概要
メネトリエ病は、慢性胃炎の一種である肥厚性胃炎に含まれる病気で*、巨大皺壁性胃炎とも呼ばれます**。発症すると胃の粘膜が異常に厚くなり、粘膜から血液中のタンパク質が漏れ出して“低タンパク血症”や“蛋白漏出性胃腸症”を引き起こすため、体重減少や全身のむくみ、疲れやすさなどの症状が現れるようになります。なお、メネトリエ病は40~50歳代の男性に多くみられる傾向がありますが、まれに子どもに発症することもあります。原因は明らかではないものの、ピロリ菌やサイトメガロウイルスなどの感染が発症に関与している可能性が指摘されています。
治療には、ピロリ菌感染が疑われる場合はピロリ菌の除菌を行うほか、胃酸の分泌を抑える薬剤を用いた薬物療法や食事療法などがありますが、確立した治療法はなく、胃の部分切除が必要になるケースもあります。
* Schindler分類による。
**今日では慢性胃炎よりも蛋白漏出性胃腸症の1つとして捉えられている。
原因
メネトリエ病は、胃の粘膜の細胞が過剰に増殖することで胃表面のひだが厚く、巨大になりますが、どのような原因で細胞が増殖するのか明確には解明されていません。
一方で、成人発症例ではピロリ菌感染、子どもの発症例ではサイトメガロウイルス感染の関与が考えられるという報告もあります。
症状
メネトリエ病は、胃の粘膜の細胞が過剰に増えることで表面のひだが大きく厚くなるほか、発症初期の段階では上腹部痛や下痢、食欲不振など一般的な消化器症状が現れます。進行すると、胃の粘膜から血液中のタンパク質の成分が漏れ出しやすくなるため“低タンパク血症”を引き起こし、体重減少やむくみ、腹水、うっ血性心不全などの症状が現れることがあります。
一方で、自覚症状がないことも多く、健康診断などで偶然発見されるケースもあるといわれています。
検査・診断
メネトリエ病が疑われるときは以下のような検査が必要となります。
内視鏡検査
胃の内部を詳しく観察するためには内視鏡検査が必要です。メネトリエ病を発症している場合は、胃の粘膜表面のひだが大きく厚くなっているという特徴的な変化が認められます。
また、メネトリエ病と似たような所見や症状を引き起こす一部の胃がんや悪性リンパ腫などとの鑑別にも内視鏡検査が有用です。
画像検査
胃粘膜表面の巨大なひだの有無を確認するため、造影剤を飲んで胃のX線撮影を行う“胃造影検査”を行うことがあります。また、悪性腫瘍との鑑別のために腹部超音波検査やCT検査などを行うこともあります。
血液検査
メネトリエ病は低タンパク血症や貧血などを引き起こすため、血清総タンパク、血清アルブミンや血球などを調べる血液検査が必要となります。
α1-アンチトリプシンクリアランス試験、蛋白漏出シンチ検査
胃の粘膜から血液中のタンパク質が漏れ出ているか確認するための特殊な検査です。
α1-アンチトリプシンクリアランス試験では、血液検査と糞便検査を行い、便のα1-アンチトリプシンの量を測定します。蛋白漏出シンチ検査は、放射性医薬品を静脈注射したのち、数時間ごとにガンマカメラで撮影してタンパク成分漏出の有無や度合いを確認します。
ピロリ菌感染検査
メネトリエ病はピロリ菌感染との関連も指摘されているため、成人の場合は診断の際にピロリ菌感染の有無を確認することが望ましいとされています。
治療
メネトリエ病の治療としては薬物治療や食事療法、手術治療を行います。
上腹部痛などに対して胃酸分泌などを抑える酸分泌抑制薬、タンパク質の漏出を抑えるために抗線溶薬(抗プラスミン薬)を用いることがあります。低タンパク血症には、高タンパク・低脂肪食を基本とした食事や、消化態栄養薬*などによる食事療法を行います。胃粘膜からのタンパク質成分の漏出が多い場合は、胃の部分切除が必要となることもあります。
また、メネトリエ病はピロリ菌感染が発症に関与していると考えられているため、感染が確認できた場合はピロリ菌の除菌治療を行います。
*消化態栄養薬:経腸栄養薬の1つ。消化を必要としないアミノ酸やペプチドが配合されており、消化吸収機能が低下している場合などに使用される。
予防
メネトリエ病は明確な発症メカニズムが解明されていないため、現在のところ確実な予防方法はありません。しかし、この病気はピロリ菌感染が発症に関与していると考えられているため、ピロリ菌の検査を受け、感染している場合は除菌治療を受けることが大切です。
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