適応
遺伝子治療の対象となる病気は多岐にわたるため、ここでは日本で遺伝子治療が認められている主な病気(2024年2月時点)を取り上げます。なお、遺伝子治療の導入が検討されている病気はほかにも数多く存在し、研究・開発が続けられています。
脊髄性筋萎縮症(SMA)
脊髄の神経細胞にあるSMN1という遺伝子が変異することで、進行とともに筋肉が萎縮する病気です。日本では2020年からオナセムノゲン アベパルボベクという遺伝子治療が導入されています。この遺伝子治療では、SMN1遺伝子を組み込んだ治療薬を点滴注射することで症状の進行抑制が期待できます。
脊髄性筋萎縮症に対しては、現在、遺伝子治療薬を含めた3種類の薬剤があり、患者それぞれの年齢や状況に応じて検討します。
慢性動脈閉塞症
手足の先端の血管が詰まって血流が悪くなることにより、最終的に細胞が壊れる病気です。慢性動脈閉塞症の治療法としては、薬物療法をはじめ、血管に細い管を入れて狭まった血管を押し広げる“血管内治療”、代わりの血管を新たに作る“バイパス手術”、そして“遺伝子治療(2019年に導入)”があり、血管が細くなっている位置や形状に応じて治療法を検討します。
慢性動脈閉塞症における遺伝子治療とは、血管の再生を促進する遺伝子を作成し、それを筋肉に注射で投与することで、血流改善などを期待するものです。特に治りにくい潰瘍のある人やほかの治療が困難な人を対象に検討されます。
急性リンパ芽球性白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫
血液のがんでは、2019年より“CAR-T細胞療法”と呼ばれる遺伝子治療が行われています。血液がんの治療法は病気の進行度などによって異なりますが、一般的に抗がん薬(化学療法)や分子標的薬などを使った薬物療法、病変への放射線療法、また化学療法や分子標的薬で治療が不十分な場合には造血幹細胞移植*を検討します。CAR-T細胞療法は、難治性の急性リンパ芽球性白血病、悪性リンパ腫および多発性骨髄腫に対して検討される治療法で、遺伝子技術で改変した患者のT細胞を体内に注入することで、がん細胞を特異的に攻撃します。
*造血幹細胞移植:白血球や赤血球などの基となる造血幹細胞を点滴で注入する治療法。患者自身の造血幹細胞を使う“自家造血幹細胞移植”と、ドナーから提供された造血幹細胞を使う“同種造血幹細胞移植”の2種類がある。一般的に急性リンパ芽球性白血病では同種造血幹細胞移植を、悪性リンパ腫と骨髄腫では自家造血幹細胞移植を行う。
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