概要
妊娠中の貧血は、妊娠に伴って発症する貧血の総称です。全妊婦の20%程度は妊娠中に貧血を発症するとされており、妊婦健診では妊娠初期・中期・後期において貧血の有無を調べる血液検査が行われます。
主な原因は、血液を構成する成分や血液のもとになる成分の不足です。妊娠中は体内を循環する血液量が増えますが、血液をつくる栄養素である鉄分や葉酸が不足すると血液の濃さが足りず貧血の発症につながります。
妊娠中の貧血を発症すると、体内の組織に十分な酸素が行き渡らなくなるため、疲れやすくなったり、ふらつきが現れたりします。貧血が続いた場合、母体だけでなく胎児の発達にも影響を及ぼす可能性があります。なお、貧血の重症度によっては切迫早産や胎児発育不全、胎児死亡につながる可能性もあるため、適切な治療が必要です。
主な治療は、食事療法や、鉄剤・葉酸などを用いた薬物療法です。これらの治療を行っても改善がみられない場合や重度の貧血の場合は、輸血が検討されることもあります。
原因
貧血は、酸素を全身に運ぶヘモグロビンの濃度が低くなる病気ですが、発症メカニズムによってさまざまなタイプがあります。妊娠中の貧血で多いとされているのは、“鉄欠乏性貧血”と“葉酸欠乏性貧血”であり、それぞれ以下のような原因によって発症します。
鉄欠乏性貧血
妊娠中は胎児の成長のために妊娠前より多くの鉄分が必要になるため、鉄分が不足しがちになります。また、妊娠中は血液量が増えるため、鉄分が足りていないとヘモグロビン濃度が低くなり、鉄欠乏性貧血の発症につながります。
葉酸欠乏性貧血
葉酸はDNAをつくるのに必要な栄養素であり、不足するとヘモグロビンが存在する赤血球という血液中の細胞がうまく作られなくなるため貧血につながります。
妊娠中は胎児の成長のために多くの葉酸が必要となり、葉酸欠乏性貧血を発症しやすいとされています。また、葉酸欠乏性貧血は鉄欠乏性貧血を合併していることが多いのも特徴です。
症状
妊娠中の貧血は自覚症状がないことも多いですが、進行するとふらつき、動悸、息切れ、倦怠感、疲労感などの症状が現れるようになります。
また、妊娠中に貧血が続くと、胎児へ十分な量の酸素が届かず成長や発達にも影響を及ぼしかねません。重度の貧血の場合、胎児発育不全や胎児死亡と関連するとされています。さらに切迫早産のリスクが高まったり、出産後に感染症にかかりやすくなったりするリスクもあります。
検査・診断
妊娠中の貧血が疑われる場合はヘモグロビン値や、血液中に赤血球が占める割合を示すヘマトクリット値などを調べるために血液検査が必要になります。また、貧血の原因を調べるために血清鉄や葉酸値などを調べる必要もあります。
妊婦健診では、妊娠初期~23週・24~35週・36週~出産までの計3回にわたって血液検査を行い、貧血がないかを調べます。貧血が疑われる症状があるときや貧血の治療中は、妊婦健診で規定された時期でなくても血液検査が必要です。
なお、鉄欠乏性貧血や葉酸欠乏性貧血以外の病気が原因で貧血が起こっている可能性がある場合は、骨髄検査などを行うこともあります。
治療
妊娠中の貧血の治療方法は貧血の程度や原因によって異なりますが、基本的には食事療法や薬物療法が主体となります。鉄分や葉酸を多く含む食材を積極的に取るよう指導がなされ、必要に応じて薬の投与を行います。
鉄欠乏性貧血の場合は不足した鉄分を補うために鉄剤が使用され、まずは飲み薬での投与が行われますが、ほかの病気の影響で内服が難しい場合や吐き気などの副作用が出る場合は注射で投与します。葉酸欠乏性貧血の場合は、葉酸の飲み薬の投与が行われます。
なお、これらの治療を行っても貧血が改善しない場合や、重症度の高い貧血の場合は輸血が必要になることもあります。
予防
妊娠中は血液量の増加や胎児の成長に伴い、鉄分や葉酸が妊娠前より多く必要になるため、貧血になりやすいとされています。妊娠中の貧血を予防するには、鉄分や葉酸が多く含まれた食品を積極的に取ることが大切です。
葉酸は妊娠中の必要量を食事のみから取るのは難しいとされており、サプリメントの摂取も推奨されています。ただし、葉酸の過剰摂取は健康に影響を及ぼす可能性があるため、サプリメントからの摂取を考える場合は事前に医師に相談をしましょう。
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