1982年開院の昭和大学附属豊洲病院からの移転および完全リニューアルという形で、昭和大学江東豊洲病院は2014年に開院しました。常に患者さんの目線に立って真心を忘れないという昭和大学の“至誠一貫”の精神に基づき日々地域の方々を守る同院の取り組みや思いについて、病院長である横山 登先生にお話を伺いました。
昭和大学江東豊洲病院の前身は、1982年に開院した昭和大学附属豊洲病院です。その後、豊洲エリアの急速な発展に伴う江東区南部地域の人口急増に対応するため、2014年3月に移転とリニューアルを行い“昭和大学江東豊洲病院”が新病院として開院されました。
新病院となる際には診療科目と病床数を増やすとともに、診療科の連携体制を強化してセンター化も進めました。さらに、東京都指定二次救急医療機関や東京都災害拠点病院、地域周産期母子医療センターといった責務を担うようになり、大きな成長を遂げました。2024年7月現在、病床数400床と江東区内で2番目に大きな規模である当院は、地域医療の中核を担う医療機関の1つとして、専門的な医療の提供を目指し続けています。
当院は、前身の昭和大学附属豊洲病院時代から消化器系疾患の診療を強みとしていました。新病院となってからの消化器センターではさらに体制を強化し、食道や胃、小腸、大腸といった消化管および肝臓、胆道、膵臓、脾臓におけるあらゆる病気に対応し、迅速な診断と根治的かつ体への負担が少ない治療を目指しています。
特筆すべきは、センター長の井上 晴洋先生が開発した、胃食道逆流症に対する内視鏡的噴門部粘膜焼灼術(ARMA*:アーマ)です。胃食道逆流症では、噴門部(胃と食道のつなぎ目)が緩んでいるために胃液が食道に逆流し、胸やけなどの不快な症状や食道の粘膜のただれが起こります。ARMAは、胃と食道のつなぎ目を焼灼することで人工的に潰瘍をつくり、その潰瘍が治癒する過程で胃の入り口を引き締める治療です。内視鏡を用いて行う低侵襲な(体への負担が少ない)治療で、胃酸を抑える内服薬を服用しても症状が改善しない方が適応となります。
*ARMAは自費診療です(2024年7月時点)。まずは適応となるかを調べるための検査入院を1泊2日で行います。適応となった場合にはARMAを実施します。内視鏡治療の所要時間はおよそ20〜30分で、治療の入院は5泊6日ほどかかります(年齢や基礎疾患により異なる)。術後3週間頃に、外来診療および必要に応じて内視鏡検査を行います。その後、術後2か月頃に、効果判定のための検査入院を1泊2日で行います。治療による主なリスクとしては、術後まれに治療部位から出血がみられたり、術後3週間頃に一時的に食道が狭くなったりする可能性があります。なお、ARMAにかかる費用は約30万円(概算、症例により多少の変動あり)です。
当院は江東区内で不足する小児医療と周産期医療に重点を置き、“女性と子どもにやさしい病院”をコンセプトに生まれ変わりました。そうした経緯もあって周産期センターには非常に力を入れており、専門的なケアを必要とするハイリスク妊婦さんの分娩はもちろん、大きな合併症のないローリスク妊婦さんの分娩や、婦人科疾患を抱える患者さんの診療にも広く対応しています。
妊娠中の母体の緊急疾患に対しては、状況に応じて当院のこどもセンターや救急センターとも連携し、迅速な対応を目指しています。また直近では、子どもを望む方々の要望に応えるべく、2024年1月に体外受精などの高度生殖補助医療に対応する“リプロダクション外来”を開始しました。このような取り組みを通じて我々は、地域の子育て世代の方々を力強く支えていきたいと考えています。
当院は、こどもセンターにも力を入れています。新生児から中学校卒業までのお子さんの内科的・外科的診療を行う当センターでは、新生児科、小児内科、小児外科における診療科間の垣根を取り払って包括的な診療体制を構築してきました。
“こどもにやさしい病院”を目指し、外科手術ではお子さんの負担をできるだけ軽減できるよう、可能な限り腹腔鏡手術と胸腔鏡手術を導入しています。入院が必要な小児患者さんに幅広く応えるため、病床40床を備えています。さらに、当院は江東区唯一の新生児集中治療室(NICU)15床を有し(2024年7月時点)、新生児の救急搬送にも24時間365日体制対応しています。
2014年の開院当初は診療科数に比べて病床が不足しがちで、救急要請があっても満床で受け入れられないケースが発生していました。そのような状況を打破するために2019年には300床から400床に増床しました。さらに、救急要請への対応をより迅速かつスムーズにするため、いったん事務を通じて各診療科に連絡する形から、救急要望のあった診療科の救急当番の医師に直接連絡がつながる形に変更するなど、救急対応体制の改善にも努めました。
地域の皆さんが病気やけがで困ったとき真っ先に頼れる存在となれるよう、そして特に重症の方々をしっかりと受け入れられる病院であるべく、当院は“救急搬送を断らない”という方針の下、今後も救急対応に尽力する所存です。
2024年、当院は開院10周年を無事に迎えることができました。地域の皆さんの温かいご支援とご協力の賜物です。心より感謝しております。
この10年は、地域を守る病院としての強固な土台作りに励んだ10年でありました。そしてこれからの10年は、より地域に根付いた病院へと進化するための10年になるでしょう。「昭和大学江東豊洲病院に来れば安心」と地域の皆さんに思っていただけるよう、職員一同一丸となって、よりよい病院づくりを目指します。
なお、2025年4月に昭和大学が校名を“昭和医科大学”へ変更するにあたり、当院の名称も“昭和医科大学江東豊洲病院”に変更になります。名称変更後も、皆さんの温かいご支援とご協力をどうぞよろしくお願いいたします。