概要
真菌性関節炎とは、真菌を原因として発症する関節炎のことです。通常、関節は無菌状態ですが、何かしらの機序により真菌が関節内に入り込み、関節炎を発症することがあります。真菌性関節炎は、健常者に発症することは非常にまれです。人工関節のある方、糖尿病や肝硬変、結核、エイズ、ステロイドの使用中など、免疫機能に異常を来すような背景を抱える方にみることが多いです。
真菌性関節炎では炎症所見としての痛み、皮膚の発赤、関節の腫れなどをみますが、潜在性にゆっくりと進行することも特徴のひとつです。そのため、病気を疑わなければ診断が遅れてしまい、最終的に関節破壊を来すこともあります。真菌性関節炎の治療では、原因となっている真菌に効果を示す抗真菌薬を長期間使用することになります。人工関節がある場合は、手術も考慮されます。後遺症を来すことなく高い治療成績を残すためにも、早期発見、早期治療を行うことが重要です。
原因
真菌性関節炎とは、本来は無菌状態である関節内に真菌が侵入し、炎症を起こす病気です。原因となる真菌としては、カンジダ、アスペルギルス、ヒストプラズマ、コクシディオイデス、ブラストミセス、クリプトコックス、スポロトリックスなどがあります。
無菌状態である関節へ真菌が入る経路としては、いくつか知られています。まず、関節以外の体のどこかから真菌が血液に入り込み、関節に運ばれることがあります。また、関節周囲への骨折などの外傷や手術などの医療行為をきっかけとして、真菌が関節へと入り込むこともあります。医療行為では、関節症に対しての関節液の採取やステロイド注射により、非常にまれに真菌性関節炎が引き起こされることもあります。
環境中に広く存在するため真菌に暴露される機会は非常に多いですが、実際に真菌性関節炎が免疫機能の正常な方において生じることはまれです。糖尿病や肝硬変、アルコール中毒、結核、エイズ、ステロイドの使用中、悪性腫瘍、化学療法中など、免疫機能に異常を来すような背景を抱えることが、真菌性関節炎の発症リスクを高めます。人工関節、関節への医療行為、外傷などで発症することもあります。
症状
真菌性関節炎の好発部位は膝関節であり、通常は全身のなかでもひとつの関節が障害を受けることになります。炎症反応を反映して、関節の痛みや腫れ、周囲皮膚の発赤などをみますが、同じく関節炎を生じる細菌性のものに比べて緩やかに潜在性に病状が進行するのが特徴です。病状が進行すると、関節・骨の破壊が進み、関節機能に永続的な影響をもたらすこともあります。
真菌性関節炎は関節炎としてのみ生じることもありますが、血流に乗じて真菌が他の臓器から運ばれることもあります。真菌性肺炎で咳や呼吸障害などの呼吸器症状、発熱や全身倦怠感、ショックなどの敗血症症状などを併発することもあります。
検査・診断
真菌性関節炎では、関節から得られた関節液を用いて、その中に真菌が存在することを証明する検査が重要です。顕微鏡的による確認や、培養検査によって真菌を特定します。また、生検や外科的に切除した検体により真菌の確認や関節炎の状況の評価を行うこともあります。
真菌性関節炎では、関節の破壊状態を画像的に評価することも重要です。レントゲン写真、CT・MRI検査を行うことで、関節並びに周囲組織の病変を確認します。
治療
真菌性関節炎の治療の基本は、罹患関節の安静と原因となっている真菌に効果のある抗真菌薬の使用です。使用される薬剤にはアムホテリシンB、フルコナゾールなどがあります。真菌性関節炎の治療は長期に渡るため、経過中には副作用が出ることもあります。また、基礎疾患、原因となる真菌によっても治療期間は異なります。経過によっては外科的な治療を行うこともあります。排膿を促すための処置、持続的な関節の洗浄、人工関節の除去が行われることがあります。
真菌性関節炎は、病気の発症様式が潜在性であるため診断がつくまでに時間がかかることもあります。しかし、永続的な関節破壊を残すこともあるため、早期に病気を診断し適切な治療をすることが必要です。
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