きゅうせいようつうしょう

急性腰痛症

俗称/その他
ぎっくり腰
最終更新日
2021年01月28日
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2021/01/28
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

急性腰痛症は、腰痛が発症してから4週間以内のものを指します。一般に“ぎっくり腰”と呼ばれている状態はこれに含まれ、重いものを持ち上げたときや腰をひねったりしたときなどに突然生じます。痛みの原因は、主に腰の関節やその周りの筋肉や靱帯にあると考えられていますが、原因がはっきりとしないこともあります。安静にしていると自然に治ることも多く、必要に応じて鎮痛薬などの薬物療法や、痛みを和らげるための神経ブロック療法などが行われます。

急性腰痛症の中には、骨折や感染症、腫瘍(しゅよう)などほかの病気が原因となっていることもあり、この場合はそれぞれに対応した治療が必要となります。

厚生労働省による自覚症状の調査(平成28年度)によれば、腰痛は男性で1位、女性で2位と高く、日本人にとってもっとも一般的な症状であるといえます。急性腰痛症の予防のためには日常生活から姿勢に気を付け、腰回りの筋肉を鍛えることが大切です。

原因

急性腰痛症の痛みの原因はさまざまで、原因がはっきりしない場合もあります。老化、姿勢の悪さ、無理な力がかかることなどによる腰の関節のずれ、椎間板(ついかんばん)という腰の軟骨の損傷、腰を支える筋肉や腱、靱帯の損傷などが原因として多いと考えられています。

そのほか、特別な病気として椎間板ヘルニア、脊椎分離症、すべり症、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)などが原因となっていることもあります。また、ときに圧迫骨折がんによる背骨の病的骨折、感染症による背骨や椎間板の化などが原因となって腰痛を引き起こす場合があるため、自己判断せず専門家の診断を受けることが重要です。

症状

腰に強い痛みが生じ、腰を前後に曲げることが難しくなります。症状が重い場合は痛みで動けなくなることがあります。臀部(でんぶ)や下肢に放散するような痛みやしびれを伴う場合もあります。

安静にしていると痛みは和らぎますが、過度な運動制限は筋力低下を招き腰痛を悪化させる可能性があるため注意が必要です。

症状は、重いものを持とうとしたときだけでなく、起き上がろうとしたときや咳・くしゃみをしたときなどに生じる可能性もあります。痛みは1日以上続き、1か月以内に治まる場合を急性腰痛症と呼びます。

いわゆる“ぎっくり腰”とは異なり、感染症や腫瘍などが原因となっている場合は発熱や腰以外の痛みなど、ほかの症状が出る場合があります。

検査・診断

腰痛にはさまざまな原因があり、また原因によって治療法が異なるため、必要な検査を行い正確に診断することが重要です。診断で重要となるのは問診・身体診察と画像診断です。

診断では、まず問診と身体検査によって、痛みの範囲、悪性度、慢性化の可能性、進行性かどうかなどを注意深く評価し、腫瘍や感染症、骨折などの重要な病気が隠れている可能性を慎重に検討します。

必要に応じて、腰椎(ようつい)(背骨のうち腰の部分にある骨)の状態を調べるために、画像診断も行われます。もっとも多く行われるのはX線検査(レントゲン検査)です。より詳しい情報を得るために、MRI検査やCT検査が行われることもあります。

また、ほかの原因が隠れていないか探すために、血液検査、尿検査、骨密度検査、筋電図検査、骨シンチグラフィー検査、PET検査などが行われる場合もあります。

治療

急性腰痛症は安静にしていると数日から数週間で自然に治ることもあります。

治療としては、薬物療法、神経ブロック療法、装具療法などがあります。腰痛の背景に骨折や腫瘍、感染症など特別な病気が関わっている場合には、それぞれに対応した治療を行うことが重要となります。

薬物療法

腰の痛みや炎症に対しては通常、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)が処方されます。痛みによる筋肉の緊張や精神的な緊張を和らげる目的で筋弛緩薬(きんしかんやく)や抗不安薬を使用することもあります。

神経症状がある場合は、神経障害性疼痛薬(とうつうやく)を用いることが多いです。

また、心因性の腰痛が疑われる場合は、抗うつ剤などの薬剤が用いられることもあります。

神経ブロック療法

脊髄(せきずい)(背骨の中を通る神経の束)を囲む硬膜という膜と骨の間の空間に局所麻酔薬を注射し、一部の神経を遮断(ブロック)することで痛みを軽減する方法です。

痛みを感じる神経のブロックと、運動神経や交感神経の遮断で筋肉が緩み血行がよくなる効果によって腰痛が緩和されることが期待できます。

装具療法

コルセットなどを用いて痛みの出ている部分を安静に保つことで、痛みの軽減や早期の回復を目指す方法です。

急性腰痛では、安静を続けるよりも無理のない範囲で日常生活を維持したほうが早く回復するという報告もあり、どの程度運動を制限すべきかについては医師との相談が必要となります。

予防

急性腰痛症を予防するには、普段から腰に無理な負担がかからないよう姿勢に注意するとともに、腰回りの筋肉を鍛えることが大切です。また、日頃から腰の筋肉のバランスを整えることは腰痛の再発予防にもつながります。

精神的な落ち込みは腰痛を悪化させ、急性腰痛から慢性腰痛へと移行するリスクを高めることが分かっています。慢性化を予防するために、痛みが不安で日常の活動が思うように行えない場合や、そのほかに心配なことなどがある場合は早めに医師に相談するとよいでしょう。

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急性腰痛症を得意な領域としている医師

  • おおさかグローバル整形外科病院 脊椎外科部長

    • 腰椎椎間板ヘルニア
      • 内視鏡下ヘルニア摘出術
    • 腰部脊柱管狭窄症
      • 低侵襲後方腰椎椎体間固定術(TLIF)
      • 側方経路腰椎椎体間固定術(LIF,OLIF)
    • 腰椎すべり症
      • 低侵襲後方腰椎椎体間固定術(TLIF)
      • 側方経路腰椎椎体間固定術(LIF,OLIF)
    • 頚椎椎間板ヘルニア
      • 頚椎前方除圧固定術
      • 頚椎椎弓形成術
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