栃木県真岡市中郷にある芳賀赤十字病院は、真岡市、益子町、茂木町、市貝町、芳賀町の一市四町で構成される県東保健医療圏の中核的な病院として、また年間4,000台を超える救急車を受け入れる唯一の二次救急医療機関として、地域に密着した医療を行っています。同院の地域における役割や今後について、病院長の本多 正徳先生に伺いました。
当院は1922年(大正11年)に設立された芳賀病院にはじまり、1949年(昭和24年)に日本赤十字社栃木県支部芳賀赤十字病院となり、その後名称変更を経て2017年(平成29年)に現在の芳賀赤十字病院になりました。近年病院の老朽化が目立ち、災害拠点病院・DMAT指定病院として耐震性の向上が望まれていたところ、2018年12月に免震構造を有した新病院が竣工し2019年3月に移転となりました。
当院は真岡鐵道の北真岡駅から徒歩5分、車なら宇都宮中心部より約40分、北関東自動車道真岡I.Cより約10分の真岡市中郷に位置しています。高齢化が進むなか、新規入院患者数は増えている状況ですが、医療スタッフを充実させて地域の皆さまのご期待に応えられるよう努力しています。
当院には内科、小児科、外科、整形外科、産婦人科など23の診療科がそろっています。また急性期医療に対応するのみならず、緊急母胎搬送受け入れや新生児治療を行なう地域周産期母子医療センターが併設され、さらに地域がん診療病院としてがん医療にも力を入れています。2016年には患者さんの在宅復帰支援の向上を目指し回復期リハビリ病棟を開設しており、また同年には急速に進む高齢化に対応する認知症疾患医療センターにも指定されました。
当院は診療のみならず教育も重視し、臨床研修指定病院として若い医師の育成や多職種の学生の実習を受け入れ、医療者の教育にも取り組んでいます。さらには赤十字精神“人道・博愛”に基づく日本赤十字社の病院として、熊本地震や令和元年台風15号災害、令和6年1月能登半島地震では日赤救護班の派遣を行いました。
当院では、救急に力を入れています。二次医療圏の中で唯一の二次救急医療施設のため救急車応需率90%台を目指しており、応需件数は増加しています。
救急車の受入時間は夜間が多く70%を超えており、特に準夜帯に集中する傾向があります。そこで当院の関連大学である自治医科大学から準夜帯に医師派遣を依頼し、当院の救急科医師も加わり月曜から木曜までの準夜帯に救急専門医を内科系・外科系当直医師の他にも配置するようにしました。また、2024年の8月からベッドコントロールシステムを導入し、ベッドの運用状況を“見える化”して満床による断りを可能な限り減らすよう努力しているところです。
2023年4月に、手術支援ロボット“ダヴィンチXi”を導入しました。300床台の二次救急施設でロボット支援手術を導入するかどうか議論がありましたが、当院が掲げる地域完結型医療のためにも導入は必須と考えました。まずは泌尿器科前立腺がんから開始し、年間施行件数の目標を70件とし、2023年度に71件と目標を達成しました。2024年10月からは、直腸がんへの拡大を予定しています。
芳賀赤十字病院では病床稼働率90%以上を目指しており、2024年7月に病院開設以来初めて90%以上の稼働を実現しました。同年8月からベッドスケジュールシステムを電子カルテ内で稼働させ、入院期間や予約入院などを色分けすることにより、多くの患者さんに入院いただけるよう効率的に運用できるようにしています。さらには患者支援センター(PFM)のあり方も検討し、ベッドコントロール専任職員を配置してさらなる稼働率向上を目指しています。
当院は、地域との連携を大切にしています。医療連携ネットワーク“とちまるネット”に参加し、患者さんの同意のもと栃木県内の医療機関が保管している診療情報を安全に共有。情報共有により病診連携・病病連携等、地域医療連携を推進し、診療に役立てています。
また診療以外のところで地域とのコミュニケーションに力を入れているのも、当院の特徴です。現在(2024年8月)は病院祭を2024年11月に予定し、地域の方々に来ていただきたいと考えているところです。さらに真岡市観光協会の主催で行われる“真岡木綿踊り”には、当院の互助会である双葉会が参加しています。毎年130名前後の職員が参加して優秀賞を頂いていますが、これまで最優秀賞を逃しているため、今年こそは目指したいと意気込んでいるところです。また真岡市の産業祭にも、毎年ブースを出展し協力しています。当院はこういった活動を、これからも地域の皆さまと連携しながら行い、地域の方々から親しまれ頼られる病院になりたいと考えています。
芳賀赤十字病院は、真岡市中郷の地で患者さん中心の医療、安全で質の高い医療、赤十字の使命に基づいた社会貢献を行っています。実は、県東保健医療圏は他医療圏への患者流出率が比較的高い医療圏であり、原因の1つはカバーしきれない疾患群分類があることだと考えています。その疾患群分類の代表は肺疾患(肺がん)なので、今後は可能な限り地域完結型医療を地域住民に提供するためにも、肺疾患を当院がカバーしていく方針を次期地域医療構想の中に加えたいと考えています。
今後も“地域に貢献する病院”をモットーに、芳賀地区の医療の充実に努めてまいります。何かあれば小さなことでも、安心して芳賀赤十字病院にご相談いただければと思います。