すいのうほうせいしゅよう

膵嚢胞性腫瘍

最終更新日:
2021年07月27日
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2021/07/27
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概要

膵嚢胞性腫瘍(すいのうほうせいしゅよう)とは、膵臓(すいぞう)の内部や周辺に発生する“袋状”の病変のことを指します。袋の内部は液体で満たされており、症状もなく治療する必要がないものもあれば、悪性化する可能性のあるものやホルモンの分泌異常を引き起こすものなど、手術などによる治療をしなければならないものも少なくありません。

膵嚢胞性腫瘍は、膵臓の炎症や外傷によって発生するものもある一方、炎症とは関係なく膵臓で産生される膵液を十二指腸まで流す“膵管”の粘膜から発生するものもあります。特に、膵管の粘膜から発生する膵嚢胞性腫瘍には、“膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)”や“粘性性嚢胞腫瘍(MCN)”、“漿液性嚢胞腫瘍(SCN)”などさまざまなタイプのものがあります。

これらの膵嚢胞性腫瘍は、2~3%の人が発症しているとの報告もあり、決して珍しい病気ではありません。さらに年齢を重ねるごとに発症率が上昇するのも特徴であり、80歳以上では約10%の人に見られるとされています。しかし、発症したとしても約8割は何も症状がなく、健康診断などで偶然発見されるケースも多いのが現状です。

原因

膵嚢胞性腫瘍は大きく分けると、炎症などの刺激によって発生するものと刺激に関係なく発生するものがあります。

炎症などの刺激によって発生する膵嚢胞性腫瘍としては、膵炎(すいえん)外傷の後に発生する“仮性膵嚢胞”が挙げられます。仮性膵嚢胞は、ダメージを受けた膵臓の組織が袋状になり、その内部は壊死(えし)した組織などを含む液体で満たされるのが特徴です。

一方、炎症などの刺激に関係なく発生するものとしては、上で述べたような膵管の粘膜から発生する腫瘍が挙げられます。明確な発生メカニズムは解明されていませんが、慢性膵炎、肥満、アルコールの多飲など長年にわたる膵臓への負担が発症リスクになると考えられています。

そのほか、まれな病気として、膵臓にはインスリンやガストリンなどのホルモンの過剰分泌を引き起こす“膵神経内分泌腫瘍(PNET)”が発生することがあります。この病気も膵臓に袋状の腫瘍を形成することが知られており、遺伝子の異常が発生に関与していることが示唆されています。

症状

膵嚢胞性腫瘍は、どのようなタイプかによって症状が大きく異なるのが特徴です。

仮性膵嚢胞がん化することはなく、サイズが小さな場合は自覚症状がほとんどないとされています。発症したとしても自然に消えることも少なくありません。しかし、内部に液体がたまり続けて巨大化するとお腹や背中の痛み、腹部膨満感、細菌感染などを引き起こします。また、嚢胞が破裂すると消化酵素を含む膵液がお腹の中に漏れ出すため、周辺の臓器や血管などに大きなダメージを与えて重篤な状態になることもあります。

一方、膵管の粘膜から発生する嚢胞も多くは自覚症状がないとされています。ですが、膵管が詰まって膵液が膵臓内に停滞した状態となると膵炎を引き起こし、腹痛や発熱、黄疸(おうだん)などの症状が現れます。また、がん化する可能性もあるため注意深く経過を見ていくことが必要です。

そして、膵神経内分泌腫瘍はホルモンの異常分泌が生じ、低血糖、難治性の胃潰瘍(いかいよう)などを引き起こします。

検査・診断

膵嚢胞性腫瘍は健康診断などで偶然発見されることが多い病気ですが、診断のためには次のような検査が行われます。

血液検査

病状を把握するため、膵臓の機能に関連するアミラーゼ値、ホルモン値などを調べる目的で血液検査が行われます。また、膵炎などを合併していることが疑われる場合は、炎症の程度などを評価するために実施されるのが一般的です。

画像検査

嚢胞の大きさや位置、周辺臓器への影響などを評価するため、CTやMRIなどの画像検査が行われます。特に手術を検討する場合は正確な大きさや位置などの情報を得る必要があるため、嚢胞などの病変が描出されやすくなる“造影剤”を注射して画像検査を行う造影CT検査や造影MRI検査などが行われます。

また、膵管の粘膜から発生する嚢胞の一種である膵管内乳頭粘液性腫瘍は、ほかの臓器にがんを合併するケースが多いとされています。そのため、全身のCT検査や胃・大腸内視鏡検査を行って他臓器のがんの有無を調べることをすすめる医療機関も少なくありません。

ERCP検査

上部消化管内視鏡(胃カメラ)を用いて、十二指腸の奥にある膵管の出口から造影剤を注入して膵管の閉塞(へいそく)の有無などを調べる検査です。また、膵液を採取して内部に含まれる細胞を顕微鏡で詳しく観察することで、がん化の可能性を評価することもできます。

治療

膵嚢胞性腫瘍は症状がなく、がん化する可能性がない場合は原則的に治療を行う必要はありません。しかし、嚢胞が大きく破裂する可能性がある場合やがん化する危険がある場合は、手術によって嚢胞を切除する必要があります。特に、膵管の粘膜から発生する嚢胞ががん化する可能性があるものも多く、嚢胞のサイズや膵管の太さ、症状などから総合的にがん化リスクを判断して手術の適応を決めていきます。薬物治療・放射線治療などは無効とされています。

一方、がん化するリスクがない仮性嚢胞の場合は、上部消化管内視鏡を用いて嚢胞内に管を通し、内容物を排出する治療が行われることもあります。この治療法は手術よりもはるかに体への負担が少ないため、広く行われています。

予防

膵嚢胞性腫瘍の明確な発症メカニズムは、はっきりと分かっていない部分も多くありますが、基本的には膵臓の炎症、高脂肪食やアルコール多飲などによる膵臓への過剰な負担などがリスクとなります。そのため、膵嚢胞性腫瘍を予防するにはアルコールの多飲は避け、適正カロリーを遵守した栄養バランスのよい食事を心がけることが大切です。

また、膵嚢胞性腫瘍が発見され治療の必要はないとされた場合でも、定期的な検査を受けて嚢胞の拡大など病状に変化がないかチェックするようにしましょう。

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