院長インタビュー

医療と介護のケアを両立する赤枝病院の幅広い取り組み

医療と介護のケアを両立する赤枝病院の幅広い取り組み
須田 雅人 先生

赤枝病院 病院長

須田 雅人 先生

この記事の最終更新は2018年02月07日です。

医療法人 赤枝会 赤枝病院は、神奈川県横浜市旭区上川井町に所在する医療療養型病院として長年にわたり地域医療に尽力してきました。1978年当初は、近隣に2万人規模の団地が建ち、ベビーブームの時代でもあったため産婦人科を中心とした診療を行っていました。その後、病院規模の拡大や人口動態の変化を受け、現在の医療療養型病院としての立ち位置を確立させました。ご高齢の方々はもちろんのこと、在宅療養が困難な方もグループの介護系施設で受け入れています。また、運営母体である赤枝グループ全体で多様な施設形態を有しており、どのような患者さんにもご満足いただける医療と介護の提供が可能な点が、グループの一番の特徴に挙げられます。

急性期医療の経験をいかしながら、未来を見据えた医療と介護のために奔走する同院の院長である須田 雅人先生にお話を伺いました。

当院は、医療療養型病床194床を有する病院です。各種検診も実施しているほか、内科や老年内科、外科、整形外科、リハビリテーション科、皮膚科、精神科を含む11の診療科を備え、複数の慢性疾患をかかえる患者さんへの対応も可能にしています。また、当院の近くには赤枝グルーブの透析専門クリニックを設けており、医療・介護難民を減らすために注力しています。

ベビーブームの時代に開設された当院は、産婦人科を中心に病院の基礎を築いてきました。その後、時代のニーズに合わせ、ご高齢の患者さんに向けた診療科の充実を図るとともに、社会福祉法人兼愛会・社会福祉法人みやび会・公益社団法人赤枝医学研究財団・学校法人東峰会も立ち上げ、包括的なケア体制を整えました。現在、赤枝会グループ全体で介護と医療を合わせた病床数は1,000床を超えており、横浜市内を中心に、医療・福祉・介護・教育などのさまざまな分野に貢献しています。

赤枝グループは、「地域を大切にし、高齢者に寄り添う」ことをモットーに、高品質な医療と介護の提供に長年取り組んできました。ご高齢の患者さんへの適切なケアのためには、医療従事者と介護従事者の密接な連携が必要です。同グループでは医療と介護の連携体制がすでに確立されており、この点は大きな強みだと感じています。

医療療養病床とは、症状が安定している慢性期疾患の患者さんの長期療養を目的とした病床であり、充実した医療措置とリハビリテーションサービスを提供している点が特徴です。介護療養病床の廃止にともない、医療依存度の高い患者さんの多くは医療療養型病院へ移られるため、今後さらなる利用者の増加が見込まれる施設です。

持続皮下輸液(HDC)とは、血管ではなく皮下組織に針先を留置し水分や栄養を緩やかに、かつ継続的に投与する手法です。これは、血管を確保しにくいご高齢の患者さんに適しているほか、経口摂取が困難な患者さんやターミナル期の患者さんなどに特に大きな効果を発揮します。

当院では、適切な濃度と栄養価を含む輸液(HDC)を選択することで、身体的な負担が軽減できると考えています。

また、5~8時間ほどかけて、ゆっくりと投与するため、緩やかで確実な効果がみられます。当院ではいち早くこの持続皮下輸液(HDC)を導入・実践してきました。

このHDCはまだ国内での浸透率が低いため、私は持続皮下輸液(HDC)の必要性をさまざまな場で示してきました。最近では、その効果が認められ、地方の病院へと講演に足を運ぶ機会も多くなってきました。

持続皮下輸液点滴は適切に栄養成分を吸収でき、しっかり尿量確保もできます。また、HDCを介して抗生剤や利尿剤を用いることも可能で、誤嚥性肺炎心不全の治療にも有益です。

経口摂取が困難になった患者さんに、持続皮下輸液(HDC)を用いることは、生命の尊厳を守る一助となります。ご家族にとっては、亡くなる方に対する心の準備の時間を作り出せる点や遺産相続などの家族間の問題の解決にも話し合いの余裕として寄与できます。当院では、患者さんやご家族の意思を最大限に尊重し、最善を尽くしています。

高齢化が急速に進む日本では、終末期ケアの需要が高まることは明確です。それらの影響によって、延命措置に対する考え方の変化、在宅および介護施設でのお看取りは確実に増加します。そのため、終末期におけるご家族への対応、医療・介護従事者のニーズ、患者さんの要望などは多様化していくと見込まれます。これらを受けて、持続皮下輸液(HDC)は強制的に延命するのではなく、緩やかに不足した水分や栄養を補う形で終末期に向かっていく患者さんを支えられるメリットがあります。

2017年には「たまプラーザ看護学校」を開校しました。赤枝グループのみならず、日本国内において看護師不足解消は喫緊の課題です。また、介護と医療の双方に特化し、ノウハウを蓄積してきた赤枝グループだからこその教育ができる部分があると思っています。

全人的医療を提供できる広い視野を持った優秀な人材の育成を目指し、また今後は栄養士や介護士、リハビリテーションスタッフなどの多角的な人材育成も検討していきます。

当院では、国内外を問わずあらゆる介護・医療問題の解決のために活動しています。

現在全日本病院協会の一員として、外国人技能実習生の受け入れを円滑に行うための体制を整備し実現に向けて活動しています。2017年10月にはベトナムへ赴き、看護師と介護福祉士に関する講演をしました。ベトナムをはじめ、アジア諸国では30~40年後に、急激な高齢化社会の到来と介護ニーズの高まりが懸念されています。世界ではじめて超高齢化社会を迎える日本では、現在確立されている医療・介護の技術や知識をいかし「日本で育成して自国に持ち帰ってもらう」という国境を越えた教育に取り組むべきと考えています。

須田院長自ら、月に1~2回ほど地域住民との接点を積極的にとるために、近隣の商店街で講習会(勉強会)を実施しています。講習内容は、インフルエンザや感染性腸炎といった身近な病気に関することから、現在の医療制度や介護制度の説明、数ある介護施設の説明などを取り扱っています。住民の方々の健康意識増進とともに、地域の今後のあり方を住民と同じ目線で進むことを意識し、当院についての関心も持っていただければと思っています。

2018年現在、当院が所在する横浜市旭区若葉台地域は、高齢化率が非常に高い(46%)一方で、健康で自立されているご高齢の方々が多く、介護認定を受けている方は非常に少ない現状にあります。この先、そういった方々が医療・介護を必要とした際に、赤枝グループ全体で適切に対応できるよう、今から準備し、全力でこの地域を支えたいと考えています。

赤枝グループでは今後、訪問看護・訪問リハビリテーションをより強化していきます。もちろん、在宅療養が困難になった場合は病院を含めた、各施設で受け入れるスタンスを変えることはありません。

これから訪れる急激な高齢化と介護需要の波に際して、患者さん一人ひとりに寄り添い、よりよい人生を、住み慣れた環境でずっと過ごしていただける地域医療の実現を目指してまいります。

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