概要
ウェーバー・クリスチャン症候群とは、発熱し皮膚の奥にある脂肪に炎症が起き、多くのしこり(結節)ができるまれな病気です。両足に直径1cm程度の淡い湿疹ができ、それが次第に硬くなり痛みを伴うようになります。数日から数週間でしこりはなくなりますが、多くの場合は再発します。よくなったり悪くなったりを繰り返すことがこの病気の特徴です。内臓の周りにも脂肪は存在しているため、こちらにも炎症が起き、肝臓や腸に障害を引き起こすことがあります。炎症の原因は不明です。細菌やウイルスなどの感染症が炎症の原因ではありません。ベーチェット病といった膠原病、悪性リンパ腫や膵がんなどの悪性腫瘍(がん)、膵炎や外傷などでこの病気を合併することがあります。この病気は診断が非常に難しいため、心配な場合は専門家である皮膚科の受診をお勧めします。
原因
脂肪に炎症が起きることがこの病気の原因です。どうして炎症が起きるのか根本の原因は不明です。30-60歳の女性に多く発症します。全体の発症頻度は非常にまれです。その他の原因となる基礎疾患には以下のものがあります。
症状
発熱が起きます。両ひざ下を中心に、両手やお腹、背中の皮膚に左右対称に直径1cm程度の淡い湿疹ができます。次第に硬くなり、赤くなり痛みを伴います(結節性紅斑と呼ばれます)。それが多数できます。数週間から数か月の間に、無治療で結節性紅斑が消えますが、再び再発することがほとんどです。自覚症状としては、発熱、皮膚の痛み、腫れ、痒みなどがあります。また、肝臓や膵臓の周囲に存在する脂肪に炎症が起きることで肝炎や膵炎が起きます。心臓に炎症が起きると重篤になることがあります。
検査・診断
皮膚検査(病理検査)
手足にできた固いしこり(結節)を調べます。赤みがあるか、痛みを伴うかなど見た目に加えて合併している症状を確認します。最終的には局所麻酔をして、皮膚の一部を針で採取します(生検と呼ばれます)。病理医と呼ばれる別の医師が顕微鏡を使って、皮膚や脂肪細胞、しこりの内部を詳細に観察します。“結節性紅斑”と呼ばれる特徴的なしこりが認められた場合、この病気の診断に大きく役立ちます。
血液検査
体のなかでどの程度炎症が起きているか調べます。膵臓や肝臓、心臓の機能が保たれているかについて確認します。悪性腫瘍が疑われた場合には、追加で画像検査や骨髄検査などを行うことがあります。
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治療
外来で通院を行いながら治療できます。治療の目的は炎症を抑えることです。ステロイドや免疫抑制薬といった炎症を抑える内服薬で治療を行います。数か月~1年間、症状が完全によくなるまで治療を継続する必要があります。長期間服用するため、様さまざまな副作用が出現することがあります。そのため、定期的に外来通院を行い経過観察を行う必要があります。たとえば、感染症にかかりやすく重症化しやすいため、発熱などの症状が出た場合にはすぐに医療機関を受診してください。また、糖尿病や高脂血症、骨粗鬆症といった病気も合併しやすいため、それらに対する他の内服薬を併用することがあります。
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