インタビュー

頸動脈狭窄症とは?放置すると危険な理由と治療法について

頸動脈狭窄症とは?放置すると危険な理由と治療法について
桂 研一郎 先生

国際医療福祉大学三田病院 予防医学センター長/神経内科、国際医療福祉大学医学部 医学教育統括セ...

桂 研一郎 先生

この記事の最終更新は2017年08月15日です。

頸動脈狭窄症とは、動脈硬化の進行によって血管壁にプラーク(コレステロールなどによる塊)ができて血管が狭くなってしまう病気です。血管が狭くなった部分から血栓が飛び散り、脳血管に詰まると記事1脳梗塞急性期におけるカテーテル治療(血管内治療)とは?治療法や再発の予防について』でご紹介した脳梗塞を発症することもあります。かつて頸動脈狭窄症の治療は頸部を切開し、動脈を露出して行う「頸動脈内膜剥離術」が主流でしたが、2008年に切開せずに血管内にカテーテルを通して行う「頸動脈ステント留置術」が保険適用となり、治療の幅が広がりました。今回は国際医療福祉大学三田病院予防医学センター長・神経内科教授である桂研一郎先生に、「頸動脈ステント留置術」についてお話を伺いました。

 

頸動脈狭窄症

頸動脈狭窄症とは、大動脈から脳へ血液を送る重要な血管である頸動脈に狭窄が生じ、血液の流れが滞る病気です。頸動脈狭窄症は動脈硬化が進行し、血管内部にプラーク(コレステロールなどの塊)が貯留し、血管が狭くなることで生じます。また、プラークから血栓が剥がれて飛ぶことで、脳内の血管が詰まり脳梗塞を発症することもあります。

そのため頸動脈狭窄症と診断されたら、その重症度を評価し、早期に適切な指導・治療を受けることが大切です。

頸動脈狭窄症ではまず薬物治療が行われますが、狭窄の度合いが強い場合には手術で狭窄を改善させることがあります。狭窄部分を広げる治療は主に、外科的に頸部を切開して行う「頸動脈内膜剥離術」と大腿動脈より血管内にカテーテルを挿入して行う「頸動脈ステント留置術」があり、患者さんの状況によってどちらの治療を行うか決定します。

頸動脈内膜剥離術は、皮膚を切開して頸動脈を露出し、血管内狭窄部のプラークを直接剥がす治療です。手術は全身麻酔で行われるため、患者さんにとって大きな負担となり、特に心不全狭心症などの心疾患がある場合や、高齢の患者さんにはリスクを伴う手術です。そのため、外科的手術のリスクが高い患者さんには、負担の少ない頸動脈ステント留置術が選択されることがあります。

次項では頸動脈ステント留置術の具体的な方法について解説します。

頸動脈ステント留置術はまず、鼠径部(そけいぶ)という足の付け根の部分からカテーテルを挿入し、カテーテルを首の血管まで進めます。

狭窄部分まで到達したら、カテーテルからバルーンカテーテルとよばれる風船のような材料で狭窄している部分を内側から広げ、その状態でステント(金属でできた網状の筒)を留置します。留置後、まだ狭窄しているようなら追加でバルーンカテーテルを使用して狭窄部分を広げ、カテーテルを回収して治療完了です。

治療にかかる時間は約1〜2時間で、治療後は約3〜7日間で退院することができます。

頸動脈ステント留置術は、非常に患者さんの負担が少なく、治療後も経過が良好であればすぐに退院し、元の生活に戻ることができます。しかし、治療に伴い起こる可能性のある合併症についても理解しておかなくてはいけません。

まず念頭に置くべき点は、脳梗塞を発症してしまうリスクがあることです。血管狭窄部には血栓が多く存在しています。ステントを留置する反動でこの血栓が動くと、脳内の血管へ血栓が流れ出て脳梗塞が起きてしまうことがあります。

また、バルーンカテーテルやステントを広げる際に、血管が破れて出血するリスクもあります。この合併症は、血管の強度が弱くなっている高齢の患者さんに起こる可能性が高いです。このように、頸動脈ステント留置術にもいくつかのリスクが伴うので、患者さんよっては頸動脈内膜剥離術のような外科的手術が選択される場合もあります。

また、治療後時間が経つにつれて、拡張した部分が再び狭窄してしまう「再狭窄」が起きることもあります。この場合は再度、狭窄部を広げる治療を行うこともあります。

この再狭窄を防ぐために、ステント留置後は、アスピリンやシロスタゾール、クロピドグレル硫酸塩などの「抗血小板薬(血小板により生成される血栓を防ぐための薬)」という血をさらさらにする薬が処方されます。治療後はこれらの薬を飲み続けることが、再狭窄を予防するためにも大切なことです。しかしながら、これらの後療法により出血の合併症がおこることがあり、注意が必要です。

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