関節リウマチは、関節に炎症が起こり、進行すると関節の変形や機能障害によって日常生活に影響を及ぼすことのある病気です。しかし近年では治療法が大きく進歩し、早い段階から適切な治療を行うことで、寛解*を目指せるようになってきました。
今回は、関節リウマチの特徴や治療において心がけていることなどについて、近畿大学病院 血液・膠原病内科 准教授の野﨑 祐史先生にお話を伺いました。
*寛解:炎症や痛みが治まり、ほとんど症状が出ていない状態。
関節リウマチは、免疫のバランスの乱れによって関節に炎症が起こり、痛みや腫れ、こわばりなどの症状が現れる病気です。
多くの患者さんが最初に気づくのは、手の使いづらさです。たとえば「ペットボトルのふたが開けにくい」「お箸が持ちにくい」といった、日常のささいな動作の変化から始まることがあります。
また、朝起きたときに手足が動かしにくい「朝のこわばり」もよくみられる症状の1つです。症状が進むと関節の変形が起こり、日常生活に支障が出てしまうこともあります。
関節リウマチは関節だけの病気と思われがちですが、実際には全身に影響を及ぼすことがあります。たとえば、間質性肺疾患による咳や息切れ、薬剤の影響などによる腎機能への影響などがみられることもあります。そのため、関節だけでなく全身の状態を診ながら治療を行うことが大切です。
関節リウマチの治療は、基礎療法、薬物療法、手術、リハビリテーションを組み合わせて行います。
生活習慣を整えることも治療の一部です。喫煙、歯周病、睡眠不足、ストレスなどは病気の悪化に関わることがあるため、できる範囲で見直していきます。特に喫煙は病状に影響しやすいため、禁煙をおすすめしています。
関節リウマチ治療の中心となるのが薬物療法です。診断後は、病気の進行を抑えるために、できるだけ早い段階で治療を開始します。
まず使用されることが多いのが「メトトレキサート」という薬です。
効果や副作用を確認しながら調整することで、多くの患者さんで症状の改善が期待されます。一方で、副作用や持病の影響により使用が難しい場合もあります。その場合には他の治療薬を検討します。
生物学的製剤は、炎症を引き起こす特定の物質(サイトカイン)を抑えるための薬で、注射や点滴で投与します。生物学的製剤はもともと体の中にあるタンパク質とほぼ同じ構造のため臓器への影響は少ないですが、肺炎などの感染症には注意が必要です。
JAK阻害薬は、炎症の原因となる複数のサイトカインに対して、受容体からの刺激を細胞内で遮断して炎症を抑えるための内服薬です。複数のサイトカインを広く抑制するため、帯状疱疹を含む感染症や肝機能障害などのリスクに注意する必要があります。
診療ガイドラインでは、経済的な観点と長期安全性からJAK阻害薬よりも生物学的製剤を優先的に検討するとされており、当院の方針も基本的にこれに準じています。ただ、注射よりも内服を好まれる方などでは、ほかに合併している病気なども考慮したうえで、JAK阻害薬を使用することもあります。
薬物療法が進歩したこともあり、近年では手術が必要となる患者さんは減少しています。しかし、関節の破壊や変形が進んで日常生活に支障をきたしている場合などは手術を検討します。当院では整形外科やリウマチセンターと連携して、手術の適応となるか判断しています。
関節の機能を維持するためのリハビリテーション(以下、リハビリ)も重要です。患者さんには冊子をお渡しし、自宅でできる「リウマチ体操」をおすすめしています。少なくとも1日1回は、全ての関節を無理せず動かせる範囲で動かしていただくことが大切だと考えています。
当院は、2025年11月に大阪府堺市へ新築移転しました。梅田・難波からも近くなり、駅前という立地から交通の利便性がよくなったことで、他院からご紹介いただき初診でいらっしゃる患者さんが増えています。
治療の進め方にはさまざまな考え方がありますが、私はまず専門家として、医学的に適切と考えられる選択肢を丁寧にご説明し、そのうえで患者さんと一緒に治療方針を決めていくことを大切にしています。
また、治療によって関節リウマチの活動性が落ち着き、寛解に至った場合には、患者さんと相談しながら薬の減量や中止も検討していきます。その際に役立てているのが、関節の超音波(エコー)検査です。手指や手首、肘、肩、膝などの関節を詳しく観察し、炎症が残っていないかを確認します。
炎症がまだみられる場合には慎重に経過をみますが、炎症が認められない状態であれば、「少しずつ薬を減らしてみましょう」あるいは「休薬も検討できます」といった提案が可能になります。このように、客観的な検査結果を参考にしながら治療を調整していく取り組みについては、海外の学術誌にも報告しています。
診察では、できるだけ患者さんお一人おひとりの生活スタイルや日々の過ごし方を丁寧にうかがうようにしています。関節リウマチと向き合いながら、どのような生活を大切にしたいかは患者さんによって異なるからです。
たとえば、事務のお仕事で日常的にパソコンを使う方であれば、キーボード操作に大切な手首の痛みや動かしにくさがないかを特に意識して確認します。また、毎年ある時期だけ症状が強くなる患者さんがいらっしゃいました。詳しくお話をうかがうと、水田に苗を植える田植えの作業が関節への負担となり、炎症につながっていたことが分かりました。
こうした背景を知らずに症状だけをみて薬を増やしてしまうと、必要以上の治療となり、副作用につながる可能性もあります。患者さんそれぞれの生活や暮らしに目を向けることが、無理のない、きめ細かな治療につながると考えています。
関節リウマチは長く付き合っていく病気ですが、近年は治療法が大きく進歩し、症状をしっかりコントロールできる可能性が高まっています。今も痛みや腫れに悩んでいる方もいらっしゃるかもしれませんが、あきらめずに主治医とよく相談しながら、ご自身に合った治療を一緒に見つけていくことが大切です。
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