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やるしかない。その覚悟で脳卒中の治療に取り組んできた

DOCTOR’S
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やるしかない。その覚悟で脳卒中の治療に取り組んできた

チームで脳卒中の診療に取り組む大久保 誠二先生のストーリー

NTT東日本関東病院 脳血管内科部長
大久保 誠二 先生

脳に興味があったから神経内科医を選んだ

医師”という職業を意識したのは、高校2年生の頃です。進路を考えるようになったことがきっかけでした。理系の勉強が好きだった当時の私は、医師を“どんな社会情勢でも必要とされる仕事”と捉え、漠然とやりがいがありそうだなと思っていました。

無事に日本医科大学 医学部に進学した後は、専門とする診療科をどこにするかいろいろと悩みました。最終的には、もともと興味のあった脳の分野に関わることを希望し、神経内科医としてキャリアをスタートすることに決めました。脳の領域ではまだ解明されていないことも多く、未知なる分野を解明する面白さがあると思えたのです。

初心を思い出させてくれる1人の患者さん

神経内科の領域には、治療法が確立されておらず完治を見込めない病気も少なくありません。そのような病気に対してもなんとか治療方針を立て、治療によって患者さんの状態が少しでも改善すると喜びを覚えます。また、担当した患者さんやご家族に「ありがとう」と感謝のお言葉をいただくと、やりがいを感じもします。

これまでにたくさんの患者さんを担当させていただきました。印象的な方ばかりです。中でも、研修医の頃に最初に担当させていただいた患者さんは特に思い出深いです。当時70歳くらいの糖尿病の女性の患者さんでした。まだ経験も浅い自分を“何とか頑張ろう”と奮い立たせながら、治療に手をつくしたことをよく覚えています。

当時、その患者さんにとって最善の治療を提供することができたのかは未だに分かりません。しかし、ありがたいことにその方の退院後も交流は続き、年賀状のやり取りなどを10年近く続けさせていただきました。残念ながらすでにお亡くなりになりましたが、最後は息子さんからもお手紙を頂戴しました。今でもこの患者さんのことを思い出すと“頑張ろう”という力がわきます。私にとって医師としての初心を思い出させてくれる存在といえるでしょう。

“やるしかない”脳卒中診療の道へ

最初に専門的に脳卒中の診療に携わったのは、医局から派遣された先の東京都多摩老人医療センター(現・多摩北部医療センター)でした。そして大学に戻り大学院で研究に従事し、再び多摩北部医療センターで神経内科医長として勤務しました。

その後、日本医科大学に戻り、当時の医局の教授の指示で脳卒中の救急治療に携わることになりました。ちょうど、今では一般的に広く用いられているt-PA静注療法*が承認された頃で、さまざまな病院で脳卒中ケアユニット(SCU:Stroke Care Unit)と呼ばれるチームで脳卒中を診療する体制が築かれ始めていました。

私が入ることになった日本医科大学のチームでは、3人体制で脳卒中の救急治療にあたっていました。ちょうどチームが発足して約1年がたった頃に、新たに私が入ることになったのです。それ以前から、同チームについて、少ない人数で救急治療に対応しなければならないため、とても忙しく大変だという話は聞いていました。まさか自分が入ることになるとは思っていなかったので、最初に教授から指示を受けたときは驚きましたが、逆に“やってやろう”という気持ちで診療をスタートしました。しかし、実際に診療に従事してみると、とにかく大変で。常に救急当番です。病院にいる間は救急対応をしなくてはいけないのはもちろんのこと、それ以外でも呼ばれたら緊急で駆けつけなければならないような毎日でした。

大変なことも多々ありました。それでも、私自身はやめたいと思ったことはありません。とにかく目の前の患者さんを助けるため“やるしかない”という思いがあったからです。さらに、脳卒中の診療に携わりたいと希望してチームに入ってくる後輩も増えていく中で、彼らをしっかりと指導しなくてはならないという使命感も抱くようになっていました。そうして気が付けば10年以上の年月をその場所で過ごしていたのです。

