インタビュー

性器ヘルペスとはどんな病気?―単なる皮膚疾患ではない、ウイルス性の疾患!

性器ヘルペスとはどんな病気?―単なる皮膚疾患ではない、ウイルス性の疾患!
尾上 泰彦 先生

プライベートケアクリニック東京 院長

尾上 泰彦 先生

この記事の最終更新は2015年07月22日です。

「性感染症」というテーマは、日常生活の中ではなかなか話題にしにくいものかもしれません。しかし、性感染症の知識は、私たちがきちんと身につけておかなければならないものです。

さまざまな性感染症について、性感染症学会の代議員としてわが国における性感染症予防・治療を牽引し、ご自身の診療所でも長きに渡り性感染症の患者さんと向き合われてきた尾上泰彦先生に伺います。今回は「性器ヘルペス」についてのお話です。

性器ヘルペスとはヘルペスウイルスが性器に感染することによって引き起こされるウイルス性の疾患です。
ヘルペスウイルスは性器に感染すると、性器周辺の神経をつたって骨盤の中の神経節に潜伏します。潜伏しているヘルペスウイルスは、なんらかの精神的、肉体的なストレスを引き金とし再び神経をつたって性器ヘルペスとして症状がでてきます。これを再発と言います。
ストレスの原因としては過労、睡眠不足、日光浴、生理などがあり、またセックスそのものがストレスになる場合もあります。

男性の場合、性器や性器周辺に小さな水疱や、ただれが左右対称性に多く生じ、痛みやかゆみが生じます。また、熱がでたり、足の付け根のリンパ腺が腫れたりもします。
女性の場合、膀胱炎症状や歩行困難があり、とてもつらい症状になる場合があります。

一般的な日常生活では感染しませんが、腟分泌物、精液、そして唾液の中に常にウイルスが少しずつ排泄されているので、ヘルペスウイルスの感染者とのキスやセックスにより感染します。
感染の予防のためにセックスをする場合は最初から最後までコンドームを忘れずにつけましょう。

性器ヘルペスの検査にはウイルスを直接証明する抗原検査と血清抗体の上昇によって診断する抗体検査があります。血清を用いて抗HSV抗体価の測定は比較的行いやすい検査ですが、病変のウイルスの存在を証明することは難しく、検査結果の判読は各検査の手法を深く理解する必要があります。

病変部から検体を用いた検査にはTzanck試験、蛍光抗体直接法によるウイルス抗原検査、ウイルス分離培養、シェルバイアル法、核酸増幅法などが挙げることができます。核酸増幅法の中でもLAMP法は非常に検知率が高く、また簡便かつ迅速に行うことができます。さらに近年ではイムノクラフト法を用いた非常に簡便な迅速キットが使用可能になり、性器ヘルペスの検査も行いやすいものになっています。

性器ヘルペスの治療にはまず性器ヘルペスが単なる皮膚・粘膜疾患ではなく神経のウイルス感染称であるという認識が必要となります。しかし実情はヘルペスを皮膚・粘膜疾患とだけ考えてしまっている一般臨床医が多いです。

外用薬は簡便に使用でき、持ってさえいれば医師を受診しなくても使用することができます。しかし外用薬は有効成分の濃度がすぐに低下してしまいます。その点内服薬は有効成分の濃度が高く保たれます。また性器ヘルペスは病変部以外にもウイルス排泄があり、肉眼で捉えられないような非常に小さい病変も存在します。そのため性器ヘルペスに対しては内服薬が必要となります。

治療法には3つの方法があります。①発症後に抗ウイルスの投与(保険適応)②前駆症状が出現した場合にすぐに抗ウイルス薬を投与する③再発抑制療法(抗ウイルス薬を継続的に飲み続ける)の3つです。
抗ウイルス薬にはアシクロビルやバラシクロビルといった薬を用います。

初感染

性器ヘルペス初感染(女性)
性器ヘルペス初感染(女性)

再発 

性器ヘルペス再発(男性)
性器ヘルペス再発(男性)
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