いっかせいのうきょけつほっさ

一過性脳虚血発作

同義語
TIA,一過性脳虚血性発作
最終更新日:
2021年12月28日
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2021/12/28
更新しました
2017/04/25
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概要

一過性脳虚血発作とは、一時的に脳への血流が低下することでしびれやめまい、運動障害、言語障害など“脳梗塞(のうこうそく)”と同じ症状を引き起こす病気のことです。症状は通常1時間以内に治まって後遺症や脳梗塞に特有なCT・MRIなどの画像所見を残さないのが特徴ですが、大きな脳梗塞を発症する前兆と考えられており、注意が必要な病気とされています。

原因

一過性脳虚血発作を引き起こす原因は大きく分けると、(1)太い血管が動脈硬化粥状硬化(じゅくじょうこうか))によって狭くなった場合・(2)脳を栄養する1mmよりも細い血管(穿通枝)が狭くなる場合・(3)心房細動弁膜症などにより心臓内に血栓ができて脳の血管に詰まる場合の3つに分類されます。そのため、一過性脳虚血発作が疑われる場合はその原因を特定し、それぞれに合った適切な治療を行うことで脳梗塞の発症を予防することが大切です。

機序

一過性脳虚血発作は、大きく3つに分類されます。

血栓性(含動脈原性塞栓性)

頸動脈(けいどうみゃく)をはじめとした太い血管や穿通枝は、動脈硬化によって狭くなります。そこに血栓(血の塊)ができて詰まったり狭くなったりした場合、またはその血栓の一部が血管の壁から剥がれて下流の脳の細い血管に詰まった場合に発症します。一時的に神経症状が現れますが、血栓が溶けると脳への血流が元に戻るため症状は消失します。

心原性塞栓性

心房細動や弁膜症などの心臓の病気によって心臓内で血栓が形成され、脳の血管に流れていくことで発症します。このような心臓の病気が原因で生じる脳梗塞は重症化するケースが多いですが、流れた血栓が小さくすぐに溶ける場合は一過性脳虚血発作を引き起こすことが知られています。

血行力学性

脳の太い血管が狭くなったり、塞がったりすることによる血流の低下が根底にあります。一時的に血圧が下がることなどによって脳を栄養する血管の境界領域の血流が悪くなることで発症します。血圧が元に戻ると症状が改善するのが特徴です。

症状

一過性脳虚血発作は、一時的に脳の一部への血流が低下することで脳梗塞と同じ神経症状が生じます。神経症状は、血流が低下した部位によって異なりますが、めまい、手足のしびれや脱力、言語障害(呂律が回らない、言葉が出てこない)などのほか、片方の目が急に見えなくなるといった症状がみられることもあります。

これらの症状は5~10分ほど継続して消失するのが一般的で、1時間以内に消失することがほとんどです。しかし、一過性脳虚血発作を発症すると48時間以内に脳梗塞を発症することが多く,発症後90日以内に脳梗塞を発症するリスクは15~20%にも上るとの報告もあるため、発症原因を速やかに精査して治療を開始することが大切です。

検査・診断

一過性脳虚血発作が疑われる症状があるときは、その原因を特定するための検査が行われます。具体的には、血圧測定、血液検査などの全身の状態を把握するための一般的な検査のほか、心電図検査や頸動脈(けいどうみゃく)エコー検査などが必要に応じて実施されます。

また、一過性脳虚血発作は一般的には発症してもすぐに脳の血流が改善するため、頭部CTやMRI検査などを行っても異常所見は描出されないとされています。しかし、脳梗塞を起こしてしまっている場合や、脳出血脳腫瘍(のうしゅよう)などの神経症状を起こし得るほかの病気との鑑別のために、これらの画像検査が行われます。

治療

一過性脳虚血発作は非常に重い脳梗塞を後発するため、速やかに原因を特定して適切な治療を行っていくことが大切です。

多くは内服治療を行います。具体的には、血栓性の場合は抗血小板薬、心原性塞栓性(しんげんせいそくせんせい)の場合は抗凝固薬が用いられます。一方、頸動脈などの太い血管が狭くなっていることが原因の場合は、それらを改善させるためのステント留置術や内膜剥離術(ないまくはくりじゅつ)などの手術治療が必要になることもあります。

また、これらの治療と並行して、高血圧症糖尿病脂質異常症など動脈硬化のリスクとなるような基礎疾患がある場合は、それらをコントロールするための治療も同時に行われます。

予防

一過性脳虚血発作は高血圧症糖尿病脂質異常症など動脈硬化を起こし得る生活習慣病があると発症リスクが高まります。

そのため、一過性脳虚血発作を予防するには、食事や運動、喫煙などの生活習慣を見直して生活習慣病を予防・改善することが大切です。また、生活習慣病を発症している場合は治療を継続することで血圧や血糖値、コレステロール値などを適切な状態にキープしていくことが必要です。

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