皆さん(写真左奥:中村 友彦先生)

当院はもともと小児科疾患を診療する病院として開設されたため、設備や診療体制はこどもたちが使いやすいように作られています。しかし、こどもの医療には家族の力が大切であり、これからの小児医療は家族を中心とした医療に変化していくでしょう。だからこそ今後は、ご家族の方々や大人になった患者さんにも当院を使っていただきやすいように、設備面を改善していく必要があると考えています。

その取り組みのひとつとして2018年に開設したのが、こころの診療科です。この科では、院内患者さんのお母さんを対象に心理的ケアとサポートを実施しています。

これからも、ご家族中心の医療を提供する施設になることを目指して努力を続けていきます。

こどもたちへの継続的な医療の提供とご家族の負担軽減を目指し、医師と看護師による小児の訪問診療および理学療法士による訪問リハビリテーションを行っています。スタッフが直接ご自宅を訪問して、患者さんの心身の状態を確認することで、ご家族の負担を軽減したいと考えています。

今後は栄養指導や薬剤指導においても、訪問での実施を検討中です。

中村先生

隣接の小学校と中学校からそれぞれ2名ずつ先生が病院に来てくださり、入院しているこどもたちに院内学級を開いています(2020年3月現在)。複数名の先生がベッドサイドでの学習と教室での学習をそれぞれ担当することで、ベッドから起き上がれないこどもにも、院内学級に登校するこどもにも同時に授業を行うことができます。院内学級を開くことによって、長い入院期間になった場合にも、途切れることなく学習を進めることができると考えています。

当院には、小児科専門研修プログラムがあり、小児科専門医(日本小児科学会認定)を目指す医師への研修を行っています。さらに、研修プログラムは周産期・新生児コースや小児救急集中治療コースなどに分かれており、ご自身の希望に応じて研修プログラムを組むことが可能です。

中村先生

当院は、病気のこどもとそのご家族中心の医療を目指して、これからも進歩を続けていきます。

また、当院はこどもの病気に特化したこども病院であり、こどもの病気や妊娠期の診断・妊婦さん特有の病気を総合的に診ることが可能です。長野県にお住まいの方のみならず、甲信越とその近隣の地域の皆さんにも、ぜひ当院を利用していただきたいと考えています。お困りのことがあれば、気軽に受診してください。

当院は、小児科疾患や新生児医療を学びたいと考えている医師を全国から広く受け入れ、研修を行っています。興味がある方はぜひ研修にいらしてください。

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  • 長野県立こども病院 病院長、信州大学医学部新生児学・療育学講座 特任教授

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