概要
眼球がおさまっている骨で囲まれたスペースのことを眼窩といいます。蜂窩織炎(蜂巣炎)とはその脂肪組織を中心とした部分に、細菌などが感染して生じる急性化膿性炎症のことです。
鼻の周りの副鼻腔(鼻腔を取り囲む骨の内部にある空洞のこと)から感染が眼窩に広がることが多いとされています。いったん発症すると急速に進行し、感染がコントロールできなければ頭蓋内に影響が及ぶこともあります。また、病原菌が多量に血液中に侵入して全身感染症が起こり、重篤な合併症を招くこともあります。
原因
発症の原因は副鼻腔に感染が起こり、眼窩に波及すること、歯や歯肉疾患の影響が多いとされています。同様に歯の治療中や治療直後に発症することがあります。その他、眼窩底骨折を伴う外傷性、眼周囲(眼瞼、結膜、涙嚢)の化膿性病巣の進展が原因としてあげられます。
原因菌はグラム陽性球菌のなかでも黄色ブドウ球菌や肺炎球菌、副鼻腔内や口腔内炎症では嫌気性菌も検出されることがあります。その他、インフルエンザ菌や、コントロール不良な糖尿病患者さんや免疫力が低下している患者さんでは真菌が原因となることがあります。
症状
下記のような症状がみられます。
検査・診断
臨床症状で比較的容易に眼窩蜂巣炎を疑うことは可能ですが、眼球偏位もある場合は眼窩膿瘍へ重症化していることが多いため早めの処置が必要です。
(1)早急に眼窩部CTを行い、眼窩内への進展状況を把握します。腫瘤がないかどうか、もし腫瘤があれば腫瘤内が均一かどうか、腫瘤と周りの組織(外眼筋、眼球、視神経、眼窩骨壁)との位置関係をみます。副鼻腔や頭蓋内の異常の有無も確認します。
(2)原因菌を同定するために、排膿物や膿瘍から穿刺吸引し、菌培養を行います。
(3)血液検査では白血球数は10.000/mm³以上となることが多く、赤沈、CRPなど炎症反応が高値となります。
治療
症状の進行が早いため、早急に広域抗菌薬を全身投与します。画像診断を行い、培養結果を待ってから抗菌薬の投与を始めるのでは遅すぎる場合もあります。
抗菌薬に反応せず、炎症所見が続いている場合は、膿を排出するような外科的処置も必要となります。副鼻腔、歯周囲の化膿性炎症がベースにある場合は、耳鼻科や歯科で専門的な処置を受ける必要があります。
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