生活習慣病というとすでにご紹介した糖尿病や高血圧などが有名ですが、自覚のない生活習慣病として睡眠時無呼吸症候群が注目を集めています。糖尿病や睡眠時無呼吸症候群をはじめとした生活習慣病の治療を行っている、東林間かねしろ内科クリニック(神奈川県相模原市)院長 金城瑞樹先生と、鶴間かねしろ内科クリニック(神奈川県大和市)院長 朝倉太郎先生にお話しいただきました。
眠っている間の出来事のため本人の自覚がないことが多く、家族など身近な人の指摘がきっかけで検査を受け、病気が発覚するケースも少なくありません。
睡眠時無呼吸症候群の具体的な診断基準について確認してみましょう。
気道での空気の流れが止まった状態が10秒以上続くことを“無呼吸”といいます。この無呼吸の状態が7時間の間に30回以上、もしくは1時間のうちに5回以上確認できれば、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
睡眠時無呼吸症候群は寝ている時に“いびき”が止まるというイメージがありますが、睡眠時無呼吸症候群は、いびきをかくタイプの閉塞性(OSA)と、いびきをかかない中枢性(CSA)のもの、この2種類に分けることができます。
前者の閉塞性のものは、口や鼻から吸い込んだ酸素を肺へと届ける気道がふさがってしまうことがきっかけになって起こります。睡眠時無呼吸症候群の多くはこの閉塞性のものに該当するのですが、原因としては肥満による脂肪のつき過ぎや扁桃の肥大、ほかにも骨格的な要素が含まれていることもあります。骨格が小さい方の場合、少し脂肪がついただけでも気道がふさがれやすくなってしまうのです。
一方、後者の中枢性のものは、脳のコントロールがうまく効かなくなることが原因となります。脳は全身のいたるところに命令を出す、いわば司令塔のような存在ですが、この司令塔に問題があるため呼吸が止まってしまうのです。先にご紹介した閉塞性のように気道に問題があるということではありません。
以前は加齢が病気の発症や進行のカギを握っていると考えられていた生活習慣病ですが、今では患者さんの生活習慣の積み重ねが原因になってきているということ、そして肥満との関連も明らかになってきました。
睡眠時無呼吸症候群は寝ている間に現れる症状なので、無自覚のうちに睡眠時無呼吸症候群になっている患者さんは実は多いと考えられています。そして、該当しているにも関わらず、睡眠時無呼吸症候群のことを知らない方が非常に多いのです。自覚症状が少なく病気の知名度も低い睡眠時無呼吸症候群ですが、日本国内での潜在患者は200万~300万人に上るともいわれている、とても身近な生活習慣病の1つなのです。
ここで一度、睡眠時無呼吸症候群と診断された方に多く見られる症状を確認してみましょう。
・いびきをかいている、もしくはいびきをかいていると指摘されたことがある
・睡眠中に呼吸が止まっていると指摘されたことがある
・苦しくて目が覚める
・夜中にトイレに何度も目が覚める
・口が乾く
・いつも眠気を感じる
・居眠りしてしまう
・倦怠感(だるさ・疲れ)を感じる
・仕事に対して集中することができない
・朝起きたときに頭痛を感じる
ほかにも、高血圧の薬の効果が薄い、心臓に持病がある、肥満・糖尿病と診断された、痛風や脂肪肝であるといった方は、そうでない方に比べてリスクが高くなるといわれています。
症状には個人差がありますが、もしこうした症状に心当たりがある、または家族から指摘されたことがある場合は、一度睡眠時無呼吸症候群の検査を受けることをおすすめしています。
睡眠時無呼吸症候群の治療には症状を緩和させるために行う対症療法と、根本的な原因を取り除く根治療法があります。具体的にはにはCPAP療法・マウスピースの使用、根治療法には外科的手術があります。
寝ている間に無呼吸が起こらないよう、酸素を送るCPAP装置を使って気道に空気を常に送り続けておくことで気道を開く方法のことです。このCPAP療法は睡眠時無呼吸症候群の治療として、日本国内や欧米でもっとも採用されている治療方法です。
CPAP装置を使用した場合と使用しなかった場合を比較したとき、CPAP装置を使用した治療のほうが心筋梗塞や脳卒中などの発症率も減少したデータもあることから、CPAP療法は睡眠時無呼吸症候群に治療に対して非常に効果があるということができるでしょう。 CPAP装置の使用に関しても、事前に主治医や医療機関のスタッフから説明を受けることができます。また、CPAP装置は医療機関を通じてレンタルすることができることもCPAP療法が多く採用される理由の1つです。
東林間かねしろクリニック(神奈川県相模原市)および鶴間かねしろ内科クリニック(神奈川県大和市)でも、睡眠時無呼吸症候群と診断した患者さんに対してこのCPAPによる治療を行っています。
睡眠時無呼吸症候群の症状が軽度のときには、気道を広く保つためにマウスピースを装着する方法もあります。この目的は、無呼吸やいびきを防ぐことです。ただし、マウスピー スの作成の経験があり、睡眠時無呼吸症候群に関する知識を持つ歯科医に依頼する必要があります。
睡眠時無呼吸症候群の原因が閉塞性の場合、気道をふさぐ原因になっている部位を切除することもあります。この時切除するのは扁桃や軟口蓋(のどちんこ)ですが、切除してから数年後に再発する例も少なくありません。
潜在的な方を含めると、日本における睡眠時無呼吸症候群の患者さんは200万~300万人ともいわれています。しかし、この睡眠時無呼吸症候群は治療効果が非常に高い病気です。これまでだるさや集中力の低下を感じていても、睡眠時無呼吸症候群の治療を開始するとこれらの症状が改善された方が非常に多いです。
睡眠時無呼吸症候群は生活習慣病なので、肥満が原因なら肥満の解消をするなど生活の根本的な見直しが必要となり、治療には時間がかかることが多いです。治療には保険が適用されることが多いので、睡眠時無呼吸症候群の自覚症状に心当たりがあるときには、肥満や生活習慣病の治療を専門に行っている医療機関や呼吸器内科での検査を受けることをおすすめします。
鶴間かねしろ内科クリニック 院長
神奈川県内科医学会 幹事、糖尿病対策委員、大和市医師会内科医会 会長、横浜市立大学医学部 臨床教授、東林間/鶴間 かねしろ内科クリニック 理事長、杏林堂クリニック 院長
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