けいどうみゃくきょうさくしょう

頸動脈狭窄症

同義語
頸部頸動脈狭窄症,頸動脈硬化症
最終更新日:
2024年09月27日
Icon close
2024/09/27
更新しました
2017/04/25
掲載しました。
この病気の情報を受け取るこの病気は登録中です

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

医師の方へ

概要

頸動脈狭窄症とは、首の左右にある太い血管(頸動脈)が狭くなる状態のことです。頸動脈は、心臓から脳に血液を送る重要な血管で、頸部で総頸動脈が内頸動脈と外頸動脈の2つに分岐します。頸動脈狭窄症は、分岐した直後の内頸動脈起始部*1に狭窄*2が生じることが多く、内頸動脈狭窄症のことを指していることがほとんどです。

主な原因は頸動脈に動脈硬化が生じることです。頸動脈分岐部*3周辺は、血管の内側の壁にコレステロールの塊(プラーク)が蓄積されるタイプの動脈硬化が起こりやすく、プラーク形成により血管の内側の空間(血管内腔)が狭くなった状態が頸動脈狭窄症です。

頸動脈狭窄症そのものは無症状ですが、狭窄の進行により脳への血流が低下したり、プラークを覆っている被膜が破綻したりすることがあります。その結果、血管内腔表面にできた血液の塊(血栓)やプラーク自体の破片が血流に乗って脳に運ばれて脳の血管が詰まると、脳梗塞(のうこうそく)一過性脳虚血発作TIA)を生じます。

脳梗塞とTIAは、どちらも局所的な脳の血流低下により、その部位に応じた神経症状(脱力やしびれなど)を引き起こす病気です。しかし、脳梗塞は脳の血流低下が持続し、脳細胞が壊死(えし)*4してしまうのに対し、TIAは脳の血流低下が自然に改善し症状が24時間以内に消失します。

TIAは症状が改善するため軽症と誤解されやすいのですが、その後(特に48時間以内)に脳梗塞を発症するリスクが高く、脳梗塞の前兆として軽視できません。脳梗塞やTIAによると考えられる神経症状が出現した場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。

頸動脈狭窄症の治療目的は、脳梗塞やTIAの発症を予防することです。治療方針は狭窄の程度や症状の有無によって決定されます。

軽度から中等度の狭窄で、脳梗塞やTIAを起こしたことがない場合、生活習慣の改善や生活習慣病に対する薬物療法が行われます。重度の狭窄や脳梗塞・TIAを起こしたことがある場合は、原則として抗血小板薬(血をサラサラにする薬)の内服を行います。さらに、個々の患者の状態に応じて、頸動脈ステント留置術や頸動脈血栓内膜剥離術(けいどうみゃくけっせんないまくはくりじゅつ)といった外科的治療の追加を検討します。

*1内頸動脈起始部:内頸動脈の始まりの部分で、総頸動脈から分岐した直後の部位。

*2狭窄:血管の内側(内腔)が狭くなること。

*3頸動脈分岐部:総頸動脈が内頸動脈と外頸動脈に枝分かれする部位。

*4壊死:細胞や組織が死滅すること

原因

頸動脈狭窄症の主な原因は動脈硬化です。

動脈硬化・プラーク形成の原因

動脈硬化の原因として、加齢と生活習慣(病)が挙げられます。年を重ねるにつれて血管の加齢も進むため、動脈硬化のリスクが高まります。加えて、高血圧脂質異常症糖尿病といった生活習慣病喫煙習慣があると、より動脈硬化が進行します。また脂質異常症の中でもLDL(悪玉)コレステロールが高い場合は、プラーク形成が起こりやすいとされています。

症状

頸動脈狭窄症そのものは無症状ですが、以下の機序により脳梗塞TIAのリスクとなります。

1:狭窄部位の血管内腔が極度に細くなり、脳への血流が低下します。

2:プラークを覆う被膜が破綻し(プラーク破綻)、プラークの内容物が直接血液に接触することで血栓が形成されます。血栓やプラーク自体の破片が血流に乗って脳に運ばれ、脳の血管を詰まらせます。

破綻を起こしやすいプラークを不安定プラークと呼びます。不安定プラークは、脂質含有量が多いという特徴を持っています。

脳梗塞

脳梗塞は、脳内の血管に血栓やプラークの破片が流入して脳の血管が詰まったり、血管狭窄により血流が低下したりすることで脳組織への血液供給が減少し、それが持続することで脳細胞が壊死する病気です。壊死した部分が担っていた機能に障害が生じ、それらが後遺症として残ることがあります。

TIA

脳梗塞と同じような機序で発生しますが、症状は一時的です。脳組織への血液供給が低下し、その部分が担っていた機能に障害が生じますが、詰まった血管が自然に再び開通したり、脳への血流低下が改善したりすることにより、症状は24時間以内(多くは数分から1時間以内)に改善します。MRIなどの画像検査を行っても脳梗塞には至っていないものをTIAといいます。

しかし、TIAを経験した方は脳梗塞の発症リスクが高くなります。TIAを起こした場合、10~15%の方は90日以内に脳梗塞を発症するリスクがあり、そのうち約半数は48時間以内に発症していたという報告もあります。

TIAは脳梗塞を警告する重要なサインであるため、後述する症状が現れたら速やかに医療機関を受診することが重要です。

脳梗塞・TIAの症状

  • 手足のしびれ
  • 手足が動かしにくい/手足に力が入らない
  • 体のバランスがとれない
  • 言葉が出てこない
  • ろれつが回らない
  • 片目が見えにくい
  • 視野の一部が欠ける

