概要
先天性難聴とは、生まれつきの聴こえに問題が生じている状態のことを指します。原因の60~70%は遺伝性で、残りの30~40%は非遺伝性といわれており、先天性難聴を発症するお子さんは少なくありません。
先天性難聴はできるだけ早期に発見することが重要です。そのため、聴力スクリーニング検査を導入することで、早期発見並びに早期の治療介入につなげようという試みがなされています。
原因
原因はさまざまですが、60~70%は遺伝性で、残りの30~40%は非遺伝性であると考えられています。
音が正常に認識されるためには、空気振動として外耳に入った音が、中耳、内耳を通して電気信号に変換され、脳に伝導されることが必要です。この過程が正常に機能するためには、さまざまな遺伝子が関与していることが明らかにされています。そのため、これら機能が正常に働く際に重要な遺伝子が異常をきたすと、その結果として先天性難聴が起こります。
また、遺伝子異常に関連して、ダウン症候群やアルポート症候群など、先天性難聴を一症状として発症する症候群も知られています。
非遺伝性では、ウイルス感染症(風疹やサイトメガロウイルスなどを含むTORCH症候群)、薬剤、外傷などの環境要因が原因となりうることが知られています。
症状
言葉を正確に発生するためには、周囲の人の言葉をしっかりと聞き取れることが必要不可欠です。そのため、音を聞くことができない先天性難聴では、言葉の発達に支障が生じます。
生まれつき難聴があることで、音が聴こえないということが症状として理解しにくい面もあります。しかし、早い段階で難聴を診断し、早期に補聴器を装用することや、高度~重度の難聴の場合は人工内耳を埋め込む手術を受けることなどが、長期的な言語発達には必要不可欠であるといえます。
また、先天性難聴がそのほかの病気の一症状として現れていることもあります。たとえば、ダウン症候群では心疾患や消化器系の疾患、血液疾患(白血病など)、精神発達の遅れなどがみられることもあります。
検査・診断
先天性難聴は、いかに早期に難聴を発見するかが重要です。そのため、産まれて間もなくのあいだ、産院にいる段階で聴性脳幹反応検査(ABR)や耳音響放射(OAE)を用いた聴覚のスクリーニング検査がおこなわれます。
ただし、このスクリーニング検査はあくまでも疑いがあるか確認する目的であるため、再検査が必要な状況ではさらに精密検査が行われます。
具体的には、精密検査が実施できる施設において、以下のような検査を通して最終的な診断をおこないます。
- 聴性脳幹反応検査(ABR)や調整定常反応検査(ASSR)は、他覚的に聴力を測定できる検査法であるため、乳幼児に対する第一選択の検査法です。
- 行動反応聴力検査(BOR)や条件詮索反応聴力検査(COR)などは、子どもの発達段階に合わせて選択される、子どもの音に対する反応をみる検査法です。
- CTやMRIなどの画像検査により、内耳の奇形や聴神経の欠失などを診断します。
など
また、先天性難聴の原因として遺伝子異常や感染症などが関連していることもあります。原因となっている病気を特定することや、それに関連して予測される臓器障害を確認するために、遺伝子診断、血液検査、尿検査、超音波検査などが適宜選択されます。
治療
先天性難聴では、できる限り早期に難聴を発見し、正常な言語発達を促すための支援を行うことが重要です。重症度や原因に応じて、補聴器の装着や人工内耳の埋め込み術を検討することもあります。
先天性難聴ではいくつかの社会的支援を受けることも可能です。具体的には、身体障害者の認定や医療費助成の申請などを行うことも大切です。
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