概要
カポジ水痘様発疹症とは、単純ヘルペスウイルスをはじめとするウイルスによる皮膚感染症です。アトピー性皮膚炎にみられるような湿疹や、やけどによる傷あとなどの上に感染することで発症します。
通常、ウイルス性の発疹の多くは感染した皮膚の一部分に局所的に生じますが、カポジ水痘様発疹症の場合はもともと湿疹などが生じている上に感染するため、より広範囲に発疹が広がります。
原因
カポジ水痘様発疹症の原因の多くは単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)への感染ですが、まれに単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)やコクサッキーウイルスなどへの感染が原因となることもあります。
この病気は、もともと発症している以下のような皮膚病変の上に発症します。
ほとんどはアトピー性皮膚炎に伴って発症するとされており、皮膚が乾燥してバリア機能が低下しているときに感染しやすくなると考えられています。
症状
カポジ水痘様発疹症の特徴的な症状は、顔面や体幹に急速に広がる発疹です。発疹は通常のヘルペスと比較すると、より広範囲に広がりやすい傾向があります。また、中央にへこみのある小さな水ぶくれ(小水疱)のような形をしており、ただれて痛みが生じることも多く、患部に細菌感染が合併すると、伝染性膿痂疹(とびひ)との見分けがつきにくくなることもあります。
発疹のほか、リンパ節の腫れや38℃以上の高熱などもみられます。また、重症化すると脳炎*を引き起こすこともあります。
*脳炎:ウイルスや細菌、真菌などの病原体が脳に感染したり、免疫が脳内で自分の細胞を攻撃したりすることによって、脳に炎症が引き起こされる病気。頭痛や発熱のほか、意識障害やけいれん、麻痺が起こることもある。
検査・診断
皮膚病変の上にカポジ水痘様発疹症の典型的な発疹があれば診断できることがほとんどです。
ただし、とびひなどの病気と見分けがつけにくいときには鑑別が必要です。小水疱の組織を採取して顕微鏡でウイルス性の大きな細胞(ウイルス性巨細胞)が確認された場合や、イムノクロマト法*で単純ヘルペスウイルスの抗原(たんぱく質)が検出できた場合はカポジ水痘様発疹症である可能性があるといえます。
*イムノクロマト法:抗原抗体反応を利用した検査。小水疱などの組織の内容物やぬぐった検体を抽出液に浸し、検査キットに滴下することで簡易的に検査することができる。
治療
カポジ水痘様発疹症は軽症・中等症の段階で発見できれば、抗ウイルス薬を服用し安静に過ごすことで軽快する場合がほとんどです。一方で、重症の場合は入院し、点滴で抗ウイルス薬を投与する必要があるほか、細菌感染が生じている場合には抗菌薬の全身投与も検討されます。
一般的には治療を行えば症状が速やかに改善しますが、今のところ再発を抑える治療方法は確立していません。
予防
カポジ水痘様発疹症の予防には、アトピー性皮膚炎などによる皮膚症状をコントロールし、皮膚の乾燥などを防ぐことが大切です。
また、カポジ水痘様発疹症は単純ヘルペスウイルスと同様に、一度感染すると症状が治まった後もウイルスが体の中に潜伏し、発熱やストレスなどに伴って再発することがあります。そのため、かぜをひかないよう体調管理をしっかり行うことや、十分な休息を取ってストレスや疲労をためすぎないことも再発の予防につながります。
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