院長インタビュー

新たな時代を見据えながら、高齢者医療や医療人の育成に取り組む沖縄県立中部病院

新たな時代を見据えながら、高齢者医療や医療人の育成に取り組む沖縄県立中部病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

目次
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沖縄県うるま市にある沖縄県立中部病院は、県内初となる救急救命センターや総合周産期母子医療センターを備え、がん診療などの急性期医療を中心に地域医療の中核的な役割を担っています。

臨床研修病院として医療人の育成にも熱心な同院の特長について、院長の玉城 和光(たまき かずみつ)先生にお話を伺いました。

外観(転用)
病院外観(沖縄県立中部病院ご提供)

当院のルーツである沖縄中央病院は、戦後の医師不足に対応するため1946年に開院し、地域に根ざした医療に専念してきました。

現在は、559床の病床を備える高度急性期病院へと発展し、救命救急センターをはじめ、地域がん診療連携拠点病院、総合周産期母子医療センター、基幹災害拠点病院などのさまざまな役割を担っています。また当院は、沖縄県に点在する離島の支援にも注力し、離島診療所への医師派遣や研修医に対する離島医療教育などに取り組んでいます。

1967年にスタートした臨床研修事業では、これまでに1,300人以上の医師を輩出しており、専門性と総合力を兼ね備えたプロフェッショナルとして全国各地の医療機関で活躍しています。

太平洋戦争により沖縄県が米軍の統治下に置かれたことから、当院ではアメリカ式の研修プログラムを採用しています。このプログラムは、2004年から始まった日本の新研修医制度のモデルにもなり、医療の発展に大きな影響を与えました。

プログラムの内容は、基礎的な診察能力を培うプライマリ・ケアの研修を幅広く取り入れつつ、内科や外科のような専門性を高めるための研修も含まれています。

離島支援を行う当院は、総合的な診療を行うプライマリ・ケアを特に重視しています。なぜなら離島医療においては、どんな状況でも一人で適切に対処できるように、幅広い初期診療に精通したジェネラリストであることが求められるからです。

また当院では、NP(診療看護師)の育成にも積極的に取り組んでいます。NPに対しても初期研修医と同じ研修プログラムを適用しており、医療の総合力を身につけられる点が特長です。

さらに当院の研修では、教えられた人が教える側に回る“屋根瓦方式”のグループ診療や、診療チーム全体で治療方針を決定するプロセスを採用し、積極的なコミュニケーションによるチーム医療を学ぶことができます。

今後も当院は、沖縄県の離島を支援するという使命を果たすため、専門性と総合力を兼ね備えた医療人を育成していく方針です。

当院は、沖縄県初の救急救命センターとして、24時間365日体制の三次救急(命にかかわるような重篤な救急)に努めています。一方で、重症度に関わらず一次救急から三次救急まで対応できる“ER型救急”を全国で初めて取り入れた病院でもあり、軽症から重症まで幅広く救急搬送を受け入れる体制を整えています。

当院の行う離島支援では、重症度の高い三次救急に対応できない場合もありますが、そのような際も気道の確保や動脈の止血などを徹底し、適切な応急処置を行ったうえで対応可能な医療機関に引き継いでいます。

さらに、地域医療の底上げを目指して病病連携や病診連携に取り組み、下り搬送(高次の救急病院から一般病院に搬送すること)による病床の有効活用を推進しています。

当院は、2002年に総合周産期母子医療センターに指定され、救急救命センターと連携した婦人科の診療などを通じて地域の周産期医療を支えてきました。

地域の母子に対する当院のサポートは妊娠や出産、婦人科や小児科の診療だけにとどまらず、性暴力の被害にあった女性を支援するため、2019年には病院拠点型の“ワンストップ支援センター”を開設しました。

同センターでは、女性相談支援員による電話相談や面接相談のほか、警察、法律相談センター、女性相談所、児童相談所などの関係機関と連携し、性暴力の被害にあわれた方々に寄り添っています。

高齢の患者さんの中には、在宅であれば寝たきりにならずに生活できていたにも関わらず、入院生活によって寝たきりになってしまうケースも見受けられます。こうした状況を踏まえ近年のアメリカでは、急性期病棟で提供している診療を在宅でも行う“Hospital at home”(ホスピタル・アット・ホーム)という動きが広まっています。

当院もこれに習って、高齢化社会に対応した在宅医療の拡充に取り組んでいます。たとえば当院の地域ケア科は、退院後の療養生活に不安のある患者さんやそのご家族の相談に乗り、在宅訪問などを通じて退院後のフォローアップを行っています。

また、予後が1か月以内と想定されるがん患者さんについては、地域の訪問看護ステーションや介護事業所などと連携し、住み慣れた自宅や施設での集中的な訪問診療を行っています。

高齢化社会に対応するためには、当院だけで何ができるのかと考えるのではなく、視野を広げて地域全体で患者さんを守っていく姿勢が重要です。そのためには地域の医療機関との連携を強化し、総力を挙げて在宅医療の体制を整え、高齢になっても安心して暮らしていける地域医療を実現していかなければなりません。

また、認知症の患者さんや複数の疾患を抱える高齢の患者さんと真摯に向き合い、診療科を横断したチーム医療で質の高い医療を追求していきます。

これからも当院は、充実した研修体制で次世代の医療の担い手を育てつつ、離島支援を含めた地域医療に全力で取り組んで参ります。

*病床数や診療科、医師、提供する医療の内容等についての情報は全て2024年10月時点のものです。

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