福島県郡山市にある太田熱海病院は、急性期、回復期、慢性期、そして在宅医療まで幅広く診療にあたっています。また、同一法人の病院や施設と連携を図ることによって、県中部における地域医療を担っています。
今回、同院が地域の皆さんに果たす役割や、診療科の特徴、病院としての取り組みなどについて、病院長である丹治 雅博先生にお話を伺いました。
郡山市の西側に位置する当院は、郡山市内をはじめ、近隣市町村に対して医療を提供しています。磐梯熱海温泉街に医療施設が必要となったことが当院設立のきっかけとなり、1949年11月に診療所としてスタートしました。1963年12月には温泉を利用したリハビリテーション施設を設置しました。それ以来、診療に加えて、機能回復にも重点を置いて、医療を提供し続けています。そして、今年は開院から75周年を迎えます。
当院は、地域に根ざした医療を提供するために、二次救急病院としての急性期医療、回復期医療、慢性期医療、さらには在宅医療をトータルに行っています。また、回復期リハビリ病棟と地域包括ケア病棟を併せ持つ病院として急性期治療を終えたポストアキュートの患者さんにも広く対応しています。
内科全般を診る一般内科に加えて、より専門性を持って診断や治療にあたる専門内科もそろえています。具体的には、脳神経内科、消化器内科、糖尿病内科、呼吸器内科、循環器内科があります。このような体制によって、地域の皆さんが病気になったときに、専門的かつ総合的に診ることができるようにという思いで診療にあたっています。
なかでも当院の脳神経内科は、1983年に福島県において最初に開設された科で、頭痛やもの忘れなどの日常的にみられる脳神経疾患から、パーキンソン病などの神経難病に至るまで、あらゆる脳神経疾患の専門的な検査や治療に幅広く対応しています。また、脳神経疾患の症状を改善させるリハビリテーションや、手術後のリハビリテーションに力を入れていることが特徴です。
当院では、回復期リハビリテーション病棟を設置し、回復期および慢性期におけるリハビリテーションに力を入れています。ここでは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など専門のスタッフが中心となったチームで、脳卒中・整形外科手術後、さらには高齢の方の廃用症候群などによって低下した身体機能の回復と向上を目的としたリハビリテーションを行っています。このような取り組みによって、入院中の患者さんが寝たきりの状態になってしまうことを防ぎ、早期の在宅復帰につなげています。また、嚥下センターでは、多職種のスタッフがチームとなって、安全に楽しく食事ができることを目的としたリハビリテーションを提供しています。
当院では、脳血管障害に伴う高次脳機能障害の方に対する運転リハビリテーションにも取り組んでいます。自動車教習所と連携を図り、実際の運転において判断力や身体機能などから運転しても問題ないかを客観的に評価しています。
一方、自宅療養している方に向けて、訪問リハビリテーション・訪問看護と通所リハビリテーションを実施し、在宅医療の支援に努めています。訪問看護では、自宅療養されている方に対して、健康状態の確認や処置を行うだけでなく、必要に応じてリハビリテーションも実施しています。通所リハビリテーションでは、自宅療養している方を送迎して、施設でその方に応じたリハビリテーションを実施します。加えて、入浴サービス、レクリエーションなど多様なサービスを行い、地域の皆さんが交流する場としても機能しています。
また、熱海地域包括支援センターでは、介護や福祉の面から患者さんとご家族をサポートします。ここでは、行政的な支援を受けるための手続き方法や、ご自宅で日常生活を続けられるような支援の紹介などを行っています。
このように、患者さんが退院後も、住み慣れた地域で生活が続けられるように、患者さんに応じた支援ができるような体制を整備してまいります。
予防医学センターでは、日帰りから2泊3日までの各種人間ドック、特定健診を実施しています。豊かな自然の中に温泉を備えた施設で、日々の疲れを癒しながら、保養を兼ねて検査を受けることができます。なお、日帰りで検査を受けられる方も検査終了後に、温泉をご利用いただけます。
湯治に来るような気持ちで検査を受けていただき、ご自身における体の状態を確認し、日々の健康づくりに役立てていただければ幸いです。
当院は、同一財団法人で高度急性期医療を担う太田西ノ内病院や、地域の医療機関と連携を密に図っています。これにより、急性期、回復期、慢性期、在宅医療に対応し、地域の皆さんが求める医療を切れ目なく提供したいと考えています。
また、地域の皆さんが気軽に医療や介護などの悩みを相談できる場として、熱海地域包括支援センター内にグリーンカフェを設置しています。当院は地域包括ケアシステムの中心として通常医療のほかに、在宅医療やリハビリテーションも提供しており、地域の皆さんの生活を医療、介護、福祉など多様な側面からサポートするために尽力いたします。
そのほか、病気の情報提供にも積極的に取り組んでいます。病院外で行う市民の方々を対象とした講演会では、認知症や高血圧などテーマを決めて医師が分かりやすく説明しています。このような取り組みによって、地域の皆さんの健康増進・維持に貢献していきたいと思います。
協力型臨床研修病院、さらには福島県立医科大学および太田西ノ内病院の内科専門医研修プログラム連携施設に指定されている当院では、初期研修医や内科専門医の受け入れも行っています。
当院では、総合的に患者さんを診るという地域医療を実践できるだけでなく、専門的な診療も経験できます。地域医療を学ぶだけでなく、専門性も高めていきたいと考えている方は、ぜひ当院にいらしてください。
当院は、太田西ノ内病院と連携しながら郡山西部地区の二次救急病院として、そして熱海地区の地域包括ケアシステムの中心として、幅広い医療支援を提供し続けてまいります。それがひいては、磐梯熱海の温泉街の活性化に結び付けばと期待しています。
そのためには、当院が総合的な診療を行う地域医療の側面と、専門性の高い病気の診療を行う専門医療の側面を両立することが大切だと考えています。急性期医療はもとより、回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟を併せ持つ病院として、急性期治療が終了し在宅医療へつなぐための後方支援病院としての機能も果たしながら、在宅での訪問看護や訪問リハビリテーションなど、病気を抱える患者さんへの継続的な診療に注力していきます。
これらの取り組みによって、さまざまな側面から地域の皆さんを支え、共に歩む病院としての役割を果たしてまいります。
一般財団法人 太田綜合病院附属 太田熱海病院 病院長
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