やくどくぶつちゅうどく

薬毒物中毒

俗称/その他
薬物中毒
最終更新日:
2025年03月04日
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2025/03/04
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概要

薬毒物中毒とは、薬剤や化学物質などの薬物の作用が過剰に現れ、けいれんや手指の震えから意識障害まで、さまざまな症状が引き起こされる状態のことです。中世スイスの医師で「毒性学の父」と知られるパラケルススは、「すべてのものは毒であり、毒でないものなど存在しない。服用量こそが毒であるか、そうでないかを決めるのだ」という有名な言葉を残しています。この言葉が示すように、私たちの身の回りに存在する地球上の物質は、摂取量や接触量次第で人体に悪影響を及ぼすことがあり、中毒を引き起こす場合もあります。ただし、中毒は原因物質や摂取量によって異なり、症状の現れ方もさまざまです。

また、薬毒物中毒は、一度にたくさんの薬物を摂取することで起こるとは限りません。摂取量が正しくても併用している治療薬や体調、食べ物などによって血中の薬物の成分濃度が高くなると、薬毒物中毒を引き起こすことがあります。

薬毒物中毒は2種類に分けられ、一時的に薬毒物の血中濃度が高くなって起こる“急性薬毒物中毒”と、長期間にわたって薬毒物の過剰摂取を繰り返すことで、慢性的にさまざまな症状を引き起こす“慢性薬毒物中毒”があります。

急性薬毒物中毒は、即座に適切な治療を行うことで症状の改善が期待できますが、ときに命に関わることもあります。また、慢性薬毒物中毒では薬物の摂取を中止しても症状が改善しないことがあり、症状が悪化するケースもあるため注意が必要です。

原因

急性薬毒物中毒の場合

医師や薬剤師によって指示された用法・用量よりも多くの薬を使用すると、一時的に薬の有効成分の血中濃度が高まり、中毒症状を引き起こすことがあります。特に子どもや高齢者では薬の飲み方を誤ってしまい、急性薬毒物中毒が起こることも考えられるため注意が必要です。子どもが成人用の薬を1錠でも誤って服用すると、重い症状を引き起こす危険性がある薬もあるため、注意が必要です。

また、用法・用量を守って薬を服用していても、同時に服用している別の薬や飲み方、体調によって急性薬毒物中毒が引き起こされることもあります。

このほか、洗剤や殺虫剤などの化学物質を取り込むことによっても薬毒物中毒は起こります。誤飲のほか大気中の化学物質を誤って吸い込んでしまったり、薬毒物を皮膚から吸収したりして中毒症状が引き起こされることもあるため、化学製品の取り扱いには十分注意しましょう。さらに、アルコールの一気飲みや、違法薬物の使用によっても急性薬毒物中毒が引き起こされるケースがあります。

慢性薬毒物中毒の場合

薬や化学物質の乱用を続けたり、環境中の薬毒物に長期間曝露されたりすることで、結果として慢性薬毒物中毒の状態に陥ることがあります。慢性薬毒物中毒が起こると、原因となる薬毒物の摂取を中止しても長期にわたって中毒症状が現れ続ける場合もあります。

症状

薬毒物中毒の症状は、原因となる薬毒物の種類と摂取量によってさまざまです。

急性薬毒物中毒の場合

重症の急性薬毒物中毒では意識障害、けいれんなどの重篤な症状が引き起こされることがあり、中には命に関わるケースもあります。

意識状態を悪くする作用のある薬毒物や筋肉の緊張を緩める作用がある薬毒物が原因の場合には、胃の内容物が逆流して誤嚥(ごえん)を引き起こし、窒息誤嚥性肺炎などのリスクが高まります。さらに、薬毒物によっては低血圧によるショック状態や異常な高血圧不整脈などが引き起こされる可能性もあります。

そのほか、けいれん、手指の震え、吐き気・嘔吐、動悸、めまい、視野の異常といった幅広い症状が引き起こされます。どんな薬毒物による中毒症状かによって症状に幅があり、一括りに急性薬毒物中毒といっても症状から原因を推定することは困難です。

