風邪を引いたときなどによく「扁桃腺が腫れている」と言われることもあるように、急性扁桃炎は誰でもかかりうる病気です。しかし、その原因となる病原体や重症度はさまざまです。
その原因は何なのか?どのようにしてうつるのか?など、医師が解説します。
扁桃*とは、咽頭内に存在し、リンパ組織が集まった部分です。咽頭とは、鼻の奥から食道までの空気や食べ物が通過するところです。
咽頭のさらに奥には喉頭があり、気管の入り口になります。食べ物が気管に入りこまないように蓋(喉頭蓋)をしたり、発声に必要となる声帯があったりします。
咽頭は、空気も食べ物も通る部分であるので、外から入ってくる病原体を防ぐはたらきをします。
リンパ組織の集まりである扁桃には、鼻の奥にある咽頭扁桃(アデノイド)、口の奥の両側にある口蓋扁桃、そして舌の付け根にある舌根扁桃の4つがあり、輪のようになって病原体を防ぐ関所の役目をしています。
*扁桃の語源…扁桃とは、もともとアーモンドの別名です。リンパ組織が集まって丸くなった部分(口蓋扁桃)がアーモンドの種子の形に似ていることから、「扁桃」と呼ばれるようになりました。「扁桃腺が腫れている」と言うこともありますが、近年では「扁桃腺」ではなく、「扁桃」と呼ぶことのほうが多いです。
急性扁桃炎とは、免疫機能を持つ扁桃が感染症などの病原体に感染して、急激に炎症を起こしている状態です。
上述の咽頭扁桃(アデノイド)、口の奥の両側にある口蓋扁桃、舌根扁桃の4つのうち、特に口蓋扁桃(のどちんこの横のやや下、舌の付け根の両側にある丸く盛り上がった箇所)に炎症を起こすことが多いです。
症状は発熱やのどの痛みなどがあり、重症化すると飲食ができないほどのどが痛むこともあります。
また、急性扁桃炎は長引いたり繰り返したりする場合もあります。そのほか、リウマチ熱などの合併症を併発する場合もあり、注意が必要な病気であるといえます。
急性扁桃炎の原因としては、口や鼻から病気の原因になる微生物が入ってきて、咽頭や扁桃の粘膜に取りつくということが考えられます。
微生物のうち、細菌ではA群β溶血性連鎖球菌、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ桿菌、緑膿菌などが多いといわれています。
特にA群β溶血性連鎖球菌は溶連菌とも呼ばれ、症状(のどの痛み、発熱など)が強くなる傾向があります。リウマチ熱や急性糸球体腎炎といった合併症が起こりうることから、重要な原因といわれています。
またウイルスでは、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルス、EBウイルスなどが知られています。このほか、性行為で感染する病原体(梅毒、淋菌、クラミジア、ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルス、HIVウイルス)なども、原因となることがあります。
こういった微生物は、いわゆる風邪の原因でもあります。急性扁桃炎は、風邪を引いたときの症状のひとつとして生じることもあります。
原因が細菌であってもウイルスであっても、微生物を含んだ唾のしぶきが飛ぶといったことによってほかの人に感染が広がる可能性があり、主に飛沫感染もしくは接触感染をします。
また、空気感染が起こりうるとする説もあります。原因となる細菌・ウイルスを同定するため、周辺でどのような感染症が流行しているかということも、診断のために重要な情報です。
身近に急性扁桃炎の人がいる場合、感染拡大を防ぐためには、よく風邪やインフルエンザ予防で言われていることに注意しましょう。
手洗い、うがい、マスクの使用、咳エチケット、食器を共有しない、抵抗力をつける(しっかり栄養を摂り、睡眠・休養を心がける)、口や鼻を触る前には手を洗う(共有物を触った手で口や鼻を触らない)というようなことです。
急性扁桃炎に共通して、一律に「何日仕事(もしくは学校)を休まなければならない」というようなことは決まっていません。
ただし、インフルエンザに伴って急性扁桃炎が起こっている場合には、インフルエンザ感染症として出勤(出席)停止となります。
また、アデノウイルスに感染すると、のどだけではなく、目に結膜炎(流行性角結膜炎など)を起こすことがあります。アデノウイルスによる結膜炎は感染力が強いため、感染性がないという診断を受けるまでは出勤(出席)停止になります。
同じ急性扁桃炎であっても、仕事ができる程度に症状が軽い場合もあれば、高熱で寝込むほどつらく、飲食できない、口をあけるのも痛いという場合もあります。どの程度のつらさを感じているかについても、急性扁桃炎の重症度判断のために重要な情報になります。
急性扁桃炎は、細菌・ウイルスが咽頭や扁桃に取りつくことで起こると考えられています。
予防のため、日頃から手洗いうがい、十分な栄養補給と休養を心掛けましょう。
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