前回の記事「重症化するケースとは? 大人のマイコプラズマ肺炎の合併症」では、マイコプラズマ肺炎を悪化させないために医療者が心がけるべきことについて、国際医療福祉大学塩谷病院内科部長(呼吸器)の井上寧先生にお話しいただきました。では、私たち一般生活者はマイコプラズマ肺炎から自身を守るために、どのようなことを心がければよいのでしょうか? 本記事では、マイコプラズマ肺炎をはじめとする感染症の予防法と、成人ならではの感染経路特定の難しさについて教えていただきました。
ある疾患に対する標準的な治療方針などを定めた文書を「ガイドライン」といい、ある程度の専門家のコンセンサスを得られたものを「指針」としていると思います。医療者はこれらを参考にして患者さんの検査や診断、治療を行っていることが多いと思います。マイコプラズマ学会による『肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針』は小児版と成人版にわけられており、このことからも同じマイコプラズマ肺炎であっても大人と子どもでは異なる点があるのだとわかるでしょう。
子どものマイコプラズマ肺炎の感染経路は「濃厚な飛沫感染」といわれ、短時間の接触では感染せず、長時間共に過ごす家庭や学校などの閉鎖的な集団内でうつるものとして知られています。一方、最新の日本呼吸器学会のガイドラインからは「家族内感染」という文字が除外されています。これは、EBMを押し進める立場から、陽性的中率が低いため削除されたと聞いております。またその理由として、子どもは行動範囲が限られているがゆえに感染経路をある程度まで絞れるものの、大人は活動範囲が広く、生活の中のどこで感染したか覚えている人が少ないように思われます。電車内、会社、商業施設など、どの場所でマイコプラズマ肺炎の患者さんと何時間程度、どのくらいの距離で共に過ごしていたかをわかる人は、現実的に考えてほぼいないでしょう。裏を返せば、大人のマイコプラズマ肺炎は、感染経路が特定できないからこそ流行してしまうのであって、特定することができれば効果的な予防も可能だと考えられます。
風邪をはじめとするあらゆる感染症を防ぐために、うがいや手洗い、マスクの着用の習慣化などは大切です。以前に比べるとマイコプラズマ肺炎の患者さんで感染経路がわからない方の方が多いと感じます。ですからより一層このような対策を心掛けることが重要になります。たとえば、厚生労働省が提示している「咳エチケット」を実践するのもよいでしょう。
●咳、くしゃみの際はティッシュなどで口と鼻をおさえる。
●口と鼻を覆ったティッシュはすぐに蓋つきのゴミ箱に捨てる。
●咳をしている人にマスクの着用を促す。
など。
(参照:厚生労働省Webサイト:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/influenza/ )
また、帰宅時には手洗いとうがいをすることも重要です。ここで気を付けたいのが、「うがいの方法」です。非常に多くの方が水を口に含んだあと、上を向いてガラガラとのどを洗うようなうがいをされていますが、これは外出時に口に入ったばい菌をのどの奥深くへと押し込んでいるような行為であり、誤った方法です。
まずは口の中にあるものを外に出すことが大切ですから、水を口に含んでゆすぎ、吐き出すだけの「グチュグチュペー」といったうがいをすることが正しいのです。このように、うがいの方法ひとつをとってみても、意外なほど多くの方が誤った認識を持たれていますので、一般生活者の皆さんには、ぜひ基本的な感染症対策の方法を見直すところからはじめていただきたいと感じています。
国際医療福祉大学三田病院 呼吸器センター准教授/内科副部長、国際医療福祉大学 医学部准教授
国際医療福祉大学三田病院 呼吸器センター准教授/内科副部長、国際医療福祉大学 医学部准教授
日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医日本呼吸器学会 呼吸器専門医・呼吸器指導医 ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター
東京慈恵会医科大学を卒業後、虎の門病院内科レジデント、東京慈恵会医科大学呼吸器内科助手・病棟長、富士市立中央病院内科(呼吸器)医長、国際医療福祉大学三田病院呼吸器内科などを経て、現在は国際医療福祉大学三田病院呼吸器センターにて准教授、内科副部長を務める。びまん性肺疾患や呼吸器感染症などの呼吸器疾患全般の診療を行っている。正しい検査と丁寧な診療に重きを置き、常に適切な診断と治療を心がけている。
井上 寧 先生の所属医療機関
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