種類
Ⅹ線、CT、超音波などの画像診断装置を用いて、体内の状況を詳細に把握しながら治療を進めるIVRには、多様な種類があります。大きく分けて血管系IVR と非血管系IVR の2つに分類されます。
血管系IVR
血管系IVRは、画像ガイド下*3でカテーテルを血管内に挿入して行う治療法です。主な治療例には以下のようなものがあります。
*3画像ガイド下:画像診断装置を用いて体内を透視しながら診断や治療を行うこと。
動脈塞栓術
出血している血管や腫瘍への血流を遮断する治療法です。特殊な物質を血管内に注入して血流を止めることで、出血を抑えたり、腫瘍の増大を防いだりします。主な適用例として、肝臓がんに対する肝動脈塞栓術、子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術、動脈瘤塞栓術などがあります。最近では、関節などの運動器の痛みの軽減にも用いられています。
血管形成術
狭窄や閉塞した血管を広げ、血流を改善する治療法です。バルーン拡張術*4やステント留置術*5などがあります。頸動脈狭窄症や末梢血管疾患、透析シャント閉塞*6などで実施されます。
*4バルーン拡張術:血管が硬くなる動脈硬化などで狭くなった血管を拡張する治療法。カテーテル先端のバルーン(風船)を膨らませて血管を広げ、血流を改善する。
*5ステント留置術:血管内に金属製の網状の筒(ステント)を留置して血流を改善する治療法。ステントによって血管を内側から支えることで、血管の再狭窄を防ぎ、長期的な血流改善効果が期待できる。
*6透析シャント閉塞:血液透析に使用するシャント(動脈と静脈を人工的につないだ血管)が詰まった状態。
血栓溶解・血栓除去療法
血栓(血の塊)によって詰まった血管に対して行われる治療です。カテーテルを用いて血栓溶解薬を直接投与し血栓を溶解させるか、あるいは専用の機器を使用して血栓を物理的に除去することで、血流の回復を図ります。この治療法は、急性期の脳梗塞や末梢動脈閉塞、深部静脈血栓症などのさまざまな疾患で実施されています。
動注化学療法
腫瘍に栄養を送る動脈に抗がん薬を直接注入する治療法です。カテーテルを用いて腫瘍近くの動脈まで薬剤を送り込むことが可能なため、高濃度の抗がん薬を腫瘍に届けることができます。
など
非血管系IVR
非血管系IVRは、血管以外の部位に対して行われるIVRです。画像ガイド下に、体外から細い針を挿入し標的となる臓器や組織に直接アプローチして行う治療が含まれます。以下に代表的な非血管系IVRの例を挙げます。
ドレナージ
ドレナージは、体内に異常に溜まった体液や空気などを体外に排出する治療法です。体外からカテーテルを挿入して、余分な血液、膿、滲出液、水分、空気などを排出します。膿瘍、胸水、腹水、気胸など幅広い症例に適用されます。
生検
生検は、組織や細胞を小さく採取し、顕微鏡による詳細な観察や遺伝子解析をする検査です。がんの診断や病気の進行度の評価に役立ちます。
ラジオ波焼灼療法
皮膚から病変に特殊な針を挿入して高周波のラジオ波電流を流し、腫瘍を死滅させる治療法です。主に肝臓がん、肺や骨へ転移したがんの治療で用いられます。
凍結療法
腫瘍に対して凍結用の針を刺し、直接腫瘍を凍らせて壊死させる治療法です。針の先端からアルゴンガスや液体窒素などを注入し、組織を急速に凍結します。主に腎臓がんの治療に用いられます。
経皮的椎体形成術
骨折した椎体(背骨)に細い針を刺し、骨セメントを注入して椎体を強化する治療法です。主に骨粗鬆症による圧迫骨折やがんが骨に転移した場合の痛みの軽減に効果があります。
医師の方へ
「IVR」を登録すると、新着の情報をお知らせします