概要
シックハウス症候群、またはシックビルディング症候群とは、広義には“居住者の健康を維持するという観点から問題のある住宅において見られる健康障害”と定義され、狭義には“建物内環境における化学物質の関与が想定される、皮膚・粘膜症状や、頭痛・倦怠感等の多彩な非特異的症状群で、明らかな中毒、アレルギーなど、病因や病態が医学的に解明されているものを除く”病気と定義されています。なお、病因や病態が医学的に解明されているものはシックハウス・ビルディング関連病と呼ばれ、シックハウス症候群・シックビルディング症候群とは一線を画します。
建材、家具、日用品などから発せられる化学物質やカビ、ダニ、ハウスダストなどが室内に充満し、それを吸い込んだり肌に触れたりすることでさまざまな症状を引き起こす病気のことです。風通しのよい家屋で発生することは少ないですが、近年では住宅の高気密化・高断熱化が進んだ影響によって室内に化学物質などが充満しやすい状態となり、シックハウス症候群・シックビルディング症候群の発症が増えているとされています。学校など施設で発生した場合は、シックスクール症候群と呼ばれることもあります。
その症状は多岐にわたり、代表的なものでは、目の刺激、鼻水、涙、咳、頭痛、めまい、倦怠感、皮膚の乾燥などが挙げられます。症状を改善するには、原因となる室内から退避することがもっとも効果的です。また、室内の換気をこまめに行うことなどで環境を整え、症状を改善するための薬物療法を行うこともあります。
2003年からは建築基準法が改正され、建材やシロアリ駆除に用いる薬剤、換気設備の規制などが定められ、シックハウス症候群・シックビルディング症候群の予防策が講じられています。
原因
シックハウス症候群・シックビルディング症候群は、建材や家具などから発せられる化学物質、ダニ、カビ、ハウスダスト、細菌などで汚染された空気を吸い込んだり肌に触れたりすることでさまざまな体調不良を引き起こす病気です。
高気密化・高断熱化によって風通しが悪い家屋で発生しやすいのが特徴で、建材に使用されているホルムアルデヒドやシロアリ駆除剤のクロルピリホスなどがシックハウス症候群・シックビルディング症候群を特に引き起こしやすいとされています。そのため、現在では建築基準法の改正によってこれらの使用が規制されています。
なお、シックハウス症候群・シックビルディング症候群を発症するか否かは、室内に充満した化学物質やダニなどの物質の種類や量によって異なりますが、年齢や普段からの健康状態、何らかのアレルギー疾患の有無なども関与すると考えられています。
症状
シックハウス症候群・シックビルディング症候群は多岐にわたる症状を引き起こすのが特徴です。
主たる症状は、目・鼻・咽頭の刺激症状で、下気道や内臓を含むそのほかの症状が出ることは多くありません。
目(特に球結膜、流涙)、鼻粘膜(鼻汁・鼻閉)および喉の刺激症状、さらに粘膜の乾燥、皮疹、易疲労感、頭痛、呼吸困難・喘鳴、めまい、吐き気、嘔吐が主な症状です。これらの症状は風通しが悪い室内に入ると現れ、屋外に出ると改善するのが特徴です。また、特に新築や改築したばかりの家屋で発症しやすいとされています。
検査・診断
シックハウス症候群の診断は、症状や発症したきっかけ、発症しやすい場面などを詳しく問診することによって行われます。ただし、自律神経失調症、更年期障害、心身症などの病気と鑑別する必要があります。
また、シックハウス症候群と混同されがちな化学物質過敏症という病気がありますが、2つの病気は異なった概念です。
化学物質過敏症は、“多種類の臓器系に対して再発性の症状をきたす後天性疾患であり、その症状は、一般住民で有害な影響が生じる濃度よりもはるかに低い濃度において、多くの科学的に無関係な物質へのばく露によって生じる。また、一般に広く知られている生理作用は症状に関連して見られない”病気とされています。
治療
シックハウス症候群・シックビルディング症候群には確立した治療法がなく、対症療法を行うのが一般的です。
一方で、シックハウス症候群・シックビルディング症候群は原因となる汚染物質が充満した室内の環境を変えることで症状の緩和が期待できます。そのため、窓を開けるなどしてこまめな換気を行うことが推奨されています。
換気などの対策のみでは症状が改善しない場合は、リフォームを行ってシックハウス症候群・シックビルディング症候群の原因となる化学物質の放出が少ない建材を用いたり、家具を買い替えたりするなどの対策が必要になることもあります。
予防
シックハウス症候群・シックビルディング症候群を予防するには、室内に汚染した空気を充満させないことが必要です。そのためには上述したように、換気の徹底や建材・家具の見直しを行う必要があります。
一方で、シックハウス症候群・シックビルディング症候群はカビやダニなどによって引き起こされることもあるため、こまめな掃除や湿度・温度を適切に管理することなどを心がけましょう。
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