など

検査・診断

頸動脈狭窄症の診断には、主に画像検査が用いられます。

超音波検査(頸動脈エコー検査)

超音波を使用して頸動脈の状態を調べる検査です。安全性が高く簡便に血管の状態を評価できるため、多くの場合第一選択となります。この検査では、狭窄の有無、狭窄率、狭窄部の血流速度、血管内膜の厚さ、プラークの状態などを評価できます。

CT検査

造影剤を使用してCTを撮影し、頸動脈の狭窄を評価します。撮影した画像を再構築することにより、3Dのような詳細な画像が得られます。この検査の利点は、超音波検査より広い範囲の血管の観察が可能で、狭窄率を正確に評価できることです。しかし、血流速度やプラークの状態の評価、特に不安定プラークの評価には適していません。

MRI検査

MRI検査は、プラークの状態、特に不安定プラークの有無を調べるのに有用です。不安定プラークは脳梗塞TIA発症のリスクが高いとされています。

一方で、MRI検査は狭窄率の評価には向いていません。また、MRIに対応していないペースメーカーや体内金属を有している方は検査を受けることができません。

血管造影検査

カテーテル*を使用して直接造影剤を頸動脈に注入し、狭窄率や血液の流れを評価する検査です。細かい血管の様子まで調べることが可能ですが、検査のために入院が必要です。

*カテーテル:医療用の細い管のこと。

治療

頸動脈狭窄症の治療方針は、頸動脈の狭窄の程度と症状の有無(症候性または無症候性)によって異なります。

症候性頸動脈狭窄症とは、脳梗塞TIAを起こした患者で、その直接の原因が頸動脈狭窄症と判断されたものを指します。これに対し、無症候性頸動脈狭窄症とは、健康診断脳ドックなどの検査で偶然発見され、脳梗塞やTIAを起こしたことがない場合を指します。

無症候性頸動脈狭窄症の治療

軽度から中等度の無症候性頸動脈狭窄症では、喫煙高血圧糖尿病脂質異常症など動脈硬化の原因となる危険因子の管理を行います。具体的には、禁煙や適度な運動、バランスの取れた食事など生活習慣の改善を行い、必要に応じて高血圧、糖尿病、脂質異常症に対する薬物療法を追加します。このように危険因子に対処することで頸動脈狭窄症の進行を抑制し、脳梗塞やTIAの発症を防ぎます。

高度の無症候性頸動脈狭窄症では、上記の危険因子の管理や治療に加え、抗血小板薬を服用します。さらに個々の患者の状況に応じて「頸動脈ステント留置術(CAS)」または「頸動脈血栓内膜剥離術(CEA)」の施行を検討します。

症候性頸動脈狭窄症の治療

症候性頸動脈狭窄症では、高度の無症候性頸動脈狭窄症と同様に抗血小板薬の服用を行い、CASやCEAの施行を検討します。治療の選択は、狭窄の程度、症状の重症度、患者の全身状態などを考慮して決定されます。

頸動脈ステント留置術(CAS)

CASは、カテーテルを用いて狭窄部位にステントと呼ばれる金属製の網状の筒を留置する治療法です。この手術では、太ももの付け根の動脈からカテーテルを挿入し、頸動脈の狭窄部位まで進めます。狭窄部位でバルーン(風船)を用いて血管を拡張し、その後ステントを留置します。これにより血管の再狭窄を防ぎます。

CASのメリットは、局所麻酔で実施可能であり、体への負担が比較的少ないことです。特に高齢者や心臓疾患を有する患者、頸部の手術歴がある患者などに適しています。ただし、ステント留置後も定期的な経過観察が必要なこと、再狭窄のリスクがあることには注意が必要です。施行後も抗血小板薬の内服を含め薬物療法を継続します。

頸動脈血栓内膜剥離術(CEA)

CEAは、血管の内側にたまったプラークを直接取り除く治療法です。全身麻酔下で、首を切開して頸動脈を露出*させたうえで、狭窄部の血流を一時的に遮断し、血管を開いてプラークを直接除去します。

CEAの主なメリットは、脳梗塞のリスクとなるプラークを直接取り除くことができる点で、プラーク量が多い場合などに有用です。しかし、CASと比較して体への負担が大きいこと、首に手術痕が残ることや手術に伴う合併症のリスクがあることがデメリットとして挙げられます。施行後も抗血小板薬の内服を含め薬物療法を継続します。

*露出:目的の血管を探して直接見えるようにすること。

予防

頸動脈狭窄症の発症予防のみならず、全身の動脈硬化の進行を抑制することが重要です。

高血圧脂質異常症糖尿病喫煙習慣がある場合には、動脈硬化を発症するリスクが高まります。これらの病気と診断されている場合には、医療機関で適切な治療を受けましょう。また、喫煙習慣がある場合には、禁煙に努めることが重要です。

ほかにも、塩分や脂質、糖質の過剰摂取を控え、適度な運動を行うことも有用です。過労や睡眠不足、ストレスを避けるよう心がけましょう。肥満気味の場合には改善を図ることも重要です。

医師の方へ

医師向けの専門的な情報をMedical Note Expertでより詳しく調べることができます。

この病気を検索する

「頸動脈狭窄症」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

実績のある医師をチェック

頸動脈狭窄症

Icon unfold more