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腹部大動脈瘤の症状とは? ~通常は初期症状がなく無症状で経過する、人によっては“こぶ”を感じることも~

腹部大動脈瘤の症状とは? ~通常は初期症状がなく無症状で経過する、人によっては“こぶ”を感じることも~
石田 万里 先生

広島大学大学院 医系科学研究科 心臓血管生理医学 准教授

石田 万里 先生

一般社団法人 日本循環器協会

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腹部大動脈瘤(ふくぶだいどうみゃくりゅう)とは、人の体の中でもっとも太い血管である“腹部大動脈”がこぶ状に膨らんでしまう病気です。原因は、動脈硬化に加え、加齢、喫煙習慣、高血圧など多くの因子が複合的に関与しているほか、確率は低いものの、感染症や先天性の病気などにより生じることもあります。通常、腹部大動脈の太さは2cm程度ですが、腹部大動脈瘤では3cm以上に膨らみ、こぶが大きくなるにつれて破裂のリスクが高まります。もしこれが破裂すると、体の中に血液が流出し命に関わることもあるため、早期発見に努めることが大切です。

では、どのような症状がある場合に腹部大動脈瘤を疑うとよいのでしょうか。

腹部大動脈瘤は、通常は初期症状がなく無症状で経過するため、健康診断やほかの病気の検査・治療の際にたまたま発見される場合があります。

ただし、痩せた人の場合には腹部に拍動性のあるこぶを感じることもあります。また、こぶが大きくなってくると周りの臓器が圧迫されるようになり、持続的な腰痛や腹痛、腹部の圧迫感などの症状が見られることもあります。これらの症状がある場合には、腹部大動脈瘤が破裂するリスクが高まっているため、病院の受診を検討しましょう。

腹部大動脈瘤が破裂すると、破裂した血管から大量の出血が生じて血圧が低下し、ショック症状に陥ります。また、こぶのある位置によって異なりますが、破裂に伴って吐血や血便などの症状が見られることもあります。

以前は破裂するとその死亡率は約90%といわれていましたが、最近は医療体制の整備や治療法の進歩により、救命率が少しずつ改善されてきています。なお、破裂の前兆として、突然の激しい腹痛が見られることもあります。

腹部大動脈瘤はこぶのサイズが大きくなるほど血管の壁が薄くなり、破裂するリスクが高まります。こぶの直径が4~5cmの場合、1年以内に破裂する可能性は5%以下といわれていますが、5~6cmの場合には3~15%、6cm以上になる場合はさらに高確率で破裂すると考えられます。

また、こぶは初期段階ではゆっくり大きくなりますが、ある程度大きくなると、大きくなる速度も速くなります。そのため、腹部大動脈瘤と診断された方は経過観察を行い、こぶの大きさに合わせて破裂を未然に防ぐための治療が検討されます。

前述のとおり、腹部大動脈瘤は破裂後の救命率が低いため、破裂する前に治療を受けることが大切です。腹部にドクドクと脈を打つようなこぶを感じるときや、健康診断動脈瘤の疑いがあると診断されたとき、持続的な腰痛・腹痛・腹部の圧迫感などがあるときは心臓血管外科・循環器内科などの受診を検討しましょう。

破裂前の腹部大動脈瘤の治療方法としては、薬物療法や手術治療に加えて、生活習慣の改善が挙げられます。小さなこぶの場合には薬物療法で血圧を下げ、こぶの増大や破裂を予防しながら経過観察を行います。大きいこぶの場合、開腹手術や血管内手術などによって人工血管を取り付け、こぶの破裂を未然に防ぎます。一般的にこぶの大きさが5cmほどになったタイミングで手術を検討しますが、こぶの形状から破裂しやすいと考えられる場合には、こぶが比較的小さいうちから手術が検討されることもあります。

一方、破裂後の腹部大動脈瘤の治療方法としては手術治療しかなく、前述のとおり緊急手術を行った場合でも命を落とす確率が高いといわれています。

治療に加えて、生活習慣の改善も非常に重要です。なかでも喫煙は破裂の重大な危険因子につながるため、禁煙することが必要です。

腹部大動脈瘤は、瘤が大きくなるまで無症状で経過するため、早期発見のためには定期的に健康診断を受診すること、動脈硬化を起こさせない生活習慣を保つことが大切です。特に50~70歳の方、また男性に生じやすいという特徴があるため、該当する方は特に注意しましょう。

また、気になる症状がある場合は破裂のリスクが高い状態であるといわれているため、腰痛や腹痛、腹部の圧迫感などがある場合には、早めに病院の受診を検討しましょう。

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