京都府舞鶴市にある舞鶴赤十字病院は、急性期から回復期、そして在宅医療まで、一貫した医療を提供しています。地域の中核的な病院として地域医療を支えている同院の役割や今後について、院長の片山 義敬先生に伺いました。
当院の開業は1953(昭和28)年までさかのぼります。当時、東舞鶴地区には国立舞鶴病院、国家公務員共済組合連合会舞鶴共済病院、市立舞鶴市民病院などの公的病院がありましたが、西舞鶴地区には公的病院がありませんでした。舞鶴市の行政をはじめ、西舞鶴地区の住民の皆さんの要望を受け、一般病床90床と内科・外科・放射線科の体制で診療を始めました。
その後は、徐々に診療科を増やし2014(平成26)年には東館のリハビリテーションセンターと回復期リハビリテーション病棟をオープンさせています。現在では、急性期から回復期、そして在宅医療までシームレスに医療を提供できる体制が整っています。
患者さんは舞鶴市内の方が大半を占めていますが、隣接する宮津市、綾部市、福井県の若狭地域の方々も来院されています。現在、舞鶴市には当院のほかに、舞鶴医療センター(旧国立舞鶴病院)、国家公務員共済組合連合会舞鶴共済病院、市立舞鶴市民病院の4つの公的病院があり、それぞれ役割を分担し相互に連携を図りながら地域医療を支えています。
救急においては舞鶴市を中心とした地域の二次救急(入院や手術を要する重症患者への救急医療)を担っており、当院に加えて舞鶴医療センターと舞鶴共済病院の3病院による当番・当直体制で、平日夜間と土日・休日の救急診療を行っています(2025年5月時点)。
当院の強みの1つは、先進的な治療を提供している整形外科です。2024(令和5)年には舞鶴市の支援を受け、京都府で初となるロボティックアーム手術支援システム「Mako」を導入しました。ロボティックアームは、コンピューターで制御された機械の腕(アーム)を意味します。
当院では主に人工股関節全置換や人工膝関節全置換の手術で用いており、医師がアームを操作し、人工関節を設置する際に傷んだ骨を削る工程で用いています。安全性の高い正確な手術が可能になりますので、変形性股関節症や変形性膝関節症などでお悩みの方はぜひご相談いただければと思います。
当院には低下した能力を再び獲得するため、集中的なリハビリテーションを提供する回復期リハビリテーション病棟があります。入院から退院後の在宅支援まで幅広く支える体制が整っており、地域福祉関係との連携を取りやすいのも特徴の1つです。また、歩行学習支援ロボットも導入しており、脳卒中や整形疾患による麻痺や筋力低下の患者さんに用いてリハビリテーションを行っています。掲げているスローガンは“すべての人々に尊厳を”です。急性期から回復期、維持期、在宅・訪問まで、関係先と密な連携を構築しながら、シームレスなリハビリ医療を提供しています。
当院には急性期治療を終え、在宅や介護施設への復帰を目指している患者さんに医療・支援を提供する地域包括ケア病棟もあります。病床数は50床です。在宅療養されている患者さんのリハビリテーションや、在宅で患者さんの介護をされているご家族の負担を軽減するためのレスパイト入院も受け入れています。また、在宅医療をサポートするため訪問看護・訪問リハビリも提供しており、急性期から回復期、在宅まで一貫した医療を提供できるのが当院の強みです。
高齢者2人で暮らしている世帯で、介護している人が入院したら介護されている人はどうすればよいでしょうか。2人そろって入院し、ともに療養・リハビリをしていただくことも選択肢の1つになるかと思いますが、今後はそうした医療需要を見込んだ診療体制を整えていかなければなりません。ただ、看護師をはじめとしたメディカルスタッフは現在でも不足気味で、更に少子化が進む未来では状況が悪化する可能性があります。そのため、これからは高齢のためフルタイムで働けなくても、できる範囲で仕事や社会活動に参加して、相互に手助けをする社会(地域共生社会)が必要になると考えています。特に高齢者の方などは、ケアされるだけでなくケアすることも視野に入れると、やりがいを感じていただけるのではないでしょうか。
舞鶴市では現在、当院と舞鶴医療センター、舞鶴共済病院、市立舞鶴市民病院の4つの公的病院の再編・統合を視野に入れた協議を行っています。過去にも統合に向けた検討をしたことがありましたが、4つの病院それぞれに特徴があることからそこを伸ばし、4つで1つの総合病院のように機能していこうということでまとまりました。
しかし、地域の人口が減り患者さんも減少するなかで経営環境が厳しさを増し、持続可能な医療提供体制を実現するために再び協議を始めました。現在のところ具体的な形にはなっていませんが、市民から求められている医療機能を維持しつつ、どのような形で医療機能を集約・再編していくのか、どこが運営主体になるのかなどについて話し合い、早期の合意を目指しています。方向性としては急性期と回復期を分けて再編し、建物ごとに機能を集約していく形になるのではないかと思います。ただ、結論が出るまでもう少し時間が必要です。それまでは従来通りに医療を提供してまいりますので、地域の皆さんにおかれましてはご安心いただければと思います。
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