インタビュー

スポーツ脳振盪をどのように判断すればよいか

スポーツ脳振盪をどのように判断すればよいか
前田 剛 先生

日本大学 医学部脳神経外科/麻酔科 准教授、日本大学医学部附属板橋病院 麻酔科 科長

前田 剛 先生

この記事の最終更新は2016年04月26日です。

プロ選手以外においては、学校、友人同士、地域などの各団体に所属してスポーツを楽しむ方がほとんどです。私たちは脳振盪をどのように判断すればよいのでしょうか。日本大学医学部脳神経外科准教授前田剛先生に脳振盪の定義と判断の目安についてうかがいます。

脳振盪を判断する前に、まずは意識障害とマヒの有無を確認する必要があります。

もしこの2つの症状があった場合、ただちに病院に搬送する必要があります。意識障害のない脳振盪が9割であることから、意識障害やマヒがあれば脳振盪よりも重症な硬膜下血腫や頸椎損傷が起きている可能性があるからです。首を固定し救命処置をしながらただちに救急車を呼んで、CTの撮れる病院へ搬送してください。

<急性期>

1 意識消失

2 精神活動・認知機能の障害

 (ア)記憶力障害(逆行性健忘、外傷後健忘)

 (イ)失見当識

 (ウ)反応時間の低下(霧の中にいるような感じ)

 (エ)易刺激性

3 平衡感覚障害

4 種々の自覚症状

 (ア)頭痛めまい、耳鳴り、複視

 (イ)睡眠障害など

<継続期>

1 軽度の頭痛の継続

2 易疲労性・悪心

3 音声や光に対する過敏性

4 視覚障害

5 耳鳴り・めまい

6 注意力と集中力の低下

7 記酩力障害

8 易刺激性

9 不安や抑うつ状態

10 睡眠障害

急性期とは、非常に激しい衝突などで、その場で意識を失ったり嘔吐したり、何らかの脳振盪の症状が現れることをいいます。この場合、意識を失う、嘔吐、複視に見えるなどわかりやすい症状であるため「脳振盪だ」とすぐに判断することができるでしょう。

通常、受傷から10日前後で症状が消えますが、ときに脳振盪を起こしてから3週間を超えて症状が残ることもあります。急性期の症状と比較すると、集中力の低下や睡眠障害など、ふだん健康な状態でも起こりうる症状のように見えます。特に、小児や若年者ではこの期間が長引く特徴がありますので、軽い症状だからと報告を遠慮したり、軽視して見過ごしてしまいやすいと認識することが重要です。急性期とは、非常に激しい衝突などで、その場で意識を失ったり嘔吐したり、何らかの脳振盪の症状が現れることをいいます。この場合、意識を失う、嘔吐、複視に見えるなどわかりやすい症状であるため「脳振盪だ」とすぐに判断することができるでしょう。

スポーツによる脳振盪の評価には、国際スポーツ脳振盪会議が提唱する「SCAT(Sports Concussion  Assessment Tool)」を適応するのが望ましいでしょう。

脳振盪はあらゆる症状をきたすため、非医療従事者が現場で判断することが難しく、医療の知識を持たない方が正しく評価することは難しいでしょう。そのため簡単な基準やすべての条件を網羅したガイドラインは存在しませんが、国際的に合意が得られた指針が「SCAT」です。

現在、2012年に発表された「SCAT3」が一般的に使用されていますが、公式の日本語訳がついた最新版が近日中に発表される予定です。

また、5歳~12歳の児童を対象とした「Child-SCAT3」も発表されています。日本ラグビー協会や日本サッカー協会のウェブサイトなどから閲覧することが可能です。

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