ちょうさしぼうさんたいしゃいじょうしょう

長鎖脂肪酸代謝異常症

最終更新日:
2025年01月31日
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2025/01/31
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概要

長鎖脂肪酸代謝異常症とは、生まれつき「長鎖脂肪酸」を体内で代謝する過程に異常があることで発症する病気です。

私たちには、空腹時に脂肪をエネルギーとして利用する仕組みが備わっています。脂肪は、主に皮下脂肪や内臓脂肪として体内に蓄えられています。その脂肪の構成要素の1つである長鎖脂肪酸は、バターやラードなど、一般的な油脂にも含まれる脂肪酸です。

長鎖脂肪酸代謝異常症は、この長鎖脂肪酸を分解する過程に必要な酵素が生まれつき不足していることが原因で発症します。現在のところ、長鎖脂肪酸代謝異常症は不足する酵素の種類によって20種類以上あることが分かっています。

糖質を摂取しても体内で脂肪に変換され蓄積されるため、この病気の患者は単に脂肪を食べなければよいというわけではありません。この病気では、蓄積された脂肪を空腹時にエネルギーとして利用する過程に障害があり、その結果として低血糖を引き起こします。そのため、脂肪の摂取や蓄積を減らすことよりも、空腹状態を避けることが重要です。細胞内のエネルギーが失われると、重症の場合には意識障害、けいれん、心停止などが生じ、突然死の原因になるため注意が必要です。

種類

長鎖脂肪酸代謝異常症は、不足する酵素のタイプによって、現在20種類以上に分類されています。

具体的には、以下のような病気が代表的な長鎖脂肪酸代謝異常症として挙げられます。

  • 三頭酵素欠損症
  • VLCAD欠損症
  • CPT2欠損症

など

原因

原因は、長鎖脂肪酸を分解してエネルギーに活用する過程で必要な酵素が、生まれつき不足することです。この酵素を構成するたんぱく質をコードする遺伝子の異常が報告されています。

日本においては毎年10~50人ほどが長鎖脂肪酸代謝異常症を発症しているとされています。

症状

長鎖脂肪酸代謝異常症に罹患していると、空腹時にエネルギー源として正常に脂肪が使用されなくなるため、空腹時にさまざまな症状が生じるようになります。症状の現れ方や時期は病気のタイプによって異なりますが、重症なタイプの場合には意識障害やけいれんなどの重篤な症状が引き起こされ、脳症や突然死の原因となるケースもあります。

そのほかにも、筋肉の痛み、疲労感、心不全不整脈、呼吸機能の異常、嘔吐、脂肪肝などの症状が挙げられます。

また、病気のタイプによっては腎臓の病気や顔貌の変化などを伴うケースも知られています。

検査・診断

現在では三頭酵素欠損症など長鎖脂肪酸代謝異常症の多くは新生児期に行う「新生児マススクリーニング検査」の対象疾患となっています。そのため、新生児期に発見されるケースも増えています。

一方で、新生児マススクリーニング検査の対象となっていないタイプや、検査をすり抜けるケースも存在します。そのような場合は、症状から長鎖脂肪酸代謝異常症が疑われた際に次のような検査が行われます。

血液検査

長鎖脂肪酸代謝異常症では、血糖値の低下、アンモニア値の上昇、肝機能の悪化などが認められます。そのため、少しでも長鎖脂肪酸代謝異常症を疑った場合は、アンモニア値、AST値やALT値などの肝機能を示す数値を評価するために血液検査が必要です。さらに血清を用いたアシルカルニチン分析(タンデムマス分析)を行います。この分析には濾紙血(乾燥させた少量の血液)または血清(血液を遠心分離した際に上層に分離される液体)を用いますが、血清を用いた方がより正確に診断できます。

画像検査

長鎖脂肪酸代謝異常症は脂肪肝やけいれんなどの症状を引き起こすこともあるため、必要に応じてエコー検査、CT検査、MRI検査などの画像検査を行うことがあります。

遺伝子検査

長鎖脂肪酸代謝異常症の確定診断には遺伝子検査が必要な場合があります。

治療

長鎖脂肪酸代謝異常症の治療で重要なのは空腹状態を避けることです。特に乳児期は、低血糖を予防するために哺乳間隔を空けないようにする必要がありますが、超重症例を除けば、幼児期以降は単に食事を抜かないように注意する程度の対応で十分になります。ただし、感染症に罹患した際など、食事が摂れないような場合には、低血糖症状が現れる前に早期に救急外来を受診し、ブドウ糖輸液などの処置を受けることが必要です。

現在のところ、長鎖脂肪酸代謝異常症を根本的に治す方法はありません。低カルニチン血症を合併した場合には、L-カルニチンの投与が有効ですが、これによりアシルカルニチンが増加し、心臓に悪影響を及ぼす心毒性も報告されているため、血中遊離カルニチン濃度を慎重にモニタリングしながら投与します。

また、近年、わが国では一部の長鎖脂肪酸代謝異常症患者に対してベザフィブラート(脂質異常症治療薬)の有効性が報告されています。また、米国においてトリヘプタノインが有効であるとする研究結果が報告されています。これらの薬剤は、特に低血糖や重症化による入院の頻度を有意に低下させるとの報告もあり、研究が進められています。

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