院長インタビュー

がん診療や災害対応、さまざまな場面で地域医療を支える――けいゆう病院

がん診療や災害対応、さまざまな場面で地域医療を支える――けいゆう病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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神奈川県横浜市西区にあるけいゆう病院は、がん診療連携指定病院や災害拠点病院などの指定を受けており地域で重要な役割を担う一方で、さまざまなイベント時の医療提供など幅広く地域の医療に貢献している病院です。

同院の役割や、今後について院長の松本 秀年(まつもと ひでとし)先生に伺いました。

特別室
特別室

当院は1934年に、警察官・消防官からの拠出金等を建設資金として“警友病院”の名で横浜市中区山下町に開院し、職域病院としての役割だけでなく、地域の中核を担う病院として地域の皆さんに対し医療活動を行ってきました。

その後、建物の老朽化などもあり1996年にみなとみらい地区へ新築・移転し、県民の方に限らず外国の方への対応もできる病院を目指して、現在の“けいゆう病院”へと名称を変更しました。当初351床だった病床は現在では410床となっており、1日の平均外来患者数は約1,000人を超える規模となっています。

2019年には手術支援ロボット“ダビンチ”を、2020年には高精度放射線治療装置“TrueBeam”を導入し、さらに2024年には化学療法室をリニューアルするなど常に環境改善を図りながら高度な医療を提供し、患者さんにとって優しい病院を目指して成長を続けています。

内観
院内緑化推進プロジェクト

当院は2013年から“神奈川県がん診療連携指定病院”となっており、がん診療体制の強化に努めています。緩和ケア内科や遺伝カウンセリング外来なども設置し、さまざまながんに対応できるように、どのステージであっても適切な医療を提供できるよう設備や体制を整えています。また、がん患者サロン“みなとカフェ”を開催するなどして、患者さんやその家族とお気持ちを話す機会を設けています。

治療としては、2019年より手術支援ロボットダビンチを導入しており、泌尿器領域や上部・下部消化管領域などさまざまながんに対して低侵襲(ていしんしゅう)(体への負担が少ない)な治療を実践しています。

放射線診断では、小さな病変等の抽出能力が向上したMRI(3テスラ)を導入したことにより画像の解像度の向上、撮影時間の短縮が可能となりました。また、放射線治療では“TrueBeam”により病巣を三次元で立体的にとらえ、がんに対して多方面から放射線を照射することにより正常組織に極力当てないようにしながら、がん患者さんの身体への負担を軽減するように定位放射線治療(SRT)や、腫瘍に対して集中的に照射を行うことができ、特に、いびつな形の腫瘍にはその形に合わせて放射線を照射することが可能な強度変調放射線治療(IMRT)そして、脳腫瘍に対する新しい治療である“HyperArc”などを実践していることが当院の強みとなっています。

放射線治療装置
放射線治療装置

2022年には“横浜市乳がん連携病院”に指定されており、幅広い世代で見られる乳がん診療にも力を入れ“やさしい治療”を心掛けています。乳がんに限らず、乳腺疾患の診断から治療まで総合的・包括的なケアを提供するための部門を超えた医師、看護師等で構成された“ブレストチーム”によるブレストセンターを開設し、多職種でのチーム医療による乳がん診療の充実や患者支援に取り組んでいます。

乳がんは早期発見が大切であることから、市民講座の開催など早期発見につなげる活動に力を入れているほか、治療にあっては、医療用高周波電流を発生させる装置をがん組織に刺し、通電させることによって熱を発生させ、がん細胞を壊死させる治療法として“ラジオ波焼灼療法”を2023年12月から保険診療として行えるようになりました。

当院は、二次救急(入院や手術を要するような重症者の救急)医療施設として、年間5,000件近い救急搬送を受け入れており、24時間365日体制で地域の救急医療を守れるよう努めています。また、“地域連携ホットライン”を開設しており、地域の医療機関の先生から緊急性のある患者さん(内科主体)の救急受診要請を受理しています。

ホットラインを運用している地域医療連携センターは、地域の医療・福祉機関と当院とがスムーズに連携し、患者さんが医療のことで困ることのないよう、さまざまな機能を有しています。たとえば、患者さんの経済的・社会的な問題解決のお手伝いをする医療福祉・在宅ケア支援機能や、地域の医療機関と連携し入院の調整を行う入院調整機能などがあります。

こうした日常的な地域連携に加え、当院のあるみなとみらい21地区では、国際会議が頻繁に開催されることから、各種イベント開催時の医療バックアップも行っています。今後も日々の診療だけでなく、イベント時も含め多面的に地域と連携し、適切な医療の提供に努めてまいります。

当院は、災害拠点病院として災害発生時の急性期に医療活動を展開する災害医療派遣チーム(DMAT)を設置しています。これまでクルーズ船内での新型コロナウイルス集団感染、能登半島地震発生に伴う災害医療に職員を派遣して従事してきました。

また、横浜市のビックイベントである“横浜マラソン”では当院の近くがゴールに近いことなどから、病院1階に簡易ベッドを設置し、医師、看護師、事務スタッフが協力して、選手らに対してスムーズな医療提供を実施しました。こうしたイベントに協力しながら地域に貢献するとともに、災害医療を想定したソフト面での体制づくりに取り組んでいます。

横浜マラソン
横浜マラソン2024

また、当院では災害時に医療の情報連携を行うEMIS(イーミス)と呼ばれるシステムを活用しており、物資不足時にも治療を継続できる備蓄などハード面の準備も行っています。

このように定期的な訓練と、日頃からの備えによって万が一の災害発生時でも災害拠点病院としての責務を果たすため、ハードとソフト両面において準備と整備を徹底しています。

化学療法室
化学療法室

2024年に化学療法室をリニューアルし、従来の10床から15床へと拡充しました。以前使用していた化学療法室は広さが十分ではなかったため、患者さんがより快適に化学療法を受けられる環境の提供に向けて、今回のリニューアルを行いました。

外来での抗がん剤治療については、副作用を抑える薬剤の進歩などにより、安全性が向上しています。そのため、がんであっても社会生活を続けながら治療を受けられる時代となりました。

今後も快適な空間と安全な治療の提供を目標に、患者さんの負担を少しでも軽減できるよう努めてまいります。

当院の理念は“患者さん中心の医療”“高度で良質な医療”“安心で信頼される医療”です。そのために大切なのは、部門間の連携だと考えています。当院が持っている能力や技術を全職員が正しく理解することで、高度な医療を最大限に提供することが可能になると考えます。

そうしたなかで、2025年4月からは“安らぎ”と“癒し”を感じていただける居心地の良い空間づくりとして、院内緑化推進プロジェクトを設置して院内緑化を進め、“心の医療”を提供させていただいております。来院された際には、1階にある植物を観賞していただければ幸いです。

私たちは、可能な限り質の高い医療の提供を目指しますので、地域の皆さんにはぜひ、当院が有するさまざまな機能を十分に活用していただきたいと思います。小さなことでも相談していただけるよう、各種外来やブレストセンターのほか、入院や転院、退院後の療養や介護、リハビリなどの幅広い分野の相談を受け付ける総合相談窓口も開設しておりますので、何かあればご相談いただければ幸いです。

*写真提供……けいゆう病院

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