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「急性扁桃炎」の症状について医師が解説―繰り返すのはなぜ?受診するのは何科なの?

「急性扁桃炎」の症状について医師が解説―繰り返すのはなぜ?受診するのは何科なの?
白馬 伸洋 先生

帝京大学医学部附属溝口病院 耳鼻咽喉科 教授/科長

白馬 伸洋 先生

目次
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この記事の最終更新は2019年10月25日です。

のどの奥にある扁桃(へんとう)という部分が何らかの病原体に感染するなどで、急激に炎症を起こしている状態を急性扁桃炎と呼びます。誰もがかかりうる病気ですが、どのような症状が出るのでしょうか。また、重症化するとどうなるのでしょうか。

この記事では、急性扁桃炎の症状受診などの疑問にについて医師が解説します。

急性扁桃炎では、発熱やのどの痛みなどが起こります。のどの痛みの程度によっては、飲食や口を開けることすら難しくなることがあります。

咽頭扁桃では、免疫細胞が病原体を攻撃したときに崩壊した免疫細胞や病原体の老廃物である(たん)と混じって出てきます。

のどを見ると赤く腫れていたり、扁桃に白っぽい(うみ)が付いていたりすることがあるのも急性扁桃炎の特徴です。

気管支炎を併発すると咳はよく出ます。また、副鼻腔炎を併発すると副鼻腔の(うみ)が鼻の奥から気管に流れ込むこと(後鼻漏)で咳が出ます。熱は37.5度未満の微熱のこともあれば、38.6度を超える高熱になることもあります。

咽頭扁桃だけでなく鼻粘膜にも炎症を起こしていれば、鼻水や鼻づまりがみられることもありますし、気管や肺にも影響を及ぼしていれば、咳や息苦しさなどが起こることもあります。

また、咽頭の奥にある喉頭に炎症が及んでいると、声がかすれる・声が出しにくいといった症状もあります。

EBウイルスというウイルスが原因の場合は、同時に肝臓が腫れたり、血液検査で異常な細胞が見つかったりすることがあります。

急性扁桃炎を引き起こす病原体の代表的なものに「A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)」があります。溶連菌は、特に5~15歳位の子どもにおいて、感染後数週間程度で「リウマチ熱」という状態を引き起こすことがあるといわれています。

リウマチ熱は溶連菌感染後に起こる炎症反応で、心臓に炎症が起こって心雑音が出る、関節に痛みが出る、皮膚に発疹(ほっしん)やしこりが現れる、神経の異常により動こうとしていないのに体が動くといったことが起こるとされ、適切に治療をしないと心臓の弁に障害が残る可能性もあります。

溶連菌からリウマチ熱を発症する頻度は数%程度であるといわれており、抗生物質を適切に使用すればさらに低くなるとされています。

溶連菌感染後に起こり得るもう1つの合併症として、急性糸球体腎炎という状態があります。これも2~12歳程度の子どもに多いといわれていますが、頻度は溶連菌感染患者のうち2%以下程度とされています。

急性扁桃炎のあと10日程度で、血尿やタンパク尿、尿が少ない、高血圧、体がむくむなどの症状がみられることが特徴ですが、特別な治療をしなくても数週間から6か月程度で治る場合がほとんどだといわれています。

急性糸球体腎炎を起こしていないかを判断するため、溶連菌感染を起こしてから2~3週間後に尿検査や診察を行うこともありますが、医師の判断で検査を行わないこともあります。

治りが悪い場合や繰り返す場合は、何度も違う病原体に感染しているということもあり得ますし、治療が中途半端で病原体を殺しきれていない可能性もあります。病原体が薬に対して、耐性・抵抗性を持っているということも考えられます。

また、一般的な薬が効かないような微生物であるということも考えられます(たとえば、性行為で感染する病原体など)。

そのほか、喫煙や飲酒などで粘膜が荒れやすいという場合もあるかもしれません。また、扁桃炎だと思っていたら、実は悪性リンパ腫や扁桃がんなどの珍しい病気だったということも、まれですがあるといわれています。

原因が細菌なのかウイルスなのかについては、年齢、のどの粘膜や扁桃の様子、咳・鼻水・発熱など風邪のような症状があるか、粘膜をぬぐった液を検査にかける、などによって特定していきます。インフルエンザ、アデノウイルス、RSウイルス、溶連菌などについては、粘膜を綿棒でぬぐい、10分から15分ほどで結果が出るような迅速検査があります。

溶連菌かどうかを判断するために、年齢・発熱の程度・扁桃の見た目・首のリンパ節が腫れているか・咳があるかなどをスコア化し、何点以上なら溶連菌の可能性が高いと判断するような基準も存在します。

また、治療方針を決めるにあたって、どの程度つらく日常生活が妨げられているか、のどの痛みは飲食できないほど強いか、熱はどのぐらいあるか、のどの赤みはどの程度あるか、扁桃の腫れはどの程度か、扁桃に(うみ)がついているか、などから重症度を分類するスコアリングシステムも用いられています。

診察の結果をもとに、こういったスコアリングシステムと迅速検査などを組み合わせ、治療方針を決めていきます。

子どもの場合、元気がない・飲食が減っている・熱がある・のどの痛みを訴えるといった場合に小児科や耳鼻科を受診し、急性扁桃炎と診断される場合が多いかと思います。本人は自分の症状を十分に伝えられないことも多く、明らかに元気そうという場合を除けば受診を検討する必要があるでしょう。

大人の場合、37.5度以上の発熱、飲食がつらい、日常生活に支障がある、いつもの風邪ではないと感じる、自分なりに休養を取るなどを3~5日程度試しても改善しない、といった場合には、耳鼻科・耳鼻咽喉科もしくは内科などへの受診を検討する必要があるでしょう。

また、顔色が悪い、息苦しい、唾が飲み込めずよだれを垂らす、声がくぐもっている、文章で話すことができず単語の切れ切れでしか話せない、首が明らかに腫れている、意識が朦朧(もうろう)としている、水分が飲めず尿が出ていない、といった症状がみられる場合には、命に関わる状況ですので、急いで医療機関を受診させる必要があります。

急性扁桃炎については、耳鼻科・耳鼻咽喉科がもっとも適している場合が多いですが、子どもなら小児科、大人なら内科などでも診療を行います。

急性扁桃炎の症状は、軽いものから重いものまでさまざまです。異変を感じたら自己判断せず、医療機関の受診を検討しましょう。

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