慢性薬毒物中毒の場合

違法薬物などによる慢性中毒では、幻覚や妄想状態を主な症状とする精神病性障害や、認知障害のほか、さまざまな臓器障害なども引き起こされます。また不眠や不安感、何をしてもやる気がみられない“無動機症候群”や人格の変化などがみられる場合もあり、社会生活に影響を及ぼすことも少なくありません。

これらの違法薬物による慢性中毒の症状は原因薬物の使用を中断しても改善されず、慢性的に中毒症状が続くといわれています。また、原因薬物の摂取中止後に症状が悪化したり、精神症状が後遺症として生じたりするケースもみられるため、経過を注意深く観察することが重要です。

検査・診断

薬毒物中毒によって引き起こされる症状はさまざまなため、症状のみで原因となる薬毒物を特定するのは困難です。適切な治療を行うため、発症時の状況や薬毒物の使用状況などを患者本人や家族、周囲の人に詳しく聞くこともあります。

また薬毒物を特定する際には、尿検査キットによる簡易的な薬毒物検査を行うこともあります。加えて肝機能や腎機能など全身の状態を評価したり、原因として疑われる薬毒物の血中濃度を調べたりするために、血液検査が行われることもあります。なお、薬毒物中毒では不整脈誤嚥性肺炎などの合併症を引き起こすこともあるため、必要に応じて心電図検査や画像検査などが行われる場合もあります。

治療

薬毒物中毒の治療においては、まず中毒症状を緩和することを優先に行います。意識が低下している場合や呼吸状態が悪化している場合には、酸素の投与や呼吸補助を行います。また、血圧の低下が見られる場合には、血圧を上げる薬の投与や点滴を行い、全身状態を安定させる救命処置を実施します。

これらの一般的な救命処置に加えて、薬毒物中毒に対しては以下のような中毒特有の治療が行われることがあります。

  • 胃や腸の中に入った薬が吸収されるのを防ぐ治療
  • すでに血液中に入ってしまった薬を早く体外に排泄させる治療
  • 薬毒物の作用を無効にする拮抗薬の投与

非常に危険な薬毒物を服用してからまだあまり時間が経っていない場合には、胃洗浄を行います。胃にチューブを挿入し内容物を排出させる胃洗浄は、意識障害がある場合には誤嚥のリスクになり得ます。また胃洗浄を行うことで急性薬毒物中毒の治療に役立つというエビデンスも乏しいため、近年では重症例に限って実施されています。またそのほかにも、胃の中にある薬毒物が吸収されないように薬毒物を吸着して便からの排出を促す活性炭の注入が行われることもあります。

特定の薬毒物に対しては血液透析が効果的な治療となることがあります。これは、すでに血液中に吸収された薬毒物を体外に効率的に除去することができ、排泄を促進するためです。ただし、この治療法の適応は、原因となる薬毒物の種類や重症度を慎重に評価したうえで判断されます。ほとんどの薬毒物には拮抗薬はありませんが、原因となる薬毒物の作用を打ち消す拮抗薬が開発されている場合は、中毒の治療に使用されることもあります。

一方、覚せい剤や大麻などの違法薬物をはじめとする慢性薬毒物中毒の場合は、薬物の摂取を中断したからといって症状がすぐに消失・改善するわけではありません。精神症状を改善するための薬物療法などが必要となり、徐々に症状が改善する場合もありますが、中には症状が悪化していくケースもあります。また中毒症状がみられなくなっても、薬物依存そのものが治るわけではありません。中毒症状が再発しないよう、薬物依存に対する継続的な治療が必要です。

予防

薬毒物中毒の予防には、薬毒物を使用する際に使用法などを正しく守ることが非常に大切です。新しく薬物を処方してもらう際には、ほかの薬物や食べ物の影響で薬毒物中毒が引き起こされることもあるため、お薬手帳を提示したり、アレルギーの有無を伝えたりして、医師や薬剤師の指示にしたがって正しく服用するよう心がけましょう。

なお、故意に大量の薬物を内服する可能性がある場合は、家族や医師と薬物の保管方法を話し合うことが推奨されます。また、洗剤や殺虫剤などの化学製品を誤って飲み込んでしまうことがないよう、子どもや高齢者の手が届かない場所に保管し、使用上の注意をよく守ることも大切です。

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