痛風は、血中の尿酸が結晶となって関節などに沈着することにより、痛みが生じる病気です。生活習慣が主な原因と言われています。「風が吹いただけでも痛い」といわれる痛風の症状と原因、痛みや治療法について、兵庫医科大学の山本徹也名誉教授におうかがいしました。
痛風とは、血中の尿酸が正常値(7mg/dl)を超えた状態である高尿酸血症が原因で起こります。血液中の尿酸が尿酸塩結晶という結晶になり、それが関節や腎臓に析出して起こる症状を痛風といいます。
特に関節に尿酸塩結晶が生じたときは激痛が走り、日常生活も一時的に困難になるほどです。
尿酸塩結晶が腎臓のなかに沈着すると、痛風腎となり腎不全の原因となります。昔、痛風患者は、痛風腎による腎不全が原因でおよそ50%の人が亡くなっていた時代もありました。しかし今では早期に治療する方が多くなったことで痛風腎による腎不全で亡くなる方は10%以下まで減っています。
「プリン体を過剰摂取すると痛風になる」という話はよく知られているところです。痛風の原因となる尿酸は、プリン体(プリン環の構造を持つものの総称)が分解されることでできます。プリン体は細胞質やの核の中に含まれています。このプリン体が体内で分解されると最終産物の尿酸が作られます。
尿酸は腎臓や腸管から排出されるため、血液の尿酸値は体内で産生された量と排他された量のバランスによって決まります。そのため尿酸の産生が増加する場合や、尿酸の排他が低下する場合は、血液中の尿酸値が上昇し、高尿酸血症が出現します。
高尿酸血症・痛風が増加した大きな原因は、戦後、食生活を中心に生活習慣が西洋化したためと考えられています。現在、日本の痛風の患者さんは100万人程度といわれていますが、痛風の原因となる高尿酸血症の方はその10倍の1000万人程度いるのではないかと推測されています。
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痛風の前兆として、患部に違和感やむずむずした感じを覚える方は痛風の患者さん全体の半分くらいいらっしゃいます。この違和感があるうちにすぐに治療を開始すれば、この違和感は治まります。また、痛風発作を未然に防ぐことができます。
痛風の前兆が現れた段階で治療ができなかった場合にはだんだんと痛みが生じ、24時間以内に痛みが最高潮に達します。痛風発作の痛みは耐え難いほどの激痛で、日常生活が困難になる方もいるほどです。その後、強い痛みが2~3日続き、1~2週間で症状は収まります。痛風になると、痛みを生じた箇所は赤く腫れ上がります。強い痛みで歩くのも一苦労という方も多くいらっしゃいます。
痛風の原因は高尿酸血症であることはお話ししました。痛風発作は一時的なものでも、高尿酸血症は治療しない限りよくなることはありません。この高尿酸血症を放置しておくと、だんだんと尿酸塩結晶が形成され、関節だけでなく皮膚の下にも沈着してこぶのようになります。この状態が痛風結節です。
痛風結節は痛風発作と違って痛みが生じることはありませんが、痛風結節が進行すると関節が変形してしまったり、骨の破壊が起こったりして日常生活に影響が出ます。さらにひどく、こぶが大きくなると皮膚が裂けてしまい、そこから結晶化した尿酸塩が出てくることもあります。
痛風結節は比較的体温の低い場所、手足の関節や耳たぶなどにできます。
痛風は激しい痛みを伴うので、薬で一刻でも早く痛みを抑えたい、という方も多くいるでしょう。痛風に痛み止めは効果があります。
痛風発作は、まず関節内のマクロファージという白血球の一種が関節内の尿酸塩結晶を感知します。そして好中球という体内の異物を処理する白血球の一種を関節内に呼び込む信号を出します。好中球が関節内に入ると結晶を攻撃し、炎症が生じて強い痛みが起こるのです。
患部に違和感がある程度の初期段階であれば、コルヒチンという薬が有効です。痛風発作が起こってしまったときには、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の大量投与が有効です。他には、ステロイドの投与もしばしば試みられます。
痛みが強い初期はNSAIDsかステロイドを通常量の3倍ぐらい投与して痛みを抑え、痛みが軽くなったら通常量に戻し2週間くらい様子をみて、痛みが完全になくなったら服用をやめます。
市販の鎮痛剤も痛風の痛みに効果があります。保険適用のものであれば第一選択としてナプロキセン、次にインドメタシンなどを使用します。痛風発作の起こっている箇所が複数ある場合はステロイドを用いることもあります。
薬局やドラッグストアでも手に入れることができるロキソプロフェンナトリウム水和物も効果があります。ただし、上記の薬に比べて量を多く飲む必要があります。ただし腎臓に疾患があるなど腎臓の機能が低下している場合にロキソプロフェンナトリウム水和物を使用すると、腎障害を引き起こすことがあるため注意が必要です。
痛風が女性よりも男性に多い理由は、ホルモンのはたらきの違いにあります。
女性ホルモンは尿酸を尿中に排出させるはたらきがあるため、男性よりも体内に尿酸が溜まりにくく、そのため女性の痛風患者の方は少数にとどまっています。
ただし閉経後などで女性ホルモンの分泌が減少すると、女性にも痛風が起こることがありますので、食生活などに注意が必要です。閉経していない若い女性に痛風が起こった場合は、遺伝子異常などが原因であることもあります。
痛風の診察はまず、痛風関節炎や痛風結節の有無を目視で確認することです。また血液検査や尿検査を行い、滑液中の尿酸値や尿中尿酸排他量などを調べます。骨の状態を確認するためにレントゲン検査を行ったりもします。
痛風は痛風発作が起こっていないときには痛みはありません。しかし痛みがないときでも痛風の原因である高尿酸血症を治療しないと痛風が再発します。そこで、痛風の治療は高尿酸血症の改善が肝となります。
痛風発作が治まったら、血中の尿酸値を下げるために尿酸降下薬の服用を開始します。アロプリノール、フェブキソスタット、トピロキソスタットといった尿酸産生抑制薬やベンズブロマロン、プロベネシドなどの尿酸排泄促進薬を使用します。
薬物療法での治療のほかに、大切なのが生活習慣の改善です。たとえば激しい運動や過食、多量の飲酒を避けるといったことです。
大阪暁明館病院 検診センター長
山本 徹也 先生の所属医療機関
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