治療
頸動脈狭窄症の治療方針は、頸動脈の狭窄の程度と症状の有無(症候性または無症候性)によって異なります。
症候性頸動脈狭窄症とは、脳梗塞やTIAを起こした患者で、その直接の原因が頸動脈狭窄症と判断されたものを指します。これに対し、無症候性頸動脈狭窄症とは、健康診断や脳ドックなどの検査で偶然発見され、脳梗塞やTIAを起こしたことがない場合を指します。
無症候性頸動脈狭窄症の治療
軽度から中等度の無症候性頸動脈狭窄症では、喫煙、高血圧、糖尿病、脂質異常症など動脈硬化の原因となる危険因子の管理を行います。具体的には、禁煙や適度な運動、バランスの取れた食事など生活習慣の改善を行い、必要に応じて高血圧、糖尿病、脂質異常症に対する薬物療法を追加します。このように危険因子に対処することで頸動脈狭窄症の進行を抑制し、脳梗塞やTIAの発症を防ぎます。
高度の無症候性頸動脈狭窄症では、上記の危険因子の管理や治療に加え、抗血小板薬を服用します。さらに個々の患者の状況に応じて「頸動脈ステント留置術(CAS)」または「頸動脈血栓内膜剥離術(CEA)」の施行を検討します。
症候性頸動脈狭窄症の治療
症候性頸動脈狭窄症では、高度の無症候性頸動脈狭窄症と同様に抗血小板薬の服用を行い、CASやCEAの施行を検討します。治療の選択は、狭窄の程度、症状の重症度、患者の全身状態などを考慮して決定されます。
頸動脈ステント留置術(CAS)
CASは、カテーテルを用いて狭窄部位にステントと呼ばれる金属製の網状の筒を留置する治療法です。この手術では、太ももの付け根の動脈からカテーテルを挿入し、頸動脈の狭窄部位まで進めます。狭窄部位でバルーン(風船)を用いて血管を拡張し、その後ステントを留置します。これにより血管の再狭窄を防ぎます。
CASのメリットは、局所麻酔で実施可能であり、体への負担が比較的少ないことです。特に高齢者や心臓疾患を有する患者、頸部の手術歴がある患者などに適しています。ただし、ステント留置後も定期的な経過観察が必要なこと、再狭窄のリスクがあることには注意が必要です。施行後も抗血小板薬の内服を含め薬物療法を継続します。
頸動脈血栓内膜剥離術(CEA)
CEAは、血管の内側にたまったプラークを直接取り除く治療法です。全身麻酔下で、首を切開して頸動脈を露出*させたうえで、狭窄部の血流を一時的に遮断し、血管を開いてプラークを直接除去します。
CEAの主なメリットは、脳梗塞のリスクとなるプラークを直接取り除くことができる点で、プラーク量が多い場合などに有用です。しかし、CASと比較して体への負担が大きいこと、首に手術痕が残ることや手術に伴う合併症のリスクがあることがデメリットとして挙げられます。施行後も抗血小板薬の内服を含め薬物療法を継続します。
*露出:目的の血管を探して直接見えるようにすること。
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