インタビュー

性器ヘルペスの原因-写真・画像で見る性器ヘルペスや帯状疱疹の症状、性器ヘルペスの再発を抑える再発抑制療法、性器ヘルペスにならないためにはどうしたらいいの?

性器ヘルペスの原因-写真・画像で見る性器ヘルペスや帯状疱疹の症状、性器ヘルペスの再発を抑える再発抑制療法、性器ヘルペスにならないためにはどうしたらいいの?
尾上 泰彦 先生

プライベートケアクリニック東京 院長

尾上 泰彦 先生

この記事の最終更新は2015年10月17日です。

性器ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、または2型(HVS-2)の感染が引き起こすウイルス性の感染症です。性器ヘルペスは初めて感染する場合の「初感染」と、一度感染したのち体内で眠っていたウイルスによって症状があらわれる「再発」の2つにわけられます。 今回は性器ヘルペスに感染する原因について話していきましょう。

性器ヘルペスは、通常の日常生活を送っている中では感染しません。性器ヘルペス菌を保有している方との性行動などで感染します。性器ヘルペスのウイルスは、分泌物、精液、唾液の中に少なからず排泄されており、特に皮膚・粘膜の表面に症状があらわれているときに多く排泄されています。

男性の性器ヘルペス
包茎男性の性器ヘルペス
先に紹介した男性の症状。包皮全体に病変を確認することができる

またヘルペスウイルスに感染していても、はっきりとした皮膚・粘膜症状があらわれないために、知らないうちに他人に感染させてしまう例も多く見られます。 このような症状があらわれないままのウイルス排泄は、初感染から3ヶ月以内の時期に多く起こることがわかっており、その後徐々に減っていきます。

「日常生活のなかでヘルペスはうつりますか?」という質問を受けることがあります。 手をつなぐ、会話をする、といった日常生活でヘルペスウイルスが感染することはありません。性器ヘルペスの方と同じ風呂に入ったとしても、感染することはありません。

しかし、性器ヘルペスの方と同じバスタオルを使用したり、お尻に症状が出ている方が座った便座を使用すると感染のリスクが出てきます。

  • バスタオルを共有せず、洗濯・乾燥をしっかり行う
  • 使用した便座は、エタノールなどで消毒する

以上のようにしっかり感染防止をすることが、感染を避けるために有効な手段といえるでしょう。

臀部にあらわれた水疱。右は拡大図

性器ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、もしくは2型(HVS-2)が原因となって、皮膚や粘膜に症状を引き起こします。性器ヘルペスの原因となるウイルスと帯状疱疹の原因となるウイルスは、ともにヘルペスウイルスと呼ばれるカテゴリーに入ります。そのため性器ヘルペスと帯状疱疹は症状が似ているため、一見しただけではどちらの症状であるのかわからない場合もあります。

性器に生じた帯状疱疹

性器ヘルペスと帯状疱疹の症状にはどのような違いがあるのか確認してみましょう。

  • 原因は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)もしくは2型(HVS-2)
  • 性器や肛門周囲などに「性器ヘルペス」として症状があらわれる
  • 性器外ヘルペスとして、臀部(おしり)や乳房(乳輪)にもできやすい
  • 原因は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)
  • 初感染時には水ぼうそうを発症、その後ウイルスが神経節に潜伏する。再発時は帯状疱疹を発症
  • 主に顔面、胸背部(きょうはいぶ)、腹部、頭部、下肢などに発症するが、感覚神経がある全身どこにでも発症する。
  • 皮膚の疼痛、違和感といった初期症状から、赤い発疹、水ぶくれをおこす
  • 生じた水ぶくれが破裂してかさぶたになり、剥がれ落ちる

性器ヘルペスも帯状疱疹もヘルペスウイルスによるものですが、水ぶくれの生じ方にも違いを確認することができます。帯状疱疹の場合、水ぶくれが左右どちらかに帯状になって集まってできるのが特徴です。一方ヘルペスでは、水ぶくれが数個集まってできていたり、広範囲に散らばってできているのが特徴です。  

肛門周辺に生じた帯状疱疹。初診時は水疱のみを確認したが、再診時には血疱(けっぽう)化を確認することができた

また、性器ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルス1型・2型は感染力も強いため、患部を触った手に接触するなどのような間接的接触であっても、ヘルペスウイルスが感染する可能性があります。そのため単純ヘルペスウイルス1型・2型の感染は、性行為が原因でない場合もあります。ほかにも体力が落ちていたり、免疫力が低下している状態では、より感染しやすい状態ということができるでしょう。一方、帯状疱疹の原因となる水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)には単純ヘルペスウイルスほどの感染力はありません。

単純ヘルペスウイルス1型と呼ばれるHSV-1(もしくは2型のHVS-2)に初めて感染して性器ヘルペスを発症すると「初感染」、神経節に潜伏しているウイルスが何かしらのきっかけで症状をおこすと「再発」として症状があらわれます。ヘルペスは初感染時の方が症状も激しく出ます。

ヘルペスの代表的な症状である水疱やただれは、左右対称に生じ痛みやかゆみを生じるのですが、特に女性は膀胱炎をおこしやすくなります。特にヘルペス初感染時は症状が激しく、左右の陰部にできたびらんによる強い痛みや掻痒感に加え、膀胱炎や排尿痛による痛みが加わります。そのため前かがみになったり、がに股歩きになるといった特徴的な歩きかた(歩行障害)をする女性も多く見受けられます。

