概要
発作性夜間ヘモグロビン尿症とは、血液の細胞(赤血球、白血球、血小板など)の元となる“造血幹細胞”に異常が生じ、血管内で赤血球が壊されやすくなる病気である溶血性貧血の一種です。赤血球には全身に酸素を運搬するはたらきのある“ヘモグロビン”が含まれているため、赤血球が破壊されることで貧血を引き起こします。
また、赤血球の破壊は夜間就寝中に起こりやすいため、起床後の尿が破壊された赤血球の色素の影響で黒色になるのも、この病気の特徴的な症状のひとつです。
発作性夜間ヘモグロビン尿症は後天的な遺伝子の異常によって引き起こされることが分かっており、発症頻度は100万人に数人のみと非常にまれな病気です。
しかし、この病気は破壊された赤血球によって腎臓などの臓器にダメージが生じることもあるため、早期発見・早期治療が望ましいと考えられています。
原因
発作性夜間ヘモグロビン尿症は、“造血幹細胞”の“PIGA遺伝子”が後天的に突然変異を引き起こすことが原因で発症します。
PIGA遺伝子に変異が生じた結果、赤血球が補体のはたらきによって破壊されていくと考えられています。
症状
発作性夜間ヘモグロビン尿症は、赤血球が破壊されていくため貧血を発症し、動悸・息切れ、疲労感やだるさ、立ちくらみなどの症状を引き起こします。
また、赤血球の破壊は夜間に生じやすいため、早朝にコーラのような黒い尿が見られるのも特徴です。これらの症状は常に生じるわけではなく、細菌感染やストレスなどによって“補体”のはたらきが活発になると発作的に症状が現れます。
そのほか、この病気では再生不良性貧血や骨髄異形成症候群など骨髄の機能が低下する病気を合併するケースも多く、白血球や血小板数の減少が引き起こされ、感染症にかかりやすくなる・出血しやすくなるといった症状が生じることがあります。
また、慢性的に赤血球が破壊されることで腎機能低下が起こったり、血栓症が合併したりすることも少なくありません。この病気の進行は非常に緩やかであるため、貧血を発症していても自覚症状がないケースも多々あり、これらの臓器障害を引き起こして初めて発見されることがあります。また、飲み込みづらさ、男性機能不全、原因不明の腹痛などさまざまな症状を呈することが知られています。
検査・診断
発作性夜間ヘモグロビン尿症が疑われる際には、次のような検査が行われます。
血液検査
赤血球や白血球、血小板などの血液細胞の数を測定することができる検査です。貧血の有無を確認し、重症度の評価をしたり貧血の原因を探ったりするのにも役立ちます。また、網状赤血球という若い赤血球が増えているかどうか、LDHや間接ビリルビンという赤血球が壊れた結果増える物質の増加を調べます。
尿検査
この病気では赤血球の破壊が亢進するため、尿中にヘモグロビンの色素が含まれるようになります。このため、尿中にヘモグロビンが含まれているかを調べる検査が行われます。
また、腎機能障害を調べるため、尿タンパク量などの測定も行われます。
フローサイトメトリー法
発作性夜間ヘモグロビン尿症に特有の赤血球・白血球・血小板が存在するかを調べる検査です。この病気では、上でも述べた通り、これら血液細胞の表面に存在するタンパク質の一種が欠損しているため、CD55, CD59というタンパク質の欠損した血球の存在を確認することで診断を確定します。
骨髄検査
発作性夜間ヘモグロビン尿症は診断が難しく、ほかの原因によって引き起こされる貧血との鑑別を行うために骨髄検査が必要になることがあります。
骨髄検査は胸や腰の骨に針を刺して骨髄を吸引し、顕微鏡で詳しい観察が行われます。
治療
発作性夜間ヘモグロビン尿症を根本的に治すには、遺伝子変異を起こした造血幹細胞の代わりに正常な造血幹細胞を移植する治療が必要です。しかし、造血幹細胞移植には副作用が強く、拒絶反応や感染症などによって重篤になることがあります。
一方、近年では赤血球の破壊を抑制する効果のあるエクリズマブやラブリズマブという薬剤が開発され、造血幹細胞移植を行わなくても薬物治療を続けることで症状の進行を抑えることが可能となっています。
これらの薬物治療を行っても貧血が進行している場合には輸血治療を行う必要があります。
そのほか、再生不良性貧血や骨髄異形成症候群など骨髄機能の低下を引き起こす病気を合併している場合には、それらに対する治療も同時に行います。この場合には前述の造血幹細胞移植を検討します。
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