そういえん

爪囲炎

俗称/その他
爪周囲炎
最終更新日:
2024年02月13日
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2024/02/13
更新しました
2017/04/25
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概要

爪囲炎(そういえん)とは、手足の爪の周辺に細菌やカビが入り、感染・炎症を引き起こすことによって、爪の周辺が赤く腫れたり、痛みが生じたりする病気です。感染症によるものと薬剤性によるものに大別され、もっとも代表的な原因は感染症です。原因となる薬剤としては、がんの治療に使用する分子標的薬が挙げられます。

症状が悪化すると、爪の周りの皮膚や指の腹、爪の下などに(うみ)がたまり、外から見ても黄色っぽく見えることがあるほか、眠れないほど強い痛みが生じることもあります。なお、膿が指の腹側に生じている場合は、ひょう()と呼ばれることもあります。

炎症の原因がカンジダと呼ばれるカビである場合は、症状などが異なることから“カンジダ性爪囲炎”と呼び、ほかの爪囲炎とは区別されることが一般的です。

原因

感染性爪囲炎は爪の周りにできた傷や皮膚の荒れた部分から細菌などが入り込み、感染・炎症を引き起こすことにより生じます。細菌が入り込みやすくなるきっかけとしては、ささくれや深爪のほか、皮膚に爪が食い込んで痛みや腫れが生じる陥入爪(かんにゅうそう)、爪を噛む癖、マニキュアを塗る習慣などがあります。爪囲炎の主な原因となる細菌は、黄色ブドウ球菌、性連鎖球菌(かのうせいれんさきゅうきん)、大腸菌、緑膿菌(りょくのうきん)などです。また前述のとおり、カンジダと呼ばれるカビに感染することによって起こる場合もあります。

そのほか、がん治療や免疫療法などの影響で、爪囲炎が生じやすくなるケースもあります。薬剤性爪囲炎の原因となる代表的な薬剤としては、上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)阻害薬とマルチキナーゼ阻害薬が挙げられます。

症状

爪囲炎では爪の周辺の皮膚や指の腹部分に痛み、赤み、腫れなどの症状が現れます。進行するとがたまり、腫れた部分が黄色くみえます。カンジダ性爪囲炎を除く爪囲炎では、強い痛みが現れる傾向があり、中には夜眠れないほどの強い痛みを訴える人もいます。

さらに悪化すると爪を作るもととなる“爪母(そうぼ)”が障害されることで、爪の表面に凹凸が生じるようになったり、爪の先端が爪の下の皮膚(爪床(そうしょう))から浮き上がる“爪甲剥離症(そうこうはくりしょう)”など別の病気を引き起こしたりする恐れもあります。

カンジダ性爪囲炎では爪周辺の皮膚がやや暗赤色に腫れ、かさぶたのようなものが生じますが、症状はあまり強くないため患者自身が気付きにくいという特徴があります。

ただし数か月この状態を放置していると、爪の変色・変形などを引き起こす“爪甲異栄養症(そうこういえいようしょう)”や“爪甲剥離症”を引き起こすことがあります。

分子標的薬が原因となる場合は、治療を開始して数か月経過してから現れることが多く、指趾の爪甲周囲に紅斑や炎症に伴う色素沈着がみられるほか、亀裂が生じ痛みを伴います。さらに腫脹や肉芽が生じて二次感染を併発しやすく、徐々に痛みが激しくなるため、靴を履くことや手仕事が困難になるなど、QOL(生活の質)の低下が懸念されます。

検査・診断

爪囲炎そのものは、基本的に症状などの臨床所見から診断されます。治療に使用する抗菌薬を検討するためにたまったを採取・培養する細菌培養検査を実施することもあります。なお、膿の色が黄色い場合には黄色ブドウ球菌が、緑の場合には緑膿菌が推測されます。カンジダ性爪囲炎の場合は病変部分を顕微鏡で観察し、カンジダの有無を確認します。

分子標的薬が原因となる場合は、DLST検査*や皮膚アレルギー検査は一般的に陰性になるため治療歴や内服歴の把握がもっとも重要です。一般的な薬物障害では服用している薬を中止しますが、分子標的薬の場合は皮膚障害のために治療が中止されることはありません。

*DLST検査:薬が原因でアレルギー反応が生じていないかを確認する検査。血液を採取して薬に対するリンパ球の数を確認する。

治療

初期段階の爪囲炎では、抗菌薬による薬物療法と冷湿布による治療が検討されます。進行してがたまっている状態の場合、これらの治療に加えて皮膚を切開して膿を排出する治療が検討されます。爪の下の皮膚に膿がたまっている場合は爪を切除し、下にたまった膿を出すこともあります。なお、皮膚に爪が食い込むことで生じている爪囲炎の場合は、陥入爪の治療も行います。

カンジダ性爪囲炎の場合も一般的に薬物療法を行います。軽症の場合は、抗真菌薬の塗り薬を使用することで治癒が期待できますが、塗り薬を塗ってもなかなか治らない場合などには、抗真菌薬の飲み薬による治療も検討されます。

分子標的薬が原因の場合は、病変部の洗浄やガーゼ保護と保湿剤塗布などのスキンケアを積極的に行うことが大切です。軽症例ではストロングクラス以上のステロイドの外用薬とアダパレンの外用の併用も有効で、テーピング(スパイラルテープ法)などの補助的療法を加えることもあります。症状が強い場合はステロイドのランクを上げ、ミノサイクリンやクラリスロマイシンなどの抗生物質を投与します。不良肉芽を伴う場合は、液体窒素による凍結や電気焼灼を行うこともあります。

日常生活に制限が生じている場合は、爪甲の部分切除や人工爪法などの可逆的外科的治療を検討し、もっとも重症の場合には爪母を含めた部分抜爪が適応となることもあります。治療抵抗性の場合は、分子標的薬の一時休薬や減量を行う場合があります。

参考文献

  1. EGFR 阻害薬に起因する皮膚障害の治療手引き ―皮膚科・腫瘍内科有志コンセンサス会議からの提案―(https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/news/s_20170228egfr.pdf)

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