インタビュー

耳下腺腫瘍の病理学的悪性度と臨床的悪性度の関係、および病期分類

耳下腺腫瘍の病理学的悪性度と臨床的悪性度の関係、および病期分類
別府 武 先生

埼玉県立がんセンター 頭頸部外科 科長兼部長

別府 武 先生

この記事の最終更新は2016年01月19日です。

耳下腺腫瘍の治療方針を検討する上で重要な悪性度分類やステージ分類はどのように決められているのでしょうか。頭頸部外科の第一人者である埼玉県立がんセンター頭頸部外科部長の別府武先生にお話をうかがいました。

耳下腺腫瘍をはじめとする唾液腺腫瘍は、その病理組織型が多岐にわたることが知られています。2005年のWHO分類では良性が10種類、悪性は23種類に分類されています。しかし、臨床の現場でより重要なことは、これらの病理組織型それぞれを熟知することではなく、治療する患者さん一人ひとりの臨床的な悪性度を手術前によく検討して手術計画を立て、患者さんに十分理解していただくことです。加えて、手術によって確認された腫瘍の悪性度や組織型に基づいて補助的な治療を追加し、顔面神経麻痺などの合併症に対しても、機能の再建を含めて治療を行います。

唾液腺がんの病理組織型は悪性度によって次の表のように分類されます。そして臨床的悪性度も高悪性度・中間型悪性度・低悪性度の3つに分類され、病理学的悪性度のそれとよく一致します。

低悪性度

腺房細胞がん

粘表皮がん(低悪性度)

多型低悪性度腺がん

上皮筋上皮がん

明細胞がんNOS

基底細胞腺がん

嚢胞腺がん

粘液腺がん

腺がんNOS(低悪性度)

多形腺腫由来がん(非浸潤型・微小浸潤型)

転移性多形腺腫

唾液腺芽腫

中間型悪性度

 

粘表皮がん(中間型悪性度)

腺様嚢胞がん(篩状型・管状型)

脂腺がん

腺がんNOS(中間型悪性度)

筋上皮がん

リンパ上皮がん

高悪性度

 

粘表皮がん(高悪性度)

腺様嚢胞がん(充実型)

オンコサイトがん

唾液腺導管がん

腺がんNOS(高悪性度)

多形腺腫由来がん(浸潤型)

がん肉腫

扁平上皮がん

小細胞がん

大細胞がん

(引用:長尾俊孝 唾液腺の病理 日耳鼻 112: 601-608, 2009)
粘表皮がんや腺様嚢胞がん、腺がんNOSなどのように、同じ病理組織型であっても低悪性度〜高悪性度までそれぞれの悪性度を示すバリエーション(下線で示したもの)を持つものがあるため注意が必要です。

TNM分類:以下のT・N・Mの組み合わせによってがんの進行度(ステージ)をI〜IV期に分類します。

  • TX:原発腫瘍の評価ができない
  • T0:原発腫瘍が認められない
  • T1:腫瘍の大きさが2cm以下で、実質外進展なし
  • T2:腫瘍の大きさが2cmをこえるが4cm以下で、実質外進展なし
  • T3:腫瘍の大きさが4cmをこえる、または実質外進展を伴う
  • T4a:腫瘍の浸潤範囲が顔面神経または皮膚・下顎骨・外耳道に及んでいる
  • T4b:腫瘍が頸動脈を全周性に取り囲む、または腫瘍の浸潤が頭蓋底や翼状突起に及んでいる

※実質外進展とは、臨床的または肉眼的に軟部組織に浸潤しているものをいいます(T4aおよびT4bで示した組織への浸潤は除く)。ただし、顕微鏡的な証拠のみでは臨床分類上、実質外進展とはなりません。
 

  • NX:所属リンパ節への転移が評価できない
  • N0:所属リンパ節への転移がない
  • N1:原発腫瘍と同じ側の単発性リンパ節転移で、大きさが3cm以下、かつ節外浸潤なし
  • N2a:原発腫瘍と同じ側の単発性リンパ節転移で、大きさが3cmを超えるが6cm以下、かつ節外浸潤なし
  • N2b:原発腫瘍と同じ側の多発性リンパ節転移で、大きさが6cm以下、かつ節外浸潤なし
  • N2c:両側または原発腫瘍と反対側のリンパ節転移で、大きさが6cm以下、かつ節外浸潤なし
  • N3:リンパ節転移の大きさが6cmを超える、かつ節外浸潤なし
  • N3b:単発性または多発性転移で臨床的節外浸潤あり
  • M0:遠隔転移なし
  • M1:遠隔転移あり
 
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