東京都港区三田の地で、70年以上にわたり地域の中核病院として地域医療を担ってきた東京専売病院を受け継ぎ、2005年に開設された国際医療福祉大学三田病院。2015年には東京都がん診療連携拠点病院の認定を受け、がん診療における基幹病院としても充実した機能を持つことから、全国から多くの患者さんを集めています。患者さん本位の温かな雰囲気のなかで、大学病院ならではの専門性に基づく先進的で良質な医療を提供する同院について、病院長の池田 佳史先生にお話を伺いました。
当院は2005年、日本専売公社(現日本たばこ産業株式会社)の職域病院だった東京専売病院を継承して開設されました。現在、国際医療福祉大学には6つの附属病院があり、その中心的な役割を担っています。
当院の前身である東京専売病院は職域病院でありつつ、開設以来70年以上この都心で地域の医療に力を尽くしてきた病院でした。当院では東京専売病院が持ち続けてきた地域の皆さんを家族のように思う気持ちを継承しつつ、2012年に新病院をオープンし11室の手術室(ハイブリッド手術室を含む)を有する291床の病院として先進的な医療の提供を行っています。
当院は開設以来、がんの治療に力を尽くしています。2005年には乳腺センターや頭頸部腫瘍センター、呼吸器センターや消化器センターを開設して診療科の垣根を超えたがん治療体制を構築し、2008年には東京都からがん診療認定病院(現・がん診療連携拠点病院)の認定を受けがん治療の3本柱(手術、放射線治療、化学療法)を患者さんの状況に応じて組み合わせ、患者さんによりそう治療を行っています。
特に手術では、“hinotori™”(腹腔鏡手術を支援する内視鏡下手術支援ロボット)を導入し、泌尿器科疾患・婦人科疾患の手術を行っています。今後は、消化器疾患や呼吸器疾患での導入を目指しています。また、放射線治療においては高精度な放射線治療を行うトモセラピーを導入し、国内でも新しい治療を提供しているほか、化学療法では近年大きな進歩を遂げた分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤といった薬による治療を、落ち着いた雰囲気の外来化学療法室で受けていただくことができます。
心臓血管センターは、循環器内科・心臓外科・血管外科が一体となり、幅広い循環器疾患の診療にあたっています。循環器内科は通常診療はもちろんとして、心臓に埋め込んだペースメーカーのリード抜去に実績があります。体内に埋め込んだペースメーカーからの電気刺激を心臓に伝える電線がリードですが、感染などにより抜去する必要がでてくることがあります。リードはある程度の期間が経つと体内の組織に癒着してしまいます。何らかの理由でペースメーカーやリードを体内から抜去する必要がある場合、非常に高い技術を要求されます。同科の合屋 雅彦先生は、リード抜去手術の初期から技術の確立に貢献し、すでに1,000例を超える症例数を持ち、全国の病院から患者さんが紹介されてやってきます。同科にはさまざまな循環器診療ガイドラインの作成に貢献し、心エコー図診断でその名を知られる大門 雅夫先生や、指定難病である肺高血圧症の治療薬の開発にも関わり、400例以上の治療経験と良好な治療実績がある田村 雄一先生がおり、全国から患者さんが治療を受けに集まっています。また、血管外科が専門の重松 邦広先生、心臓血管外科を専門とし、開心術 術者としての実績3,000件以上の実績を持つ秋田 雅史先生が診療を行っています。
当院の頭頸部がんの手術件数は全国で見ても非常に多い症例数であり多田 雄一郎先生と増淵 達夫先生が中心となり実績を積んでいます。特に耳下腺悪性腫瘍の治療は日本全国から患者さんを集め、進んだ治療をおこなっています。なお、頭頸部がんの治療は、音声や言語、そしゃく機能に影響を及ぼします。治療に伴う障害・後遺症を最小限に抑え、早期退院、早期社会復帰を促進させるため、高水準の集学的医療に加え、治療の一環として専門家による治療後の機能回復訓練(そしゃく、嚥下、音声、言語、理学療法、作業療法)を組み入れ、術後のQOLを考えた治療には定評をいただいています。
また、当院で全国的に有名な治療として、耳鼻咽喉科の岩崎 聡先生による人工内耳手術があります。これは重度な難聴に対する手術で、早期の手術が求められる幼児の患者さんをはじめ、全国から患者さんが集まり、8年連続(2024年現在)日本でも非常に多い手術件数を達成しています。
当院では1〜2か月に1回、様々な演奏家をお招きしてロビーコンサートを行っています。これまでに当院で人工内耳の手術を受けた患者さんが結成した演奏団体“カンタービレ”さんも演奏されています。いきいきと演奏する姿を見て美しい音色を聴くと、患者さんはもとより我々も大変励まされ、よりよい医療の提供への思いを強くし身が引き締まる思いがします。
当院は各診療科の風通しがよいため、診療科同士が協力して診療を行う文化が根付き患者さんによりよい医療を提供できていると考えています。また、70年以上にわたりこの地で皆さまに信頼されてきた病院として、職員全体で患者さんのことを家族のように思い、支えるという思いが全スタッフに浸透しています。この伝統を守りつつ、先進的で安全な医療を提供することで、地域の皆さまを支え、より信頼される病院を目指しています。健康のことでなにかお困りごとがあったらいつでもいらしてください。
池田 佳史 先生の所属医療機関