性器ヘルペスは初感染の方が症状が激しい

性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)もしくは2型(HVS-2)による感染症のため、抗ウイルス薬を使用してウイルスの増殖を抑える治療方法となります。しかし、現代の医療技術では体内に侵入したヘルペスウイルスを完全に排除する事はできないため、再発を繰り返すこともあります。 

子宮頸部に生じたヘルペスの病変

女性の性器ヘルペスは、主に外陰部、腟、肛門や太ももに赤い腫れや、強い搔痒感をともなう皮膚のただれや水ぶくれができます。このような症状が現れた場合は病院で検査をおこなう必要がありますので、皮膚科もしくは泌尿器科を受診するようにしましょう。また女性であれば、婦人科で検査を受けることも可能です。

性器⇒口⇒乳房の経路で感染したと考えられる病変

性器ヘルペスの検査は、まず病変部から分泌物を採取し、ヘルペスウイルスの有無を調べます。ほかにも血液検査にて、ウイルス抗体をという特定の物質を調べる場合もあります。検査の結果性器ヘルペスと診断されると薬剤を使用した治療が開始します。日本性感染症学会の定めるガイドラインでは、アシクロビル 200mgを1回1錠の服用を5日間連続して服用する、もしくはバラシクロビル塩酸塩 500mgを1回1錠、1日2回5~10日間経口投与するよう指導しています。症状が重症化している場合には、注射用アシクロビル5mg/kg/回を1日3回8時間ごとに1時間以上かけて7日間点滴します。

ヘルペスウイルスは性器に感染すると、性器周辺の神経から骨盤の中の神経節に移動し、潜伏します。潜伏しているヘルペスウイルスは骨盤の神経節で眠っていますが、過労や睡眠不足などのストレスを引き金として再活性化します。そして神経をつたって皮膚・粘膜まで移動し、症状があらわれます。皮膚・粘膜の表面に症状があらわれている場合、性行為によりパートナーに感染することがあります。再発を引き起こすストレスには過労、睡眠不足、日光浴、生理などがあり、セックスそのものがストレスになることもあります。

ヘルペスは再発時の方が症状が軽い

性器ヘルペスの治療では、ヘルペスウイルスを体から除去する事を目標にし、抗ウイルス薬が処方されるのが一般的です。たとえば性器カンジダ症の治療では、再発の場合に限って市販薬を購入することができます。しかしこれはあくまでも特例で、抗ヘルペスウイルス薬は基本的に医師が処方しなければ入手することができません。そのためドラッグストアや薬局などで購入可能なOTC医薬品は販売されていません。

ヘルペスのなかでも、口のまわりや唇周辺に水ぶくれや赤い発疹ができる「口唇ヘルペス」に対するものであれば、市販薬(抗ウイルス薬含有外用薬)としても販売されています。性器ヘルペスは単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)もしくは2型(HVS-2)によるものなので、口唇ヘルペス用の市販薬を性器ヘルペスに対して使用した場合も、ある程度の効果が発揮される可能性はあります。しかし性器ヘルペス用に販売されている薬ではないで、自己判断で治療するのは危険です。性器ヘルペスが疑われる症状があるときには、必ず専門医の診察を受けるようにしましょう。

性器ヘルペスはストレスなどにより再発することがある

性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)もしくは2型(HVS-2)が原因の、再発を繰り返す可能性のある病気です。この単純ヘルペスウイルスは体内に侵入すると、神経節に住みついてしまいます。一度体内に侵入したウイルスは半永久的に神経節に潜伏し続けますので、再発の可能性がゼロになることはありません。

性器へルペスの治療には、ヘルペスウイルスが活動をおさえて再発を防止する「再発抑制療法」があります。これは毎日服薬することでウイルスの増殖を防ぐ方法で、1年で6回以上ヘルペスを再発する頻度の高い患者が対象となっており、現在では50か国以上で認められている治療方法です。

性器ヘルペスの再発抑制療法は、ヘルペスの診療経験が豊富な医師に依頼することが好ましい

この再発抑制療法のメリットは、性器ヘルペス再発をふせぐ以外にも、精神的な不安やストレスの軽減することができます。単純ヘルペスウイルスは高い感染力を持つので、パートナー以外にも妊娠や出産をつうじて胎児や新生児へ感染を広げてしまう可能性があります。

再発抑制療法にかかる費用は、自己負担額1日約200円程度で1年で約7万円程度必要になります。ウイルスの抑制によって得られるメリットを考え、多くの患者が再発抑制療法を希望しています。大半の場合1年ほど継続して再発抑制療法をおこないウイルスの抑制効果を確かめます。この経過観察中に再発が見られる場合には、2回目の治療を行います。

この性器ヘルペスの再発に対する再発抑制療法を積極的に取り組んでいる医師は少ない状態です。そのため再発抑制療法を希望する場合には、ヘルペスの診療経験が豊富な医師に依頼することが好ましいといえるでしょう。

性器ヘルペスは、初めて感染した人の約70%に症状が出ないと言われています。しかしこの症状が出ていないときにもヘルペスウイルスは排泄されているので、ほかの人へと感染させてしまう可能性はゼロではありません。

皮膚・粘膜症状が出ている方とキスやセックスをすると、パートナーにヘルペスが感染する可能性が出てきます。 感染の拡大を防ぐためには、ヘルペス感染者との濃厚な接触を避けることが大切です。もしパートナーの性器や口唇などの部位に水疱などのヘルペスの症状が出ているときは、キスやセックスなどの性行為は控え、検査・治療を受けてはやめに治すようにしましょう。

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