大阪府の東南部、河内長野市にある大阪南医療センターは、南河内医療圏における中心的な役割を担う総合病院です。高齢化が進む近年は救急医療にも力を入れ、地域住民の暮らしと健康を支えています。
そんな同院が担う役割や今後の展望について、院長である小田 剛紀先生にお話を伺いました。
当院は1945(昭和20)年に国立大阪病院として設立されました。それから20年後の1965(昭和40)年には名称を国立大阪南病院と改め、2004(平成16)年の国立病院・療養所の独立行政法人化に伴って現在の大阪南医療センターとして新たなスタートを切りました。
国立病院として診療していた当時は診療科ごとに専門性の高い医療を行っておりましたが、近年の医療機関の機能分化に伴って “地域に根ざした病院”へと舵を切りつつあります。当院のある河内長野市をはじめとした6市2町1村からなる南河内医療圏の二次救急医療機関として、また地域がん診療連携拠点病院として、当院は地域医療をしっかりと支えていきたいと考えています。
河内長野市は高齢化率が 35%を超えるなど、大阪府にある33の市の中でもっと高齢化が進行した地域になっています(2022年時点)。そうした状況の中で“地域に根ざした医療を”と考えたとき、何より大切になるのが高齢患者さんへの対応だと考えています。
ご高齢の方は複数の病気をお持ちのことが少なくありませんので、思いがけず体調を崩してしまうことも増えるだろうと予想されます。そのため当院では昨年度より救急医療体制の強化を図り、救急車を積極的に受け入れるよう努めています。2023年度は2,800台ほどだった救急車の受け入れ台数も、2024年度は1割増の3,100件ほどとなる見込みです。
当院の整形外科は、30近くある診療科の中でもっとも多くの医師が所属しています。私は整形外科の中でも脊椎外科を専門にしておりますが、ほかにもリウマチ、上肢の外科、下肢の外科など各領域を専門にする医師たちにより、専門性が高く、柔軟性のある診療を行っています。たとえばご高齢の方に多くみられる大腿骨頚部骨折に対しては、可能なかぎり受傷当日に手術を行うことで1日も早く日常生活に戻れるようサポートしています。また当院の強みでもある関節リウマチの症例数は、国内でもトップクラスの数字を誇ります。
高齢化に伴って手術件数が増加傾向にある人工関節置換術については、膝や股関節はもちろん上肢(肩・肘など)や足関節など四肢全般の手術に対応できます。また術前に入念なシミュレーションを行い、シミュレーションどおりの手術を可能にする“ナビゲーションシステム”を導入するなど安全面にも十分な配慮をしています。
人工関節置換術とは、傷んだ関節を人工関節に置き換える手術です。関節の痛みや関節軟骨のすり減り・骨の変形の具合は患者さんごとに異なりますので、個々の患者さんの状態に合わせてさまざまな調整が必要になります。ナビゲーションシステムはCT画像をもとに理想的な人工関節をデザインし、デザインどおりに人工関節を設置できるよう手術をサポートしてくれます。これにより人工関節の耐久性が向上すると同時に、より安全性の高い手術が可能になります。
当院は国指定の“地域がん診療連携拠点病院”であり、地域連携のもとに専門的ながん診療を提供すると同時に、患者さんからご家族への情報発信を行ったり、“がん相談支援センター”にて皆さまからのご相談を受け付けたりしています。
また“がんゲノム医療連携病院”として近畿大学病院の協力のもと遺伝子パネル検査を行っていることも特徴です。2023年3月には新たに緩和ケア病棟を開設したほか、2025年からは新しくなったリニアック(放射線治療装置)も稼働し、がんの放射線治療を強化する予定です。
私は大阪大学を卒業して整形外科医となり、2002年からの3年間、当時の国立大阪南病院でリウマチ科医長を務めました。その後はしばらく当院を離れていたものの、2016年に骨・運動器疾患センター部長としてこちらに戻り、副院長を経て2023年4月に院長を拝命いたしました。
2023年5月には新型コロナが5類に移行され、私たちの生活も日常を取り戻しつつあります。一方で、南河内医療圏の三次救急、災害拠点病院としての役割を担ってくださっていた近畿大学病院が堺市へと移転する計画が進んでいることに、ご不安を感じておられる方も少なくないでしょう。
近畿大学病院移転後の南河内医療圏を守るため、当院は時代とともに移り変わる地域に根ざし、質が高く安定した医療をご提供するべく取り組んでまいります。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
*診療科数や医師、提供する医療の内容等についての情報は全て2024年8月時点のものです。