概要
性器ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルス1型もしくは2型の感染によって発生する疾患を指します。性器ヘルペスはSTI(Sexually Transmitted Infections:性感染症)のひとつで、性別に関係なくみられる病気です。
女性の性器ヘルペスでは、新生児への影響も忘れてはいけません。単純ヘルペスウイルスの感染力は強く、性器ヘルペスを発症している状況で経腟分娩を行うと、ウイルスに直接接触し、新生児が感染することがあります。
原因
性交渉による感染
性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型もしくは2型の感染によって発生します。性交渉を通してウイルス感染をするため、性感染症のひとつとして数えられます。単純ヘルペスウイルスは、腟や子宮頸管などにも病変を形成することがあります。そのため産道に病変がある女性が経腟分娩すると、新生児に垂直感染を起こすことがあります。
オーラルセックスによる感染
女性はオーラルセックスをした際に、男性器にあるウイルスが口腔内へ侵入して、病変が生じることもあります。
神経節に潜むウイルスの再活性化
性器ヘルペスはウイルスへの初感染だけではなく、免疫力の低下、疲れの蓄積によって神経節に潜むウイルスの再活性化することでも症状が引き起こされます。
たとえばウイルスの再活性化を引き起こしうる原因には、
- 寝不足
- 疲れ
- 生理
- 性交渉
などがあります。
症状
潜伏期間
初感染の性器ヘルペスの場合、単純ヘルペスウイルスに感染してから2~10日間ほどの潜伏期間を経て症状が現れます。
おもな症状
女性の性器ヘルペスは、おもに以下の症状が現れます。
- 外陰部、腟、肛門、太もものびらん
- 強い痛み(疼痛感)
- かゆみをともなう皮膚粘膜症状
女性が単純ヘルペスウイルスに感染・発症すると、外性器などの局所(両側の大・小陰唇、腟やその周辺)に多数の水疱やびらんが起こるほか、発熱や、足の付け根のリンパ節が腫れる場合があります。
合併症
ほかにも、排尿時に痛みが生じたりする膀胱炎症状や、排尿障害に注意が必要です。また、性器ヘルペスが髄膜炎を発症するきっかけになることもあります。
再発したときの症状
何らかのきっかけで再発したときには、初発時と同様の場所や、おしり、太ももなどに水疱やびらんなどを形成します。一般的に、初発時の性器ヘルペスの症状は強く、再発時は弱くなることが多いといわれています。
検査・診断
水疱や潰瘍が性器の周囲にみられるとき、性器ヘルペスを疑います。単純ヘルペスウイルスではオーラルセックスによって口腔粘膜に病変があらわれることもあるため、口腔内にも病変がないか確認します。
性器ヘルペスの検査では、単純ヘルペスウイルスの存在を証明することが重要であるため、病変部から検体を採取します。単純ヘルペスウイルスが新生児に感染した場合、ヘルペス脳炎の発症など重症化することもあるため、必要に応じて、以下の検査を行います。
- 髄液や血液を用いた抗体測定
- PCR法による単純ヘルペスウイルスの遺伝子同定
治療
性器ヘルペスでは、肉眼で捉えられないほど小さい病変が形成されることもあるため、内服薬による治療を実施します。使用される薬剤には、アシクロビルやバラシクロビルといった抗ウイルス薬があります。
抗ウイルス薬を使用する目的は、以下の3つです。
- 発症後に抗ウイルス薬を投与する
- 前駆症状が現れたときにすぐに抗ウイルス薬を投与する
- 再発抑制療法(抗ウイルス薬を1日1回飲み続ける)
治療後、再発抑制療法を実施中に妊娠した場合、抗ウイルス薬の内服を中断することもあります。ただし、性器ヘルペスの活動性が高い状態で経腟分娩をすると新生児に悪影響を及ぼすことがあります。そのため、経腟分娩の可能性を高めるために妊娠36週からの抑制療法を選択したり、状況に応じて分娩時に帝王切開を選択したりすることもあります。
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