院長インタビュー

高度先進医療とスマートホスピタル化の推進で医の最先端を走る、 北里大学病院

高度先進医療とスマートホスピタル化の推進で医の最先端を走る、 北里大学病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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神奈川県相模原市南区にある北里大学病院は1971年に開院し、すでに半世紀余りの歴史を持っています。2010年に政令指定都市へ移行した相模原市を中心に、神奈川の県央エリアの医療を支える重要な役割を担っている前病院長・現常任理事の髙相晶士(たかそう まさし)先生は、同院があらゆる面で日本を代表するレベルを保つためにさまざまな改革を進めています。髙相先生にお話を伺いました。

当院が位置する医療圏の人口は、200万人に達します。他の都市で比較すると、例えば神戸市の人口は約150万人で、福岡市もほぼ同じぐらいです。神戸と福岡にはそれぞれ5つ前後の大病院がありますが、ここ相模原エリアには中規模病院として独立行政法人国立病院機構相模原病院、相模原協同病院、隣町の町田市民病院がありますが、1135床を有して大病院と呼べるのは当院しかありません。この一点だけからも神奈川の県央において当院がどれほどの重責を果たしているか、お分かりいただけると思います。

特に、3次救急を担う病院は人口200万人に対し当院1つのみです。相模原は全国の政令指定都市で唯一市民病院がないだけに、一般の重症患者はもちろん、周産期救急や小児外科についても当院が一手に担っているといっても過言ではありません。二次救急を行う病院も不足しているため当院もその一翼を担っており、その意味でも大学病院でありながら地域に根付いた病院といえると思います。

一方で、当院は国内屈指の規模を誇る特定機能病院です。その責任を忘れず、医療人を育て、かつ質の高い臨床研究を引き続き行っていきます。

相模原市は、介護老人保健施設(老健)が集中していることにおいて全国でも上位の地域です。若い人の流入も増えていますが、老健が新たに開設されるのに伴って高齢者の数も増加する傾向にあり、高齢者への医療をいかに確保するかが大きな課題となっています。お年寄りは複数の疾患をお持ちの方が多いため、総合病院である当院の責任は重く、今後とも地域の期待に応えられるよう努力を重ねていきたいと考えています。

当院は29の診療科と19のセンターを持ち、それぞれ特定機能病院として高い水準の医療を提供しています。そのなかでもとくに高度先進医療やがんの治療に対して、新しい医療機器や治療法を積極的に導入してきました。現在、がんの低侵襲治療を実現する強度変調放射線治療(IMRT)装置のほか、ロボット支援下内視鏡手術を行うダヴィンチも2台が稼働中で、泌尿器科、消化器外科、婦人科、心臓外科および耳鼻科で実施しています。さらに当院はがんゲノム医療連携病院に指定されており、がんの患者さん1人ひとりの遺伝子情報に基づくゲノム医療も行っています。

当院は1972年に腎移植を開始して以来、これまでに数多くの実績を残して、国内有数の腎移植センターの地位を確立しています。近年はコロナ禍の影響で腎移植も停滞を余儀なくされていましたが、2023年にようやく再開できました。今後も引き続き生体腎移植や献腎移植を担う拠点として技術の向上発展に努めていきます。

当院の数ある診療科の中でもとくに特色があるものとして、小児心臓血管外科を挙げることができます。同科は2014年に新病院が開院したのに伴って活動を始めた周産母子成育医療センターの一員として発足したもので、新生児や未熟児の複雑心奇形に対しても人工心肺下の手術を積極的に行っているほか、小切開や内視鏡下での低侵襲手術、無輸血体外循環など、今日の成育医療をリードする取り組みに力を入れています。

当院の整形外科では、同種骨・靭帯組織の移植手術を数多く行っています。これは、亡くなられた方から生前の意思により提供された組織(骨・靭帯)を北里大学病院骨バンク(KUBB)で保存し、必要に応じて保険診療として手術に使用しているものです。KUBBでは関連学会のガイドラインに基づき組織の適切な処理・保存を行って安全性の確保に努めており、当院の骨移植への高い信頼性の基礎をなしています。

医療現場でのロボットの活用は手術だけにとどまりません。当院では労働自体に最新のロボティクスを取り入れようと考えており、ロボットが医療スタッフの業務を部分的に代行するようなスマートホスピタルのしくみの導入を検討中です。いわば医療ICTの最先端を行こうとするものであり、私たちはこれを“やさしいICT”と呼んでいます。院内から紙の掲示物を減らしてデジタルサイネージに置き換えるなど小さなことから始めていますが、ICT自体、年齢を問わずまだまだ敬遠されがちです。しかし、今後必要になってくる考え方であることは間違いないので、理解を広めるための努力を怠ることなく、一歩一歩推進していくつもりです。

私は、医療者には人を助けたいという本能のごとき衝動があると信じており、私自身の中にもそのような自分を突き動かすエネルギーがあると感じます。その“本能”を個人個人が最大限に発揮でき、なおかつお互いに尊重し合えるような病院にしたいと切に願っています。

学祖の北里柴三郎先生が説いた“事を処してパイオニアたれ。人に交わって恩を思え。そして叡智をもって実学の人として、不撓不屈の精神を貫け。”から導いた当院の理念は“患者中心の医療”“共に創りだす医療”です。この理念のもと、これからも誠心誠意、努力してまいります。

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