お腹の中の赤ちゃんが頭を上に向けている状態のことを「逆子」、医学的には「骨盤位」と言います。一体なぜ、赤ちゃんは逆子になってしまうのでしょうか。今回は、逆子のリスクと妊娠中に自然に治る割合について、国立成育医療研究センターの周産期・母性診療センターにて骨盤位の専門外来を担当されている小川浩平先生にお話いただきました。
子宮内で赤ちゃんが下半身を子宮口側に向けている胎位(姿勢のこと)を「逆子」、医学用語では「骨盤位(こつばんい)」と言います。
妊娠中期ごろまでは、赤ちゃんにとって子宮内は広く、活発に動き回ることのできるゆとりがあるため、赤ちゃんは様々に向きを変えながら過ごしています。ですから、妊娠週が浅い段階では、分娩時の赤ちゃんが骨盤位になっていることを予測することはできません。妊娠後期に入り、体が大きく成長すると、赤ちゃんは最も重い頭を下に向けた「頭位」という状態で落ち着きます。妊娠中期(27週未満)での逆子の割合は全妊娠の20%~30%ですが、このほとんどは分娩時には頭位になります。そのため、医師がお母さんに逆子であるとお伝えする時期は施設や医師により差はありますが、妊娠中期から後期にかけてが多いと思います。私の場合は大体33~34週を目安にお伝えしています。
妊娠37週時点での逆子の割合は、全分娩の約3%です。私たちがお母さんに逆子とお伝えしたあとでも、妊娠中のいつの時点においても自然に頭位に治る可能性があります。当センターでは逆子の分娩は全例帝王切開としており、妊娠36週には手術日の決定や術前準備などをしていますが、たとえば36週時点で逆子でも、分娩時までに自然に治る頻度は6~7%程度あります。実際に、手術当日に確認したところ、赤ちゃんが頭位になっていたという例も経験しています。当センターでは、手術前日と当日の朝に「本当に逆子かどうか」を確認しており、治っていた場合は手術をする理由もなくなりますので経膣分娩に切り替えています。
逆子の多くは特別な原因があるわけではなく、赤ちゃんが逆子になることを予測することは困難ですが、以下のことが逆子のリスクになっていると考えられています。
また、1人目のお子さんが逆子であった場合、2人目も10%の確率で逆子になるという報告もあります。
ちなみに、「逆子は遺伝するのか」という質問を受けることもありますが、これについては現在のところ分かっていません。
一般的に広く知られている逆子体操やポジショニングは、医学的な根拠が乏しく統一見解がないため、私の方から積極的な紹介はしていません。ただし、「やってはいけない」というわけではないので、根拠の有無にかかわらず「何かやってみたい」という方に対して反対することもありません。鍼などの神経療法も同様です。
結局のところ、妊婦さんが逆子矯正のためにご自分で何かできることは少ないと私は考えています。ですから、妊婦さんご自身ができることは何かと聞かれたときには、たとえば当センターのような施設で「外回転術」を受けていただくか、主治医の説明をよく聞いて、帝王切開の必要性を理解し、受け入れることであるとお答えしています。
国立成育医療研究センター 産科医員
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