神奈川県川崎市高津区に位置する帝京大学医学部附属溝口病院は、最寄りの2駅から徒歩圏内という通院に便利なロケーションにあります。地域の救急医療を担いながら、がん治療や心臓手術など専門性の高い医療を提供し、川崎市北部の災害拠点病院としても機能しています。
2023年には新たに紹介重点医療機関の指定を受け、地域の医療機関との連携を強化している同院の役割と今後の展望について、院長の原 眞純先生にお話を伺いました。
1973年に3診療科(内科、小児科、耳鼻咽喉科)・80床の体制でスタートした当院は、1981年の増改築により12診療科・263床へと大きく発展し、翌年には総合病院として新たな一歩を踏み出しました。
その後、二次救急医療機関や災害拠点病院に指定されるなど地域医療の中核を担う病院へと成長を遂げ、2017年には3年以上の歳月をかけて新病院を開設しました。現在は21診療科・400床を有し、急性期医療を中心に医療サービスを提供しております。
当院は2023年より紹介重点医療機関の指定を受けており、初めて受診される場合には、原則としてかかりつけ医などからの紹介状が必要となります。「敷居が高くなった」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、地域の医療体制を守っていくためにも必要な制度ですので、ご理解いただければ幸いです。
病院の規模が大きくなっていくにつれ役割は変化していきますが、地域の皆さまに寄り添う気持ち、地域医療を支えていきたい思いは変わりません。当院はこれからも、救急医療や急性期医療を担う病院として地域の医療機関と連携しながら、適切な医療を提供できるよう努めてまいります。
当院では以前から、低侵襲(身体への負担が少ない)な内視鏡下手術を積極的に行っていましたが、2014年には手術支援ロボット“ダヴィンチSi”を導入し、より患者さんへの負担が少ない手術が可能となっています。
現在、外科(消化器、呼吸器)、産婦人科、泌尿器科などの手術で幅広くダヴィンチを活用しています。年間の手術件数は約200件にのぼり、特に泌尿器科での前立腺がんの手術において高い実績があります。
当院は現在、内科や外科をはじめ、耳鼻咽喉科、整形外科、産婦人科、小児科など21の診療科で診療を行っています。各領域にスペシャリティをもった医師が所属しており、診療科ごとの垣根が低くそれぞれ連携を取りながら診療を行っていることが特長です。
循環器、呼吸器、血液、内分泌代謝・糖尿病、腎臓、感染症など各分野で細分化されている内科では、各専門の医師が日頃から情報を共有し、患者さんの状態を総合的に評価することで適切な治療計画をご提案しています。他科との連携もスムーズに行われており、たとえば手術後の合併症や感染症などが発生した場合にも、関連診療科が迅速に対応し、適切な対応を取ることが可能です。
また、他の医療機関との連携も積極的に行っており、血液内科では造血幹細胞移植が必要な疾患では、近隣の専門施設と連携して治療に当たるなど、適切な医療提供ができるよう努めています。
消化器内科においては、膵臓・胆管・胆嚢疾患の診療レベルが非常に高く、超音波内視鏡を用いた検査や治療を積極的に行っています。そのほか特徴的な診療科として、耳鼻咽喉科が挙げられます。当院の耳鼻咽喉科は耳の手術(鼓室形成術)の件数が非常に多く、全国各地から患者さんが訪れます。また整形外科の手術も増えており、最新のナビゲーションシステムを活用した人工関節手術など専門的な治療を提供しています。
このように当院では、さまざまな診療科が専門性の高い診療を行うと同時に、他科や他院との連携により患者さん一人ひとりに合わせ適切な医療提供ができるよう体制を整えています。
現在、オンラインでリアルタイムに専門医師からの迅速かつ適切なアドバイスを得られる診療支援システムの導入を計画しています。これにより、救急の受け入れなどの際に担当医が各科専門医からアドバイスを受けることで、患者さんの状態を的確に見極め、早期に治療を開始できることを目指しています。
当院では、患者さんがより快適に過ごせるよう環境整備にも力を入れており、呼び出しシステムを導入するほか、セキュリティ強化にも取り組んでいます。また、患者さんやスタッフが少しでもリラックスできるようにと、週に2回ほどボランティアの方がピアノの生演奏をしてくださり、優しいピアノの音色が訪れる方々の心を癒やしています。このほか病院近くで昔から営業していた喫茶店に“院内カフェ”を出店していただくなど、患者さんや地域とのつながりを大切にし、皆さんに喜んでいただけるような取り組みを行っています。
私たちは、患者さんに「ここに来てよかった」と思っていただける病院を目指しています。専門性の高い医療を提供する大学病院ではあるものの、地域の方々にとって身近で安心できる存在でありたい――。それが私たちの願いです。
当院ではロボット支援手術などの高度な医療を提供する一方で、“患者さんを総合的に診る”という姿勢を大切にしています。各分野のエキスパートとして日々研鑽を重ねている医師が多数在籍しており、それぞれが専門性を生かしつつ患者さん一人ひとりの生活環境まで含めた幅広い視点で診療を行っています。
もう1つ力を入れているのが、地域のかかりつけ医の先生方との顔の見える関係づくりです。普段は地域のかかりつけ医の先生のもとで診療を受けている患者さんに精密検査や手術が必要になった際には、当院がスムーズに治療を引継げるよう、しっかりとした連携体制を整えています。今後も地域医療の発展に貢献できるよう、スタッフ一同で努めてまいります。
※医師や提供している医療についての情報および診療科や病床、本文中の数字は全て2024年12月時点のものです。
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