精巣(睾丸)に腫瘍が発生する精巣腫瘍は男性特有の病気で、乳幼児や20~30歳代によくみられます。精巣に腫瘍ができると徐々に精巣の腫れやしこりが生じ、進行するとリンパ節や肺などの臓器に転移することがあります。比較的短期間のうちに転移することが多いため、精巣の腫れやしこりを自覚したら早めに検査を受けることが大切です。
では病院を受診すると、どのような検査が行われるのでしょうか。
精巣腫瘍における検査の目的は、精巣腫瘍の有無やほかの病気との鑑別に加えて、組織型や転移の有無を調べ、治療方針を決定することです。
精巣腫瘍の主な症状は精巣の腫れやしこりですが、陰嚢水腫や精液瘤、精巣上体炎、精巣炎、精巣捻転といったほかの病気でも似たような症状が出る場合があります。たとえば、陰嚢水腫では陰嚢(精巣を包む袋)が膨らむようになりますが、検査をすることでどこが腫れているか、しこりがあるかが分かります。
また、精巣腫瘍はほとんどが悪性といわれています。悪性の精巣腫瘍は大きくセミノーマと非セミノーマの2つの組織型に分けられ、セミノーマは放射線治療による効果が高く、非セミノーマは効果が低いという特徴があります。そのため、治療方針を決定するうえで、進行度(病期)と共に組織型を把握することが重要です。
精巣腫瘍の主な検査として、触診、エコー検査、血液検査、X線検査、CT・MRI、病理検査があります。
一般的に、精巣腫瘍であるかを診断するために触診、エコー検査、MRI、血液検査が行われ、転移しているかを調べる目的でX線検査、CTが行われる場合があります。病理検査では組織型を含めた腫瘍の詳細が分かり、この検査によって診断が確定します。
触診とは、医師が患部を直接手で触って調べる検査のことです。陰嚢や精巣を触って診察し、精巣そのものに腫れやしこりがあるかを確認します。
超音波を用いて体内の様子を観察する検査をエコー検査と呼びます。超音波を発するプローブという装置を陰嚢部分に当て、精巣に腫瘍があるかを確認します。しこりの有無や場所を把握できるため、精巣腫瘍と似た症状が現れる陰嚢水腫や精液瘤といったほかの病気との鑑別に役立ちます。
精巣腫瘍の主な組織型に、精上皮腫(セミノーマ)、胎児性がん、卵黄嚢腫、絨毛がん、奇形腫があります。このうち精上皮腫のみで構成されるものをセミノーマ、それ以外の組織型(単一型あるいは複合型)を非セミノーマと呼びます。悪性腫瘍の一部では、その存在や活動性を示す特定の物質(腫瘍マーカー)が血液中や尿中などに増えるようになります。
精巣腫瘍の腫瘍マーカーはAFP(アルファ胎児性蛋白)、hCG(ヒト縦毛性ゴナドトロピン)、LDH(乳酸脱水素酵素)の3つで、AFPは胎児性がん、卵黄嚢腫、奇形腫、hCGは精上皮腫の一部、胎児性がん、絨毛がんで増加します。LDHは精巣腫瘍以外の悪性腫瘍などでも増加しますが、精巣腫瘍の活動性を示すよいマーカーとなるため、血液検査でAFP、hCG、LDHの数値を調べます。
X線検査は、X線を体に当てて体内の様子を観察する検査です。精巣腫瘍は肺などの臓器に転移することがあるため、胸部X線検査で肺を中心とした臓器に転移があるかを調べます。
CTはX線を使用して体の断面を撮影する検査です。腹部や胸部を撮影し、リンパ節や肺などほかの臓器に転移しているかを確認します。
精巣腫瘍が疑われる場合に手術で精巣を摘出し、腫瘍細胞を顕微鏡で確認して腫瘍の形態(良性か悪性か、組織型は何か)を調べます。精巣腫瘍はセミノーマと非セミノーマでその後の治療法が異なるため、CTなどによる全身の検査に先だって手術を行うことがあります。病理検査は手術による外科的な検査であるため、通常は精巣腫瘍の治療も兼ねて行います。
このような検査によって、治療方針を決定するうえで重要となる病期が分かります。精巣腫瘍の病期は大きくI期~III期に分類され、III期がもっとも進行している状態です(日本泌尿器科学会病期分類)。また、検査でセミノーマか非セミノーマのどちらの組織型であるかが判明し、病期や組織型に応じて治療方針が決定します。
I期では手術のみで経過観察することが多く、II期以上では抗がん剤による化学療法が中心となります。そのほかの治療として、放射線治療や後腹膜リンパ節郭清もありますが、どちらを行うかは組織型によって異なります。
放射線治療はセミノーマに対する効果が高いため、I期の再発・転移の予防や、II期の比較的小さなリンパ節転移に対して行われることのある治療です。後腹膜リンパ節を外科的に摘出する後腹膜リンパ節郭清は、非セミノーマの後腹膜リンパ節転移に対して行われる場合があります。
精巣腫瘍の典型的な症状は精巣の腫れやしこりで、痛みがないことが多く、痛みがあったとしても軽度または違和感がある程度です。このような症状はほかの病気でもみられることがありますが、恥ずかしさなどから受診が遅れてしまいがちです。精巣が大きくなっている、精巣の大きさに左右差があるなど、何らかの異変を感じたら早めに泌尿器科を受診し、検査を受けるとよいでしょう。
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