概要
肥厚性皮膚骨膜症とは、指先が太鼓バチのように太くなる「バチ指」、長管骨を中心とした骨膜性の骨肥厚、皮膚が厚くなる、といった症状で特徴付けられる病気のひとつです。SLCO2A1やHPGDと呼ばれる遺伝子の異常によって、「プロスタグランジンE2」と呼ばれる物質が体内に多く蓄積することで病気が発症すると考えられています(2019年時点)。
肥厚性皮膚骨膜症は難病指定を受けている病気のひとつで、100名に満たない患者数が国内にいると推定されています。また、男性に多いことも疫学的な特徴として挙げることができます。肥厚性皮膚骨膜症に対して根本的な治療方法は存在せず、症状に応じた対症療法が中心となります。
原因
肥厚性皮膚骨膜症は、SLCO2A1やHPGDと呼ばれる遺伝子に異常が生じることによって発症します。
SLCO2A1やHPGD遺伝子は、どちらもプロスタグランジンE2の代謝にかかわるタンパク質をつくっています。プロスタグランジンE2は発熱や骨吸収などに関係したはたらきがある物質で、細胞の外から中に取り込まれる必要があります。しかし、SLCO2A1遺伝子に異常があると、細胞内にプロスタグランジンE2がうまく取り込まれなくなります。また、HPDG遺伝子に異常があると、プロスタグランジンE2の分解が障害を受けることになります。
このどちらの遺伝子異常であっても同様にプロスタグランジンE2が体内で蓄積する結果に至ります。プロスタグランジンE2は、健康な体であっても存在する物質ではありますが、過剰に存在することで病的な意義が見られると考えられています。
肥厚性皮膚骨膜症は、「常染色体劣性遺伝」といった遺伝形式をとります。人の細胞の中にSLCO2A1やHPGD遺伝子はそれぞれ2組、父親と母親からそれぞれひとつずつ受け継いでいます。ひとつの遺伝子(たとえばHPGD遺伝子)に異常が存在する場合、残りのひとつが正常な酵素機能を代償することができるため、病気を発症することはありません。一方、両親ともがひとつずつ異常なHPGD遺伝子を持っている場合、理論的に25%の確率でお子さんが異常なHPGD遺伝子を2つ持つことになり、結果として病気を発症します。そして、50%の確率でお子さんが病気の保因者になります。
症状
肥厚性皮膚骨膜症は、以下の3つが主要症状です。
- バチ指
- 骨膜性骨肥厚
- 皮膚肥厚
しかし、これらの症状がすべて揃うとは限りません。
バチ指とは、太鼓のバチのように指の先が分厚くなる状態であり、外見的な特徴が似ていることがその名前の由来です。骨膜性骨肥厚は、腕や足の長い骨に見ることが多く、骨皮質と呼ばれる部分が厚くなっている状態のことです。さらに、頭の皮膚が分厚くなり、脳のしわのような外見を見ることも特徴です。肥厚性皮膚骨膜症はほとんどが男性に見る病気であり、こうした症状が思春期を境に現れはじめます。
そのほか、ニキビ、汗が多い、関節痛、十二指腸潰瘍などの症状を伴うこともあります。眼瞼下垂や脂漏性皮膚炎などの症状が見られることもあります。
検査・診断
肥厚性皮膚骨膜症では、バチ指ならびに皮膚肥厚は外見から見てわかる症状です。骨膜性骨肥厚を確認するために、症状の現れやすい長管骨を対象としたレントゲン写真を撮影します。また、肥厚性皮膚骨膜症は遺伝子の異常に関連して発症する病気であることから、同遺伝子異常を検索するために遺伝子検査が行われます。
肥厚性皮膚骨膜症と同様に骨が分厚くなる病気はいくつも存在しています。たとえば、チアノーゼを伴う心疾患でもバチ指がみられることがありますので、これを除外するために心臓の超音波検査が行われます。そのほかにも肺がん、サルコイドーシス、アミロイドーシス、クローン病、甲状腺機能亢進症などでも類似した症状が見られることがあるため、肥厚性皮膚骨膜症との鑑別をする検査が行われることがあります。
治療
肥厚性皮膚骨膜症に対しての根本的な治療方法は存在しません。肥厚性皮膚骨膜症では骨の代謝が異常を受けている状況であることから、骨に働きかけるビスホスホネートと呼ばれる薬剤を使用することがあります。また、関節の痛みが問題になることも多く、コルヒチンと呼ばれる薬剤が使用されることもあります。
顔面を中心とした皮膚肥厚が強くなると、眼瞼下垂などの機能的な障害や美容的な影響も生じるようになります。こうしたことに対応するために、形成外科的アプローチがとられることもあります。そのほか、汗が多いという症状に対して、神経切除という手術的な方法が選択されることもあります。
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