
結核を治療するときには、完治するまで入院していなければならないわけではありません。排菌していない(菌を外に出していない)状況になれば、入院は不要になります。それでも、退院後も結核の薬を長期間きちんと飲み続けなければなりません。きちんと薬を飲み続けていくための工夫として、「DOTS」というものがあります。DOTSとはどのようなもので、どのようなパターンがあるのでしょうか。国立国際医療研究センター病院呼吸器科の高崎仁先生にお話をお聞きしました。
※「国立国際医療研究センター病院」は、 2025年4月より「国立国際医療センター」に名称変更しています。
DOTS (ドッツ)とは直接服薬確認療法(directly observed treatment short-course)のことをいいます。具体的にご説明すると、「医療従事者によって患者さんが薬を飲むのを目の前で確認すること」となります。これにより、治癒までの経過も観察できます。また、適切な容量の薬を内服していることも確認します。
結核は基本的に、きちんと6ヶ月以上薬の内服を続ければ、完全に治すことができます。ただし、症状がなくなってしまうことがあり、それにより内服をやめてしまうケースがよくあります。
治療の途中で内服をやめることはとても危険なことといえます。治療が適切にできなくなることはもちろんですが、もうひとつの理由は耐性菌を出現させてしまうからです。結核菌が耐性菌(抗生物質などに耐性を持ち、効かなくなってしまう菌)になってしまうと治療が難航します。さらにはほとんどの抗生物質が効かない多剤耐性菌(たざいたいせいきん)になることもあります。このような危険を防ぎ、治療を完璧にするためにDOTSがあります。
DOTSには様々なパターンがあります。たとえば入院DOTSとは、看護師さんが薬を毎日持ってきて、目の前でそれを飲んでもらう方法です。これは比較的分かりやすいと思います。
一方、外来DOTSは通院している患者さんを対象にしており、さまざまなケースがあります。患者さんが施設に暮らしている場合には施設の職員が対応します。全く飲めないような方、たとえば患者さんがホームレスの方で管理が全くできない場合には、毎日保健所職員が患者さんのところに行って飲ませるケースすらあります。その他にも、通院DOTS(病院に行って飲む)、薬局DOTS(薬局に来て飲む)などさまざまなケースがあります。
厳密に述べれば、直接飲んでもらうシーンを見て確認することだけがDOTSではありません。本人と家族がしっかりしていて、きちんと管理ができている場合には月に1回の「メールDOTS」というものもあります。とにかく薬を飲むことを途切れさせないことが大切なのです。
このように、結核の治療を継続できるようにするための様々な工夫がなされています。
国立国際医療研究センター 呼吸器内科
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