その後は、現在私が所属するNTT東日本関東病院の脳血管内科部長として、それまでの経験を生かしながら主に脳卒中の診療に従事しています。

*t-PA静注療法:脳梗塞に対する治療法の1つ。血栓(血の塊)を溶かす効果のある薬を点滴から投与し血管の再開通を図る治療法。

影響を受けた2人の恩師

医師になってからというもの、さまざまな先輩医師にお世話になりました。中でも、2人の方に大きな影響を受けたと思っています。

1人目は、濱本(はまもと) (まこと)先生です。濱本先生は、医局の先輩であり、東京都多摩老人医療センターに派遣されたときの上司でもありました。濱本先生はとにかく視野の広い方でした。いろいろなアドバイスをしてくださりながら、当時の私のような若手医師にも仕事を任せ、チーム皆で協力しあうことを大切にされていました。私自身、さまざまな仕事を任せていただいたおかげで成長することができたと感謝しています。また、後進を指導する立場となった際には、濱本先生の姿勢を見習ってきました。

2人目は、医局の上司である五十嵐(いがらし) 博中(ひろなか)先生です。当時、五十嵐先生はMRIを用いた研究に従事されていました。多摩老人医療センターでMRIを使用した臨床研究をしたときに指導していただいたことが契機となり、日本医科大学に戻った後、大学院でも五十嵐先生のもとでMRIを用いた脳虚血の研究を行いました。五十嵐先生には、物事の考え方や研究の進め方を教えていただきました。研究の面白さは、まだ明らかになっていないことを少しでも解明することができる点にあると思っています。私にとって、臨床と研究はどちらも大切です。それぞれの経験が日々の取り組みに役立っていると感じます。

診療で大切にしていること

診療のときは、患者さんのお話をよく聞くことを心がけています。患者さんは皆、何か困っていることがあるから病院にいらっしゃるわけです。丁寧にお話をお伺いし、何に困っているのか、何を解決すればよいのかということを常に考えるようにしています。そのうえで、満足していただけるような診療を行うことができるよう努めています。

現在、私が所属しているNTT東日本関東病院では、チームで脳卒中の診療にあたっています。チームのスタッフとは常にコミュニケーションをとるよう心がけてきました。また、それぞれの強みをうまく生かしながら、チームでよりよい医療を提供したいと考えています。そのために、できるだけチーム皆の意見を聞くように努め、積極的に診療に関わってもらう環境を築いています。

脳卒中の予防、早期治療を実現するために

私は、脳卒中において、予防が何よりも大切であると考えています。発症しないで済めばそれに越したことはありません。若いときから予防に取り組めば発症のリスクを抑えられるケースもあるので、今後は脳卒中の予防啓発活動にも注力したいと思っています。

一方で、もし脳卒中を発症してしまったならば、なるべく早く治療に取り組む必要があります。発症から時間がたってしまったがためにt-PA静注療法や血管内治療を受けることができないケースもあり、実際に“早期に受診していればよくなったのではないか”と思うような患者さんもいらっしゃいます。

近年では、t-PA静注療法や血管内治療など効果が期待できる治療法の登場で、昔だったら寝たきりになっていたようなケースの患者さんの状態が改善することも増えてきています。今後は、地域連携を推進しながら、早期発見によって脳卒中の治療を受けられる方を地域全体で増やしていくことが1つの目標です。当院の中でも、さらに診療の質を向上させるとともに、より早く治療を提供できるような体制を目指し強化していきたいと思います。

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  • NTT東日本関東病院 脳血管内科部長

    1995年より神経内科医としてキャリアをはじめる。神経内科・脳卒中を専門領域とし、現在はNTT東日本関東病院にて脳血管内科部長として、急性期医療・チーム医療に取り組...

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