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今の歯磨きのままで大丈夫? ——手磨きと電動歯ブラシのプラーク除去力を比較

今の歯磨きのままで大丈夫? ——手磨きと電動歯ブラシのプラーク除去力を比較
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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近年、日本では病気の予防や健康維持を意識する方々が増えてきているといわれています。それにともないオーラルケアへの関心も高まっており、オーラルケアをサポートするアイテムが登場してきています。なかでも、電動歯ブラシはさまざまな研究のもと性能の改善が進められており、プラーク(歯垢)除去力において手磨きと大きな差が生じてきています。その一方で、いまだに電動歯ブラシを使用する方は少ないのが現状です。本当にあなたの歯磨きは、今のままでよいのでしょうか。

本記事では、手磨きと電動歯ブラシでのプラーク除去力の違いや電動歯ブラシの種類についてお伝えします。

2019年にある企業が行ったオンラインリサーチによると、海外における電動歯ブラシの普及率はスウェーデンとオランダでもっとも高く、63%という結果でした。歯科医療先進国ともいわれるスウェーデンをはじめとしたヨーロッパでは、比較的高い普及率であることが分かります。一方日本における普及率は22%にとどまりました。

各国における電動歯ブラシの普及率
各国における電動歯ブラシの普及率

電動歯ブラシを使用していないと回答した日本人にその理由を聞いてみると、もっとも多い理由は“手磨きで満足している”というもので、6割程度の方がこのように考えているということが分かりました。

しかし、本当に手磨きで十分なオーラルケアができているといえるのでしょうか。もちろん、時間をかけて丁寧に磨くことで、手磨きでも十分なケアができている方もいらっしゃいます。一方で、実は同程度の時間歯磨きを行った場合、手磨きと電動歯ブラシの間には、プラークの除去力に大きな差があるのです。

まず、手磨きと電動歯ブラシには以下のような違いがあります。

手磨きと電動歯ブラシ比較――動きや所要時間、プラークの除去効果

手磨きの場合、どれだけ頑張って手を動かしても歯を磨く動きは1分間に240回程度しか行えません。一方、電動歯ブラシ(音波式)の場合は1分間に約2~4万回の振動によって歯を磨きあげます。こうした動きの違いもあり、同程度のプラーク除去効果を実現しようとすると、手磨きでは10分程度かかるといわれているところ電動歯ブラシは2分程度で済むのです。

歯磨きの最大の目的は、プラークを除去して虫歯や歯周病を予防することにあります。では、もっとも重要なプラークの除去について、手磨きと電動歯ブラシではどの程度の差があるのでしょうか。

手磨きと電動歯ブラシ(音波式)で口腔内のプラーク減少率について比較したある実験では、実験開始時と比較してプラークの減少率はそれぞれ以下のとおりとなりました。

プラークの除去に関する研究――手磨きと電動歯ブラシの違い

実験開始から4週間経過した時点での結果を見ると、電動歯ブラシでは実験開始時よりも30%以上のプラーク減少率がみられました。一方で、手磨き用の歯ブラシでは2週間経過時点ではわずかにプラークの減少が見られるものの、4週間が経過すると、実験開始時よりもプラークが微増している結果となりました。このことから、電動歯ブラシを用いることで手磨きよりも多くのプラーク除去につながるということが分かります。

一口に電動歯ブラシといっても種類があり、大きく“超音波式”“音波式”“その他”に分類することができます。それぞれの大きな違いは以下のとおりです。

電動歯ブラシにも種類がある

たとえば、音波歯ブラシ以外では手磨きのように手を動かす必要がありますが、音波電動歯ブラシは小刻みに手を動かして磨く必要がなく、1か所4~5秒程度磨きたい歯面に歯ブラシを当ててスライドさせるという方法で歯磨きを行います。年を重ねるとともに誰しも握力が低下したり、手を器用に動かすことが難しくなったりしていきます。その際にも、歯と歯ぐきに軽く当ててスライドする方法であれば、強く歯ブラシを握る力や細かな手の動きを必要としません。

このように電動歯ブラシの種類によって特徴が異なるため、電動歯ブラシを購入する際には各メーカーの電動歯ブラシの特長や正しい磨き方、機能などを比較したうえで選択するのが望ましいでしょう。

毎日当たり前のように行っている歯磨きですが、しっかりとプラークを除去しようと思うと実は非常に難しく、時間もかかるものです。その点でいえば、電動歯ブラシ最大のメリットは誰でも“早く、やさしく、簡単に”より高いプラーク除去効果が見込める点にあります。これはどなたにとってもメリットになり得る要素です。つまり、電動歯ブラシはご高齢の方だけではなく、仕事や家事、育児など何かと時間に追われ忙しく日々を過ごす方々の強い味方になるアイテムだといえます。

本記事の冒頭で紹介した調査のなかで、電動歯ブラシを使用しない理由として“価格やランニングコストがネック”というものも挙がっていました。最近では安価な電動歯ブラシもあるものの、あらゆる研究に基づき多くの機能を搭載した製品では、本体の価格が20,000円を超えるものもあります。反面、手磨き用の歯ブラシが高価なものでも1本1,000円程度であることを考えると、確かに購入を躊躇されるのも無理はありません。

しかし、電動歯ブラシを取り入れることで生涯かかる医療費が削減できるとしたら、どうでしょうか。

実は、さまざまな研究により、歯を失うことを防ぎ20本以上の歯を保つことが医療費の抑制につながるという可能性が示されているのです。

健康な歯を守ることが将来的な医療費の削減に

こうした研究では、若い時期から虫歯や歯周病などにかかることでさまざまな病気を招き、全身の健康状態に影響を及ぼすことで医療費の増大がみられたと考えられています。実際、歯周病は生活習慣病や循環器疾患との関連性(歯周病と全身疾患が互いに足を引っ張り合う関係)が判明しており、健康な歯を保つということは、全身の健康を守るための重要な予防策の1つといえるのです。

健康な歯を失うことが将来的な医療費の増加に関わることを考えると、今から家庭でできるオーラルケアに力を入れることは未来への投資といえるのではないでしょうか。

近年、ロボット掃除機が誕生し、掃除も全自動で行われるまでになりました。ほうきやちりとりを使用していた時代から掃除機へと移り変わり、ついにそれすらも人間が操作する必要がない時代です。私たちはそのほかにも、日常生活のあらゆる場面で自動化された家電を使用しています。一方で、毎日数回行われる“歯磨き”に関しては、いまだに手動で行っている方が多い状況です。しかし、電動歯ブラシもほかの家電と同様にテクノロジーの進化とともに開発が行われ、家庭でできるオーラルケアのレベルもどんどん上がってきています。プラーク除去力はもちろんのこと、スマートフォンと連動して歯磨きの改善ポイントを教えてくれる機能を搭載しているものなど、まさに進化した時代に合ったアイテムです。将来の自分のためにも電動歯ブラシの使用を検討してみるのもよいのではないでしょうか。